温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつ量りょう 過去かこ最悪さいあくの多おおさに UNEP発表はっぴょう

この報告ほうこく書しょは、来月らいげつ２に日にちから地球ちきゅう温暖おんだん化か対策たいさくについて話し合はなしあう国連こくれんの会議かいぎ、「COP25」がスペインで始はじまるのを前まえにUNEPが、26日にち、スイスのジュネーブで発表はっぴょうしました。

それによりますと、去年きょねん１いち年間ねんかんに世界せかいで排出はいしゅつされた温室おんしつ効果こうかガスの量りょうは553億おくトンと、これまでの排出はいしゅつ量りょうを更新こうしんして過去かこ最悪さいあくの多おおさとなりました。

報告ほうこく書しょでは、世界せかいの平均へいきん気温きおんの上昇じょうしょうを、産業さんぎょう革命かくめい前まえに比くらべて、２に度ど未満みまんに抑おさえるためには2030年ねんの時点じてんで150億おくトン減へらす必要ひつようがあると指摘してきしていますが、現状げんじょうでは実現じつげんが難むずかしく、各国かっこくに対にたいして環境かんきょう政策せいさくの大幅おおはばな強化きょうかを求もとめています。

特とくに日本にっぽんに対にたいしては、石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょの建設けんせつを中止ちゅうしするほか、再生さいせい可能かのうエネルギーを利用りようすることで石油せきゆの利用りようを段階だんかい的てきにやめていくことなどを求もとめています。

この報告ほうこく書しょはCOP25でも取り上とりあげられる予定よていで、各国かっこくが対策たいさくの強化きょうかにつなげられるか問とわれています。

日本にっぽんが取り組とりくむ二に酸化さんか炭素たんその回収かいしゅう技術ぎじゅつ

日本にっぽん政府せいふはことし６月ろくがつ、地球ちきゅう温暖おんだん化か対策たいさくを進すすめるための長期ちょうき戦略せんりゃくを決定けってい。2050年ねんまでに温室おんしつ効果こうかガスを80％削減さくげんし、今世紀こんせいき後半こうはんのできるだけ早はやい時期じきに、排出はいしゅつゼロ＝「脱だつ炭素たんそ社会しゃかい」の実現じつげんを目指めざすことを掲かかげています。

長期ちょうき戦略せんりゃくでは、温室おんしつ効果こうかガスの排出はいしゅつを抑おさえるだけでなく、いったん排出はいしゅつされたものを回収かいしゅうする技術ぎじゅつを2023年ねんまでに実用じつよう化かすることも盛り込もりこまれています。

このうち、火力かりょく発電はつでん所しょなどで排出はいしゅつされるガスから二に酸化さんか炭素たんそを分離ぶんりして回収かいしゅうし地下ちか深ふかくに封じ込ふうじこめる「CCS」と呼よばれる技術ぎじゅつについては実証じっしょう試験しけんが進すすめられています。

北海道ほっかいどう苫小牧とまこまい市しにある施設しせつでは、製油せいゆ所しょから出でたガスに溶液ようえきを入いれてガスの中なかの二に酸化さんか炭素たんそを吸着きゅうちゃくさせ、分離ぶんりして回収かいしゅうする作業さぎょうが2016年ねん４月しがつから今月こんげつまで行おこなわれていました。

回収かいしゅうした二に酸化さんか炭素たんそは、パイプラインで沖合おきあいおよそ３さんキロの深ふかさ1000メートルから1200メートルの層そうと、深ふかさ2400メートルから3000メートルの層そうの２にか所かしょに送り込おくりこまれます。

それぞれの層そうの上うえには、泥どろ岩いわなどでできた「遮しゃへい層そう」と呼よばれる地層ちそうがあり、二に酸化さんか炭素たんそを通とおさないため、長期ちょうき間かん、安定あんていして貯留ちょりゅうすることができるとされています。

この施設しせつでは、およそ３さん年ねん半はんで合あわせて30万まんトン余あまりの二に酸化さんか炭素たんそを封じ込ふうじこめたということで、現在げんざい、安全あんぜん性せいを確認かくにんするためのモニタリングが続つづけられています。

地球ちきゅう環境かんきょう産業さんぎょう技術ぎじゅつ研究けんきゅう機構きこうの調査ちょうさでは、国内こくないの地中ちちゅうには、およそ1400億おくトンの二に酸化さんか炭素たんそを貯留ちょりゅうできると試算しさんされ、これは、日本にっぽんの年間ねんかんの排出はいしゅつ量りょうのおよそ100年ねん分ぶんにあたるということです。

しかし、コストが高たかいという課題かだいのほか、地中ちちゅうに埋うめた二に酸化さんか炭素たんそが地震じしんによって外そとに漏もれ出ださないかや、深ふかい地層ちそうに埋うめることで、地震じしんを誘発ゆうはつさせるのではないかという懸念けねんも出でています。

さらに、大気たいきから直接ちょくせつ、二に酸化さんか炭素たんそを回収かいしゅうする技術ぎじゅつも研究けんきゅう開発かいはつが始はじまっています。兵庫ひょうご県けん明石あかし市しにある川崎かわさき重じゅう工業こうぎょうの工場こうじょうでは環境省かんきょうしょうの委託いたくを受うけて、ことし８月はちがつから基礎きそ試験しけんが行おこなわれています。

使つかうのは、「アミン」という二に酸化さんか炭素たんそを吸収きゅうしゅうする性質せいしつがある化学かがく物質ぶっしつです。アミンをコーティングした粒つぶをパイプに詰つめ二に酸化さんか炭素たんそを通とおすと、わずか数すう分ふんで二に酸化さんか炭素たんそ濃度のうどは10万まんppmから０ぜろppmまで下さがります。

しかし、大気たいき中ちゅうの二に酸化さんか炭素たんその濃度のうどは通常つうじょう、300から400ppmで、低てい濃度のうどの大気たいきから二に酸化さんか炭素たんそだけを回収かいしゅうする方法ほうほうを今後こんご、研究けんきゅうする必要ひつようがあります。

同様どうようの技術ぎじゅつは海外かいがいでも開発かいはつが進すすめられていて、スイスのベンチャー企業きぎょうはごみ焼却しょうきゃく施設しせつの屋上おくじょうに巨大きょだいな装置そうちを設置せっちして二に酸化さんか炭素たんそを回収かいしゅうしていますが、１いちトン回収かいしゅうするのにおよそ６ろく万まん5000円えんから８はち万まん5000円えんかかり、回収かいしゅうできるのは年間ねんかん900トンだということです。

これに対にたいして、世界中せかいじゅうで排出はいしゅつされる二に酸化さんか炭素たんそは300億おくトンを超こえると言いわれています。

二に酸化さんか炭素たんそ回収かいしゅうの技術ぎじゅつについて環境省かんきょうしょうは「まずは再生さいせい可能かのうエネルギーを普及ふきゅうさせたり省エネしょうえねを徹底てっていしたりして二に酸化さんか炭素たんその排出はいしゅつをできるかぎり減へらすことが重要じゅうようだ。そのうえで、回収かいしゅう技術ぎじゅつを実用じつよう化かしてコストなどの課題かだいを解決かいけつしていくことも合あわせて進すすめる必要ひつようがあると考かんがえている」としています。

日本にっぽんの火力かりょく発電はつでん 76％に上のぼる

資源エネルギー庁しげんえねるぎ-ちょうによりますと、昨年度さくねんど（2018年度ねんど）の国内こくないの発電はつでん電力でんりょくのうち化石かせき燃料ねんりょうを使つかった火力かりょく発電はつでんは76％に上のぼります。

燃料ねんりょう別べつで見みますと天然てんねんガスが38％、石炭せきたんが31％、石油せきゆなどが７なな％となっています。

ほかの主要しゅよう国こくの化石かせき燃料ねんりょうが占しめる割合わりあいは原子力げんしりょく発電はつでんの割合わりあいが多おおいフランスが９きゅう％、ドイツが57％、温暖おんだん化か対策たいさくに消極しょうきょく的てきとされるトランプ政権せいけんのアメリカが65％となっています。

日本にっぽんで火力かりょく発電はつでんの割合わりあいが高たかいのは福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの事故じこのあと原発げんぱつの稼働かどうがゼロになり、火力かりょく発電はつでんで補おぎなう必要ひつようがあったことが影響えいきょうしています。ただ海外かいがいからは、火力かりょく発電はつでんのなかでも石炭せきたんの比率ひりつが高たかく、石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょを新設しんせつしていることが批判ひはんされています。

石炭せきたん火力かりょく発電はつでんの新設しんせつについて政府せいふは、安定あんてい供給きょうきゅうと経済けいざい性せいに優すぐれた重要じゅうような電源でんげんであるとして、環境かんきょうへの影響えいきょうなどをみたうえで問題もんだいがないと判断はんだんすれば認みとめることにしています。

また日本にっぽんがインドや東南アジアとうなんあじあなどに石炭せきたん火力かりょく発電はつでんの導入どうにゅうを支援しえんしていることについても批判ひはんの声こえもでていますが、これについて資源エネルギー庁しげんえねるぎ-ちょうは、「日本にっぽんが輸出ゆしゅつする高たかい効率こうりつの発電はつでん技術ぎじゅつは二に酸化さんか炭素たんその排出はいしゅつを抑おさえることができ、結果けっか的てきにはアジア全体ぜんたいの温室おんしつ効果こうかガス削減さくげんにつながる」と説明せつめいしています。

温暖おんだん化かへの危機ききは世界中せかいじゅうに

温室おんしつ効果こうかガスを減へらさなくてはいけないという危機きき感かんは、世界中せかいじゅうに広ひろがっています。なかでも若わかい世代せだいを動うごかすきっかけになったのは、スウェーデンの16歳さいの活動かつどう家か、グレタ・トゥーンベリさんです。

グレタさんは、温暖おんだん化か対策たいさくを訴うったえるため毎週まいしゅう金曜日きんようびに学校がっこうを休やすんで抗議こうぎを行おこなったことから、「未来みらいのための金曜日きんようび」として世界中せかいじゅうで多おおくの若者わかものが参加さんかする運動うんどうとなりました。

世界せかいの大だい企業きぎょうも温暖おんだん化か対策たいさくに積極せっきょく的てきに動うごき始はじめています。業務ぎょうむで使つかう電力でんりょくを2050年ねんまでにすべて再生さいせい可能かのうエネルギーで賄まかなうことを目指めざす「RE100」という取り組とりくみには、マイクロソフトやBMWのほか、世界せかいの大手おおて企業きぎょうを中心ちゅうしんに200社しゃ余あまりが参加さんかし、日本にっぽんからもイオンや富士通ふじつうなど参加さんかする企業きぎょうが増ふえています。

また、市民しみんの環境かんきょう意識いしきが企業きぎょうを動うごかした例れいもあります。航空こうくう業界ぎょうかいです。国土こくど交通こうつう省しょうの試算しさんでは飛行機ひこうきで１いちキロ移動いどうする際さいに排出はいしゅつされる乗客じょうきゃく１いち人にん当あたりの二に酸化さんか炭素たんそは、鉄道てつどうと比くらべると５ご倍ばいほどとされていて、グレタさんもこうした理由りゆうから飛行機ひこうきに乗のらないとしています。

ヨーロッパでは長距離ちょうきょりの移動いどう手段しゅだんに列車れっしゃを選えらぶ動うごきも出でていて、航空こうくう機きに乗のるのは恥はずかしいという意味いみの「飛とび恥はじ」ということばも生うまれました。

こうした動うごきを受うけ、フランスの航空こうくう会社かいしゃ「エールフランス」はことし10月つき、来年らいねんから国内こくない便びんの運航うんこうによって排出はいしゅつされる二に酸化さんか炭素たんそについて、植林しょくりん事業じぎょうなどで削減さくげんされる分ぶんを買い取かいとることで、100％相殺そうさいすると発表はっぴょうしました。また、KLMオランダ航空こうくうは、鉄道てつどう会社かいしゃと連携れんけいし、500キロ以下いかの路線ろせんを鉄道てつどうなどに置き換おきかえることを検討けんとうしていると明あきらかにしています。

専門せんもん家か「焦あせり感かんじるべき状態じょうたい」

国立こくりつ環境かんきょう研究所けんきゅうじょ地球ちきゅう環境かんきょう研究けんきゅうセンターの江守えもり正ただし多た副ふくセンター長ちょうは「パリ協定きょうていでは世界せかいの平均へいきん気温きおんの上昇じょうしょうを産業さんぎょう革命かくめい前まえに比くらべ1.5度どに抑おさえる努力どりょくをすることになっているが、そのためには2050年ねんには温室おんしつ効果こうかガスの排出はいしゅつ量りょうをゼロにするペースで減へらしていかないといけない。まず１いち年ねんでも早はやく減少げんしょうに転てんじなければいけないが2018年ねんに増ふえてしまったのは焦あせりを感かんじなければいけない状態じょうたいだ」と指摘してきしました。

そして「日本にっぽんが石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょを新設しんせつしていることに国際こくさい的てきに批判ひはんが寄よせられている。近年きんねん、大おおきな水害すいがいや猛暑もうしょを経験けいけんしたことも踏ふまえて、気候きこう変動へんどうを止とめるための施策しさくをもう一度もういちど、真剣しんけんに考かんがえなければならない。パリ協定きょうていが来年らいねんから本格ほんかく的てきに始はじまるが、来月らいげつ、開ひらかれる『COP25』で各国かっこくがどのような取り組とりくみを示しめすのか、注目ちゅうもくされる」と話はなしていました。