ペット事業じぎょうに初はつの数値すうち規制きせい設置せっちへ “悪質あくしつな事業じぎょう者しゃ 排除はいじょを”

その素案そあんでは、ケージの大おおきさについては、運動うんどうスペースが別べつにある場合ばあい、犬いぬや猫ねこには、縦たてが体長たいちょうの2倍ばい、横よこが体長たいちょうの1.5倍ばいの長ながさが必要ひつようなどとしています。

また、飼育しいくできる数かずは、いずれも従業じゅうぎょう員いん1人にん当あたりで、ブリーダーの場合ばあい、犬いぬが15匹ひき、猫ねこが25匹ひきまで、ペットショップの場合ばあい、犬いぬが20匹ひき、猫ねこは30匹ひきまでなどとなっています。

基準きじゅんに違反いはんし、改善かいぜんされない場合ばあいには罰金ばっきんが科かされることもあり、動物どうぶつ愛護あいご団体だんたいなどからは歓迎かんげいの声こえが上あがっています。

一方いっぽう、ペットの業界ぎょうかい団体だんたいの調しらべでは、基準きじゅんを守まもるために飼育しいく数すうを減へらしたり、従業じゅうぎょう員いんの数かずを増ふやしたりすると経営けいえいが成り立なりたたなくなると考かんがえる事業じぎょう者しゃも少すくなくなく、団体だんたいは、「犬いぬや猫ねこが行き場いきばを失うしなわないよう国こくや自治体じちたいは対応たいおう策さくを示しめしてほしい」としています。

環境省かんきょうしょうは今月こんげつ7日にちの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎで数値すうち基準きじゅんの案あんを正式せいしき決定けっていしたいとしていて、一般いっぱんからも意見いけんを聴きいたうえで、来年らいねん6月つきから規制きせいを始はじめる方針ほうしんです。

環境省かんきょうしょうが示しめした基準きじゅんの素案そあん

犬いぬや猫ねこの適正てきせいな飼育しいく環境かんきょうや飼育しいく方法ほうほうとはどんなものなのか。

環境省かんきょうしょうが示しめした基準きじゅんの素案そあんを見みていきます。

【ケージの大おおきさ】

ケージの大おおきさについては、運動うんどうスペースが別べつにある場合ばあい、犬いぬ、猫ねこともにに縦たてが体長たいちょうの2倍ばい、横よこが体長たいちょうの1.5倍ばいの長ながさが必要ひつようだとしています。そのうえで、高たかさについても、犬いぬは、体からだの2倍ばい、猫ねこは、体からだの3倍ばいという基準きじゅんを示しめしています。

ケージについては数値すうち基準きじゅん以外いがいに、原則げんそくとして金網かなあみを床ゆか材ざいに使つかうことを禁止きんしすることも盛り込もりこんでいます。

【飼育しいくできる数かず】

飼育しいくできる動物どうぶつの数かずです。

いずれも従業じゅうぎょう員いん1人にん当あたりで、ブリーダーの場合ばあい、犬いぬが15匹ひき、猫ねこが25匹ひきまで、ペットショップの場合ばあい、犬いぬが20匹ひき、猫ねこは30匹ひきまでなどとしています。そして、接客せっきゃくだけを担当たんとうする販売はんばい員いんはこの場合ばあいの「従業じゅうぎょう員いん」には含ふくめないとしています。

【繁殖はんしょく回数かいすう】

むやみに繁殖はんしょくさせ、メスの犬いぬや猫ねこに過度かどな負担ふたんをかけることがないよう交配こうはいについても基準きじゅんを示しめしています。犬いぬと猫ねこのメスは、交配こうはいさせるのは原則げんそくとして6歳さいまでとし、出産しゅっさん回数かいすうに応おうじて、例外れいがい的てきに7歳さいまで認みとめるとしています。また、犬いぬについては一生いっしょうの間まに出産しゅっさんできる回数かいすうを6回かいまでに限定げんていしています。

【健康けんこう診断しんだん義務ぎむ化か・虐待ぎゃくたい禁止きんし】

獣しし医師いしによる年とし1回かいの健康けんこう診断しんだんを義務ぎむづけるほか、爪つめが伸のびたまま放置ほうちするといった動物どうぶつ虐待ぎゃくたいとみられる行為こういを禁止きんしするとしています。

【違反いはんした場合ばあいは】

こうした基準きじゅんに違反いはんした事業じぎょう者しゃに対にたいしては、自治体じちたいが改善かいぜん命令めいれいや業務ぎょうむ停止ていし命令めいれいを出だすことができ、それでも従したがわない場合ばあいは100万まん円えん以下いかの罰金ばっきんが科かされることもあります。

動物どうぶつ愛護あいご団体だんたいなどから強つよい要望ようぼう

今回こんかい、環境省かんきょうしょうが適正てきせいな飼育しいく環境かんきょうや方法ほうほうについて初はじめて数値すうち基準きじゅんを設もうける方針ほうしんを決きめた背景はいけいには、動物どうぶつ愛護あいご団体だんたいなどからの強つよい要望ようぼうがありました。

東京とうきょう都内とないにある動物どうぶつ愛護あいご団体だんたいで、公益こうえき財団ざいだん法人ほうじんの「動物どうぶつ環境かんきょう・福祉ふくし協会きょうかいEva」には、動物どうぶつが劣悪れつあくな環境かんきょうで飼育しいくされているという内部ないぶ告発こくはつがペットショップの従業じゅうぎょう員いんなどからたびたび寄よせられるといいます。

おととし、埼玉さいたま県内けんないのペットショップの元もと従業じゅうぎょう員いんから寄よせられたという写真しゃしんでは、キャリーケースや、モルモットやハムスターを飼かうための小ちいさなケージに犬いぬや猫ねこが閉じ込とじこめられ、飼育しいくされている様子ようすが分わかります。

元もと従業じゅうぎょう員いんの話はなしでは、1日にち当あたり2人にんほどのスタッフが接客せっきゃくもこなしながら合あわせて40匹ひきから50匹ひきの犬いぬや猫ねこをバックヤードで飼育しいくしていて、世話せわは十分じゅうぶんに行き届いきとどいていなかったということです。

また、栃木とちぎ県内けんないのブリーダーの飼育しいく拠点きょてんを写うつしたという写真しゃしんでは犬いぬが入はいったケージが山積やまづみされています。

団体だんたいによりますと、このブリーダーは1人にんでおよそ200匹ひきの犬いぬを飼育しいくし、ケージが置おかれていた小屋こやは雨風あめかぜを防ふせぐこともできず、この写真しゃしんを撮影さつえいした別べつの動物どうぶつ愛護あいご団体だんたいが現場げんばを確認かくにんしたときには、衰弱すいじゃくして死しんでいた犬いぬもいたということです。

「動物どうぶつ環境かんきょう・福祉ふくし協会きょうかいEva」の松井まつい久美子くみこ事務じむ局長きょくちょうは、「こうした情報じょうほうを自治体じちたいに提供ていきょうし指導しどうしてもらうよう求もとめてきたが、なにが『適正てきせいな飼育しいく』なのか、具体ぐたい的てきな基準きじゅんがないため、なかなか改善かいぜんにつながらなかった。数値すうち基準きじゅんが設もうけられることは大おおきな意義いぎがある」と話はなしていました。

業界ぎょうかい団体だんたい「事前じぜんに対応たいおう策さく提示ていじを」

環境省かんきょうしょうが素案そあんで示しめした規制きせいが適用てきようされれば、どんな影響えいきょうが出でるのか。

全国ぜんこくペット協会きょうかいなどの業界ぎょうかい団体だんたいでつくる「犬いぬ猫ねこ適正てきせい飼養しよう推進すいしん協議きょうぎ会かい」などはことし7月つき、全国ぜんこくの犬いぬや猫ねこのブリーダーを対象たいしょうにアンケート調査ちょうさを行おこない、1100余あまりの事業じぎょう者しゃから回答かいとうを得えました。

それによりますと、素案そあんで示しめされた従業じゅうぎょう員いん1人にん当あたりの飼育しいく数すうの基準きじゅんについて、犬いぬのブリーダーのおよそ65％猫ねこのブリーダーのおよそ32％が飼育しいく数すうが「基準きじゅんを超こえる」と回答かいとうしました。

これらのブリーダーに対応たいおう策さくを複数ふくすう回答かいとうで尋たずねたところ、

犬いぬのブリーダーでは、

「飼育しいく頭数とうすうを減へらす」が75％、

「廃業はいぎょうを検討けんとうする」がおよそ50％、

猫ねこのブリーダーでは、

「飼育しいく頭数とうすうを減へらす」がおよそ61％、

「廃業はいぎょうを検討けんとうする」がおよそ60％にのぼり、

経営けいえいが成り立なりたたないと考かんがえる事業じぎょう者しゃも少すくなくないことが分わかったということです。

協議きょうぎ会かいなどは、規制きせいが適用てきようされれば、犬いぬと猫ねこを合あわせて13万まん匹ひき以上いじょうの引き取ひきとり先さきを確保かくほしなければならなくなると推計すいけいしていて、アンケート結果けっかを受うけた声明せいめいでは、「それぞれの団体だんたいでも譲渡じょうと先さきや一時いちじ的てきな保管ほかん先さきについて検討けんとうを続つづけているが、その確保かくほは極きわめて困難こんなんな状況じょうきょうになっている。行き場いきばを失うしなう犬いぬ猫ねこが生しょうじないよう、環境省かんきょうしょうや地方ちほう自治体じちたいは、事前じぜんに対応たいおう策さくや準備じゅんび計画けいかくを提示ていじしてほしい」としています。

不安ふあん募つのらせるブリーダー

新あらたな規制きせいに不安ふあんを募つのらせているブリーダーもいます。

中部ちゅうぶ地方ちほうの70代だいの女性じょせいは、夫おっとと2人にんで20年ねん以上いじょう、犬いぬのブリーダーを続つづけていて、いまは、チワワやポメラニアンなど40匹ひきの小型こがた犬いぬを飼育しいくしています。

エアコンのついた専用せんようの小屋こやで、1匹ひきずつ金属きんぞく製せいのケージに入いれて飼育しいくしていて、ケージは毎日まいにち、水洗みずあらいし、清潔せいけつに保たもつようにしています。また、1日にち2時間じかんは屋外おくがいで放はなして運動うんどうさせるなど体調たいちょう管理かんりに気きをつかっているといいます。

しかし、環境省かんきょうしょうが示しめした数値すうち基準きじゅんが適用てきようされると、半数はんすう近ちかくのケージはより大おおきなものに買い替かいかえる必要ひつようがあるうえ、従業じゅうぎょう員いんも新あらたに1人にん雇やとわなければなりませんが今いまの経営けいえい状態じょうたいでは、どちらも難むずかしいと考かんがえています。そのため、飼育しいくする犬いぬの数かずを減へらすことを検討けんとうしていますが、引き取り手ひきとりてを見みつけられるか不安ふあんを感かんじています。

女性じょせいは、「規制きせいが始はじまれば、全国ぜんこくの多おおくのブリーダーが大量たいりょうの犬いぬを手放てばなさざるをえなくなると思おもうので、すぐに引き取り手ひきとりてを見みつけることはできないと思おもいます。ブリーダー仲間なかまとの間までは、『このままではやっていけない』という話はなしで持もちきりです。犬いぬを引き取ひきとってもらえなければ廃業はいぎょうすることすらできず、どうしたらいいのかわかりません」と話はなしていました。

専門せんもん家か「相談そうだん体制たいせいの構築こうちくも」

動物どうぶつをめぐる政策せいさくに詳くわしい成城せいじょう大学だいがく法学部ほうがくぶの打越うちごし綾子あやこ教授きょうじゅは、「ペット業界ぎょうかいが自主じしゅ的てきな努力どりょくを重かさねてもいまだに劣悪れつあくな業者ぎょうしゃが少すくなくないのが現実げんじつで、数値すうち基準きじゅんを設もうけることは妥当だとうだ」としています。

そのうえで、「行き場いきばを失うしなう犬いぬや猫ねこの引き取り手ひきとりては社会しゃかい全体ぜんたいで探さがさなければならずブリーダーなどに対にたいする相談そうだん体制たいせいを構築こうちくする必要ひつようがある。動物どうぶつの問題もんだいは、動物どうぶつをめぐる人間にんげんの問題もんだいだと認識にんしきして、社会しゃかい全体ぜんたいで議論ぎろんすべきだ」と指摘してきしています。

環境省かんきょうしょうは、多おおくの犬いぬや猫ねこが行き場いきばを失うしなうことにならないよう譲渡じょうと先さきの確保かくほなど、対策たいさくを検討けんとうする場ばを新あらたに設もうけることにしています。