里親さとおやの80％以上いじょう 「養育よういくで困難こんなん」を経験けいけん ＮＨＫえぬえいちけい調査ちょうさ

ＮＨＫえぬえいちけいはことし１月いちがつ、里親さとおやの有志ゆうしのグループとともに、全国ぜんこくの里親さとおやを対象たいしょうにアンケート調査ちょうさを行おこない、５ご５ご３さん人にんから回答かいとうを得えました。

この中なかで、「養育よういくで困こまっていることはあるか」と尋たずねたところ、８はち０ぜろ．６ろく％が「はい」と答こたえました。

どんなことに困こまっているか複数ふくすう回答かいとうで聞きいたところ、子こどもの行動こうどうについて、「基本きほん的てき生活せいかつに難むずかしさがある」が最もっとも多おおく、５ご２に．５ご％、次ついで「愛着あいちゃく障害しょうがいが見みられる」が５ご０ぜろ．９きゅう％、「ばれるようなウソをつく」が３さん９きゅう．７なな％でした。

また里親さとおやのおよそ４よん人にんに１いち人にんに当にあたる２に６ろく．６ろく％が、養育よういくに困難こんなんを感かんじるなどして子こどもとの関係かんけいを解消かいしょうする「委託いたく解除かいじょ」の経験けいけんがあると答こたえました。

里親さとおやの問題もんだいについて詳くわしい静岡しずおか大学だいがくの白井しらい千晶ちあき教授きょうじゅは「子こどもたちは問題もんだい行動こうどうを起おこして里親さとおやの愛情あいじょうを試ためそうとすることがあり、こうした困難こんなんな側面そくめんを社会しゃかいに知しってもらうことが重要じゅうようだ。自治体じちたいがＮＰＯえぬぴ-お-などと連携れんけいし、里親さとおや家庭かていをきめ細きめこまかく支援しえんする必要ひつようがある」と話はなしています。

「委託いたく解除かいじょ」の里親さとおやたち “つらい心境しんきょう”

アンケートで、子こどもとの関係かんけいを解消かいしょうする「委託いたく解除かいじょ」を経験けいけんしたと回答かいとうした２に６ろく．６ろく％の里親さとおやたちは、自由じゆう記述きじゅつの中なかで、つらい心境しんきょうをつづっています。

この中なかでは「このまま育そだてていたら虐待ぎゃくたいしてしまうと思おもい、不調ふちょう（養育よういく関係かんけいを解消かいしょう）にしてもらった」とか、「自分じぶんたちの精神せいしん的てき負担ふたんが限界げんかいだった」など、子こどもを育そだてる難むずかしさに直面ちょくめんしたという回答かいとうが複数ふくすう寄よせられました。

また「子こどもを見捨みすてたようで、後悔こうかいばかりが残のこっている」「力不足ちからぶそくを感かんじている」など自分じぶんを責せめる記述きじゅつもありました。

一方いっぽう、「児童じどう相談そうだん所しょが一方いっぽう的てきに子こどもを連つれて行いってしまった」「もう少もうすこし頑張がんばってみたいのにその機会きかいが与あたえられなかった」など、子こどもの養育よういく環境かんきょうを決きめる児童じどう相談そうだん所しょの対応たいおうについて不満ふまんの声こえも寄よせられました。

困こまったことの最多さいたは「真実しんじつ告知こくち」

アンケートでは、子こどもを養育よういくするうえで困難こんなんを感かんじていると里親さとおやの８はち０ぜろ．６ろく％が回答かいとうしていますが、さらに子こどもとの関かかわり方かたについて困こまったことを複数ふくすう回答かいとうで聞ききました。

最もっとも多おおかったのは、子こどもの生い立おいたちを伝つたえたり、周囲しゅういに親子おやこの関係かんけいを知しらせたりする「真実しんじつ告知こくち」で３さん２に．２に％、次ついで「子こどもとの相性あいしょう」が３さん１いち．４よん％でした。

また「自分じぶんが情緒じょうちょ不安定ふあんていになる」と答こたえた人ひとが１いち９きゅう．９きゅう％いたほか、「里子さとごを虐待ぎゃくたいしそうになり怖こわくなる」と回答かいとうした人ひとも７なな人にんに１いち人にんに当にあたる１いち４よん．９きゅう％いました。（回答かいとう者しゃは３さん８はち２に人にん）。

子育こそだて経験けいけんない里親さとおやも

アンケートで、里親さとおやになったきっかけについて複数ふくすう回答かいとうで聞ききました。

最もっとも多おおかったのは「子育こそだてを通をとおして社会しゃかい・福祉ふくしに貢献こうけんしたい」が５ご５ご．５ご％、「子こどもを育そだてたい」が５ご３さん．３さん％でした。

また「実子じっしがいなかったから」と回答かいとうした人ひとが４よん２に．９きゅう％いたほか、「不妊ふにん治療ちりょうを断念だんねんしたから」という人ひとも３さん０ぜろ．７なな％いました。

子育こそだての経験けいけんがないまま里親さとおやを希望きぼうした人ひとも少すくなくないことがわかります。

３さん人にんに１いち人にんが「手当てあては不十分ふじゅうぶん」

里親さとおやには、養育よういくに必要ひつような費用ひようとして一般いっぱん的てきな里親さとおやの場合ばあい、子こども１いち人にんにつき、里親さとおや手当てあてと子こどもの生活せいかつ費ひを合あわせ、毎月まいつき１いち３さん万まん６ろく０ぜろ０ぜろ０ぜろ円えんから１いち４よん万まん４よん０ぜろ０ぜろ０ぜろ円えんほどが支払しはらわれます。このほか、子こどもの成長せいちょうに合あわせ、入学にゅうがく支度じたく金きんや就職しゅうしょく支度じたく費ひなども支給しきゅうされます。

アンケートで、手当てあてが十分じゅうぶんかどうか聞きいたところ、およそ３さん人にんに１いち人にんの３さん５ご．９きゅう％が「不十分ふじゅうぶん」と回答かいとうしました。

また、子こどもが何なん歳さいまで経済けいざい的てきなサポートが必要ひつようか尋たずねたところ、専門せんもん学校がっこうや大学だいがく卒業そつぎょうまでが７なな９きゅう．６ろく％、高校こうこうを卒業そつぎょうするまでが７なな．９きゅう％でした。

どのような費用ひようのサポートが必要ひつようか自由じゆう記述きじゅつで聞きいたところ、「大学だいがく進学しんがくなどの学費がくひ」や「部ぶ活動かつどうや修学しゅうがく旅行りょこう」という声こえが多おおく寄よせられたほか、「学習がくしゅう塾じゅくや習い事ならいごとに通かよう費用ひよう」という回答かいとうもありました。

修学しゅうがく旅行りょこうや習い事ならいごとなど学校がっこう生活せいかつに必要ひつような費用ひようは一定いっていの範囲はんいで支払しはらわれていますが、不十分ふじゅうぶんと感かんじている里親さとおやが少すくなくないことがうかがえます。

「子育こそだての喜よろこび」や「制度せいどの課題かだい」指摘してきも

アンケートの自由じゆう記述きじゅつ欄らんには、たくさんの声こえが寄よせられました。

「里子さとごはわが家わがやをとても明あかるくしてくれている。子こどもにとっても、ありのままを受け入うけいれ、大切たいせつにしてくれる家庭かていは絶対ぜったいに必要ひつようだと思おもう」とか、「子こどもと接せっしていくとかわいくてしかたなくなり、親子おやこは血ちのつながりだけではないことを身みをもって感かんじた」、「障害しょうがい児じを育そだてている。とても愛あいおしく、小ちいさな成長せいちょうをともに喜よろこぶことが生いきがいになっている」など里親さとおやとして子こどもを育そだてる喜よろこびを感かんじているという声こえが数多かずおおく寄よせられました。

一方いっぽう、制度せいどの課題かだいを指摘してきする意見いけんもありました。

「里親さとおや制度せいどをよく知しらない人ひとが多おおく、里子さとごを養育よういくしていることを隠かくす里親さとおやが多おおい。堂々どうどうと言いえる社会しゃかいになればいいなと思おもう」とか、「安心あんしんして里親さとおやができるための具体ぐたい的てきで実践じっせん的てきな支援しえんを作つくっていかなくてはならないと思おもう」という意見いけんもありました。

また「親権しんけんが強つよすぎて、親おやが同意どういをしないばかりに面会めんかいもないのに何なん年ねんも施設しせつで過すごす子こどもがいてかわいそうだ」、「制度せいどが里親さとおやのハードルを高たかくしていると感かんじる。日帰ひがえりの預あずかりから始はじめていずれ里親さとおやになるなど段階だんかい的てきな研修けんしゅうシステムを構築こうちくしていくべき」などといった声こえも寄よせられました。