1人の
女性が
産む子どもの
数の
指標と
なる去年の
出生率は
1.
43となり、
前の
年をわずかに
下回りました。
死亡した
人の
数から
産まれた
子どもの
数を
差し引いた
減少幅は、
過去最大の
39万人余りとなり、
人口の
減少が
加速している
実態が
浮き彫りとなりました。
厚生労働省によりますと、
1人の
女性が
一生の
うちに
産む子どもの
数の
指標と
なる「
合計特殊出生率」は、
去年は
1.
43となり
前の
年を
0.
01ポイント下回りました。
都道府県で最も高かったのは、沖縄で1.94、次いで宮崎が1.73、島根が1.72となっています。
一方、最も低かったのは東京で1.21、次いで北海道の1.29、宮城と京都が1.31となっています。
去年産まれた子どもの数=出生数は94万6060人と前の年より3万人余り減り、統計を取り始めて以降、最も少なくなりました。
一方、死亡した人の数=死亡数は134万433人で、前の年より3万2000人余り増加し、戦後、最多となっています。
その結果、死亡数から出生数を差し引いた減少幅は39万4000人余りと過去最大となっていて、人口の減少が加速している実態が浮き彫りになりました。
厚生労働省は「子どもを産む世代の女性が減り、結婚する人も少なくなっていて、出生率が下がったと見られる。今後、子育てがしやすい環境整備を進めて出生率を引き上げていきたい」としています。
子育て支援で高出生率の自治体も
関東地方の自治体の中には、子育て支援に力を入れることで出生率が高い水準になっているところもあります。
埼玉県滑川町はおととしの合計特殊出生率が1.70で、当時の全国平均の1.44より0.26ポイント高く、埼玉県内で最も高くなっています。
滑川町は県のほぼ中央部に位置し、東京・池袋まで電車でおよそ1時間のベッドタウンです。町によりますと、平成14年に新しい駅が開設されたことで転入者が増えたということです。
駅の周辺には新しい住宅が建ち並び、人口は平成14年以降、およそ6000人増加し、現在は1万9000人近くになっています。
若い世代を呼び込もうと町は子育て支援に力を入れています。平成23年度から幼稚園と保育園、それに小学校と中学校の給食費を所得にかかわらず、すべて無償化にしています。
また、医療費も18歳になる年度の3月末まで無償にしています。こうした支援の財源は、道路整備費などの費用を抑えて工面しているということで、平成28年度の一般会計を見ると、子育て支援などの「扶助費」の割合は、県内のほかの町や村よりおよそ5ポイント高い、21.7%を占めています。
2歳の息子がいる29歳の母親は「子育てがしやすい町だと聞いて引っ越してきました。将来を考えると町の経済的な支援は助かります」と話しています。また、4歳と2歳の息子がいる41歳の母親は「町が子育て支援に力を入れていることは、子どもを産むきっかけになっていると思います」と話しています。
滑川町の大塚信一総務政策課長は「子育て支援の強化が高い水準の出生率につながっているのだと思う。あちこちで子どもの元気な声が聞こえる町を目指していきたい」と話しています。
ほかの先進国では
合計特殊出生率は海外の先進国ではどのような水準になっているのでしょうか。厚生労働省はおととしの時点の諸外国の合計特殊出生率をまとめています。
それによりますと、おととし日本は1.44でしたが、これより高かった国はフランスが1.92、アメリカ1.82、イギリス1.79、ドイツ1.60などとなっています。
一方、日本より低かった国はイタリアが1.34、シンガポールが1.20、韓国が1.17で、ほかの先進国も出生率の低下に直面していることがわかります。
専門家「少子化前提で考える時代に」
人口問題に詳しい政策研究大学院大学の松谷明彦名誉教授は「合計特殊出生率は、都市部が低くて地方でやや高くなる傾向がある。ただ、子どもを産む年代の女性がこれから減少していくので、少子化の傾向は変えられない」と指摘しています。
そのうえで、「私たちは少子化を前提にした社会や経済のシステムを考える時代に立っている」と指摘しています。