A.リスキリングは、英語では「Reskilling」。
スキルを再び習得する、といった意味になります。
最近、注目されている概念で、新しい職業に就いたり成長が見込まれる社内の新たな業務に当たったりするため、必要なスキルを身につけることです。
Q.スキルを身につけるということですが会社でよく行われている研修とは違うのでしょうか?
A.これまでのいわゆるOJTや社内研修は今の業務を続ける上でより高い技術や能力を身につけていく内容が多く、スキルアップなどと呼ばれます。
一方、リスキリングは急激に進むデジタル化などで仕事の進め方が大幅に変わると見込まれる中、新たな価値を生み出すスキルを習得することとされています。
OJTは「連続系」、リスキリングは「非連続系」の能力開発と区別されることもあり、リスキリングでは会社を変えたり社内の別の業務についたりすることが念頭に置かれています。
Q.なぜリスキリングが注目されているのでしょうか。
A.日本では終身雇用が根づいていて、労働移動が少ないことで技術が社内にとどまり、新たなイノベーションが生まれにくいと指摘されてきました。
政府は、リスキリングによって新たな価値が生み出され成長分野へと労働移動が進めば、生産性や収益力が向上し、賃金の上昇にもつながると期待しているのです。
Q.リスキリングは実際に始まっているのですか?
A.一部の企業などで導入が始まっています。
富士通は、おととしから会社独自のシステムを設けて社員のリスキリングを後押ししています。
プログラミングや人材育成、経営管理などのスキルを学ぶことができる動画など1万を超えるコンテンツが登録され、社員は無料で利用できます。
また、ことし6月にはIT大手や就職情報会社、地方自治体などが参加する「日本リスキリングコンソーシアム」という団体が発足しました。
ITスキルの向上につながる200以上の講座を提供し、就労支援にもつなげたいとしています。
政府がリスキリングの推進を掲げる中、こうした動きは、さらに広がっていくことが予想されます。
Q.課題はないのでしょうか。
A.企業にとってリスキリングは人材の流出につながるおそれもあり、コストを払って態勢を整備することは簡単ではありません。
リスキリングを広げていくには政府、企業、学習のコンテンツを提供する外部の機関などが連携して取り組んでいく必要があります。
また、リスキリングに挑戦する人を増やすためには、どのような能力を身につければどの程度、高い賃金が支払われるのが示されることが重要となります。
具体的には▽民間の専門家に相談しリスキリング・転職を一貫して支援する制度を新たに設けることや、▽高度デジタル人材の訓練などに取り組む企業に対する「人材開発支援助成金」の助成率を引き上げること、▽中途採用の人数を増やす企業や離職した労働者を早期に雇い入れる企業への支援を拡充して労働移動の円滑化を促すことなどが盛り込まれています。 このほか、リスキリングへの支援策の整備など企業間・産業間での労働移動の円滑化に向けた指針を来年6月までに取りまとめるとしています。
「人への投資」5年間で1兆円