年金ねんきん制度せいど改革かいかく関連かんれん法ほうが成立せいりつ どう変かわる？課題かだいは？

法律ほうりつでは、パートなどで働はたらく短みじか時間じかん労働ろうどう者しゃの低てい年金ねんきん対策たいさくとして、厚生こうせい年金ねんきんに加入かにゅうしやすいよう、加入かにゅう条件じょうけんのうち企業きぎょう規模きぼの要件ようけんを現在げんざいの従業じゅうぎょう員いん「501人にん以上いじょう」から、「51人にん以上いじょう」まで段階だんかい的てきに引き下ひきさげ、適用てきよう範囲はんいを拡大かくだいします。

また、60歳さい以降いこうも就労しゅうろうを促うながすため、働はたらいて一定いっていの収入しゅうにゅうがある高齢こうれい者しゃの年金ねんきんを減へらす「在職ざいしょく老齢ろうれい年金ねんきん」制度せいどで、60歳さいから64歳さいの人ひとの年金ねんきんが減へらされる収入しゅうにゅうの基準きじゅん額がくを、今いまの月額げつがく28万まん円えんから47万まん円えんに引き上ひきあげます。

さらに、現在げんざい60歳さいから70歳さいまでとなっている年金ねんきんの受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいの選択肢せんたくしの幅はばを75歳さいまで拡大かくだいします。

今回こんかいの改正かいせいは、働はたらき方かたが多様たよう化かし、高齢こうれい者しゃの就業しゅうぎょう機会きかいが拡大かくだいしていることに対応たいおうするとともに、年金ねんきん財政ざいせいの安定あんてい化かのため支ささえ手しゅを増ふやすねらいがあります。法律ほうりつの主おもな部分ぶぶんは、再さい来年らいねん4月つきに施行しこうされます。

年金ねんきん制度せいどはどう変かわる

年金ねんきん制度せいどは、どう変かわるのか。主おもな変更へんこう点てんです。

１いち 厚生こうせい年金ねんきんの適用てきよう範囲はんいが拡大かくだい

パートなどで働はたらく短みじか時間じかん労働ろうどう者しゃは、サラリーマンなどが加入かにゅうする厚生こうせい年金ねんきんに加入かにゅうしていない人ひとが多おおく、将来しょうらい、受け取うけとる年金ねんきんが十分じゅうぶんでないと老後ろうごの生活せいかつを懸念けねんする声こえも上あがっています。

このため、短時間たんじかん労働ろうどう者しゃが厚生こうせい年金ねんきんに加入かにゅうしやすくするため、現在げんざい、従業じゅうぎょう員いん「501人にん以上いじょう」の企業きぎょうに勤つとめていることが条件じょうけんとなっている企業きぎょう規模きぼの要件ようけんを段階だんかい的てきに緩和かんわします。

2022年ねん10月つきに「101人にん以上いじょう」に、2024年ねん10月つきに「51人にん以上いじょう」まで、2段階だんかいで引き下ひきさげます。保険ほけん料りょうの半分はんぶんは企業きぎょうが負担ふたんするため、負担ふたんが増ふえる中小ちゅうしょう企業きぎょうに配慮はいりょし、段階だんかい的てきな引き下ひきさげとなりました。

「101人にん以上いじょう」にした場合ばあい、新あらたに45万まん人にんが。「51人にん以上いじょう」にした場合ばあい、65万まん人にんが適用てきよう対象たいしょうとなると見込みこまれています。

いわゆる「就職しゅうしょく氷河期ひょうがき」世代せだいの非ひ正規せいき雇用こようの人ひとなどの低てい年金ねんきん対策たいさくにつなげるねらいもあります。

２に 在職ざいしょく老齢ろうれい年金ねんきんの見直みなおし

「在職ざいしょく老齢ろうれい年金ねんきん」は、働はたらいて一定いっていの収入しゅうにゅうがある高齢こうれい者しゃの年金ねんきんを減へらす仕組しくみですが、高齢こうれい者しゃの就労しゅうろう意欲いよくをそいでいるという指摘してきも出でています。

このため、60歳さいから64歳さいの人ひとについては、年金ねんきんが減へらされる収入しゅうにゅうの基準きじゅん額がくを今いまの月額げつがく28万まん円えんから47万まん円えんに引き上ひきあげます。

一方いっぽうで、65歳さい以上いじょうの人ひとについては、与党よとう内ないからも「高こう所得しょとく者しゃの優遇ゆうぐうになる」などとして、引き上ひきあげに慎重しんちょう論ろんが相次あいついだことから、今いまの月額げつがく47万まん円えんで据え置すえおかれました。

３さん 受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれい 選択肢せんたくしの幅はばを75歳さいまで拡大かくだい

年金ねんきんの受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいは、現在げんざい、60歳さいから70歳さいの間まで自由じゆうに選えらぶことができます。

高齢こうれい者しゃの就業しゅうぎょう機会きかいの拡大かくだいにあわせ、受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいの選択肢せんたくしの幅はばを75歳さいまで拡大かくだいし、60歳さいから75歳さいの間まで選えらべるようになります。

年金ねんきん額がくは、65歳さいより早はやく受け取うけとり始はじめた場合ばあいは、1か月かげつ当あたり0.4％減へる一方いっぽう、65歳さいより遅おくらせた場合ばあいは1か月かげつ当あたり0.7％増ふえます。

75歳さいから受け取うけとり始はじめると、65歳さいからの場合ばあいと比くらべ、年金ねんきん額がくは84％増ふえることになります。

４よん「iDeCo」が利用りようしやすく

公的こうてき年金ねんきんに上乗うわのせする「個人こじん型がた」の確定かくてい拠出きょしゅつ年金ねんきん＝「ｉＤｅＣｏ」が利用りようしやすくなります。

60歳さい未満みまんとなっている加入かにゅう期間きかんの上限じょうげんが、65歳さい未満みまんまで延長えんちょうされる一方いっぽう、60歳さいから70歳さいまでの間まで選えらべる受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいの選択肢せんたくしが75歳さいまで広ひろがります。

また、申し込もうしこみなどの手続てつづきが、オンラインでできるようになります。

さらに、「企業きぎょう型がた」の確定かくてい拠出きょしゅつ年金ねんきんに加入かにゅうしている会社かいしゃ員いんが希望きぼうすれば、労使ろうしの合意ごういがなくても「ｉＤｅＣｏ」に加入かにゅうできるようになります。

「企業きぎょう型がた」と併用へいようする場合ばあい、掛金かけきんは合あわせて月額げつがく5万まん5000円えんまでで、このうち「ｉＤｅＣｏ」は、月額げつがく2万まん円えんまでの範囲はんいで自由じゆうに組み合くみあわせることができます。

「ｉＤｅＣｏ」は、掛金かけきんや運用うんよう益えきは非課税ひかぜいとなるメリットがあり、老後ろうごの資産しさん形成けいせいにつなげてもらうねらいがあります。

残のこされた課題かだいは

年金ねんきん制度せいどには、なお、いくつかの課題かだいが残のこっています。

“さらなる適用てきよう拡大かくだい”

厚生こうせい年金ねんきんの適用てきよう範囲はんいをさらに拡大かくだいするかどうかです。

今回こんかいの改正かいせいに向むけた議論ぎろんの過程かていでは、「雇用こようされている人ひとは原則げんそく、すべての人ひとが厚生こうせい年金ねんきんに加入かにゅうできるようにすべき」だとして、企業きぎょう規模きぼの要件ようけんそのものを撤廃てっぱいすべきだという意見いけんも多おおく出だされました。

撤廃てっぱいした場合ばあい、新あらたに125万まん人にんが適用てきよう対象たいしょうになるということです。

今回こんかいの改正かいせいでは、保険ほけん料りょう負担ふたんが増ふえる企業きぎょう側がわに配慮はいりょして、撤廃てっぱいは見送みおくられましたが、さらなる適用てきよう拡大かくだいは今後こんごの検討けんとう課題かだいとなりそうです。

“基礎きそ年金ねんきんの充実じゅうじつ”

公的こうてき年金ねんきんの将来しょうらいの給付きゅうふ水準すいじゅんの見通みとおしを示しめす去年きょねんの「財政ざいせい検証けんしょう」では、「基礎きそ年金ねんきん」の将来しょうらいの給付きゅうふ水準すいじゅんが、厚生こうせい年金ねんきんに比くらべて、大おおきく低下ていかするという結果けっかが示しめされました。

国会こっかい審議しんぎでは、与野党よやとう双方そうほうから、懸念けねんや対策たいさくを講こうじるよう求もとめる意見いけんが出だされ、付帯ふたい決議けつぎには、今後こんごも必要ひつような検討けんとうを行おこなうことが盛り込もりこまれました。

「基礎きそ年金ねんきん」の給付きゅうふ水準すいじゅんの引き上ひきあげを図はかるため、60歳さいまでとなっている国民こくみん年金ねんきんの加入かにゅう期間きかんを65歳さいまで延長えんちょうし、45年間ねんかんとする案あんも検討けんとうされましたが、今回こんかいは見送みおくられました。

「基礎きそ年金ねんきん」の財源ざいげんは、半分はんぶんを国庫こっこ負担ふたん＝税金ぜいきんで賄まかなうため、加入かにゅう期間きかんの延長えんちょうは、税ぜいの引き上ひきあげとセットで議論ぎろんすべきだという指摘してきも出でています。

“新型しんがたコロナの影響えいきょう”

国会こっかい審議しんぎでは、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいが、年金ねんきん制度せいどに与あたえる影響えいきょうについても議論ぎろんとなりました。

今回こんかいの改正かいせいで、厚生こうせい年金ねんきんの適用てきようが拡大かくだいされ、企業きぎょうの保険ほけん料りょう負担ふたんが増ふえる業種ぎょうしゅは、旅館りょかんや外食がいしょくチェーンなどです。これらの業種ぎょうしゅでは、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで経営けいえいが苦くるしくなっているところも少すくなくありません。

このため、要件ようけんを緩和かんわするスケジュールを遅おくらせるよう求もとめる意見いけんも出でましたが、労働ろうどう者しゃの年金ねんきんを確保かくほする必要ひつようがあるとして、当初とうしょの案あんのままとなりました。負担ふたんの増ふえる企業きぎょう側がわへの目配めくばりが必要ひつようとなります。

去年きょねんの財政ざいせい検証けんしょうでは、経済けいざいが順調じゅんちょうに成長せいちょうした場合ばあい、現役げんえき世代せだいの平均へいきん収入しゅうにゅうの50％以上いじょうの給付きゅうふ水準すいじゅんは維持いじできるという試算しさんが示しめされました。

しかし、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいが、日本にっぽん経済けいざいや世界せかい経済けいざいに大おおきな影響えいきょうを与あたえていることから、試算しさんの前提ぜんていとなる「経済けいざい成長せいちょう率りつ」の設定せっていが変かわったのではないかという指摘してきも出だされました。

経済けいざいへの影響えいきょうは数すう年ねん続つづくという見方みかたもあります。現役げんえき世代せだいの老後ろうごの安心あんしんを守まもるために年金ねんきん財政ざいせいをどのように維持いじしていくのかが引き続ひきつづき、大おおきな課題かだいとなります。