これに対して、エルサレムを将来樹立する国家の首都と位置づけるパレスチナ側は各地で大規模な抗議活動を行い、ガザ地区では数万人規模のデモとなりました。
イスラエル軍は実弾を使って鎮圧を行い、その結果、パレスチナ人の子ども6人を含む55人が死亡し、1359人が実弾に当たってけがをしたということです。
こうした事態を受け、トルコ政府はアメリカとイスラエルに駐在する大使をそれぞれ召還する方針を決めたとワシントンにある大使館が明らかにしました。
トルコはイスラム教の国と地域で作るイスラム協力機構の議長国となっていて、アメリカやイスラエルに対してとりわけ強い姿勢を内外に示していることから、両国への対抗措置と見られます。
また、南アフリカ政府も声明を発表し、大勢のパレスチナ人が犠牲になっていることについて「最も強い言葉で抗議する」として、イスラエルに駐在する大使の召還を決めたと明らかにするなど反発が広がっています。
15日は、パレスチナ難民がイスラエルの建国に伴って故郷を追われてから70年の節目に当たり、衝突がさらに激しくなることも予想されます。
アラブ諸国もイスラエルに抗議
抗議活動を行うパレスチナ人に対し、イスラエル軍が実弾を発砲して多数の死者が出ている事態を受け、アラブ諸国からイスラエルへの抗議が相次いでいます。
このうち、UAE=アラブ首長国連邦の外務省は「正当な権利を求める人たちに対する過剰な武力行使で、受け入れられない」と抗議しています。
また、カタール外務省は「犠牲者の中には女性や子どもも含まれ、残酷な虐殺行為だ」と非難しました。
さらに、エジプト外務省は「武装していない住民たちを武力行使の標的にしている」と批判しました。
このように、アラブ諸国はイスラエルの対応には厳しい姿勢を見せていますが、アメリカとの関係の悪化を避けたい立場から、アメリカがエルサレムに大使館を移転したことへの非難は避ける国々も少なくありません。
5月15日「ナクバ」の日とは
5月15日は、パレスチナの人たちにとって故郷を追われた特別な日です。
イスラエルの建国に伴い、15日から70年前の1948年5月15日、大勢のパレスチナ人が住んでいた土地を追われて難民となりました。
パレスチナ人は、アラビア語で「大惨事」を意味するナクバと呼び、毎年、パレスチナ難民やその子孫らが、パレスチナの旗や、かつて追われた家に帰る権利の象徴として鍵を掲げて、故郷への帰還を訴える抗議活動を行っています。
パレスチナ暫定自治区や隣国のヨルダン、レバノンなどで暮らす難民は、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関によりますと、526万人余りに上ります。
イスラエル側とパレスチナ側の間では、これまで、アメリカを仲介役とする和平交渉が断続的に続けられてきましたが、イスラエル寄りの姿勢が際立つトランプ政権の発足後、交渉は暗礁に乗り上げています。
今回、トランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都と認定したうえ、14日、アメリカ大使館をエルサレムに移転したことから、パレスチナ側は強く反発しています。