福島第一原発の
事故をめぐり
東京電力の
旧経営陣3人が
業務上過失致死傷の
罪で
強制的に
起訴された
裁判で、16
日から
被告人質問が
始まりました。
法廷に
立った
原発の
安全対策を
担当していた
元副社長は、
原発事故が
起きる3年前に、
津波対策を
先送りしたと
指摘されていることについて、「
大変心外だ」と
述べて
強く
否定しました。
東京電力の
元会長の
勝俣恒久被告(78)、
元副社長の
武黒一郎被告(72)、
元副社長の
武藤栄被告(68)の
旧経営陣3人は、
原発事故をめぐって
検察審査会の
議決によって
業務上過失致死傷の
罪で
強制的に
起訴され、
いずれも
無罪を
主張しています。
東京地方裁判所で16日から始まった旧経営陣に対する被告人質問では、原発の安全対策を担当していた武藤元副社長が法廷に立ち、冒頭で、「当事者として深くおわびいたします」と謝罪しました。
武藤元副社長は、国の地震調査研究推進本部がまとめた津波についての見解「長期評価」に基づいて、原発事故の3年前に最大15.7メートルの津波が原発に到達するという内部の計算結果の報告を受けましたが、その1か月余り後に、専門家で作る土木学会にさらなる検討を依頼するよう指示したとして、検察官役の指定弁護士から津波対策を先送りにしたと指摘されています。
この時の判断について、武藤元副社長は弁護士の質問に対し、「長期評価の信頼性は専門家でも意見がばらつき、報告した担当者から信頼性がないと説明を受けた。土木学会にもう一度依頼することはごく自然であり、ほかの選択肢はない」と述べました。
そのうえで「社内でわからないことは専門家の意見を聞くという手順を踏んで、経営判断することが適切だ。先送りと言われることは大変心外だ」と語気を強めて述べ、対策を先送りしたという指摘を強く否定しました。
このあと検察官役の指定弁護士が質問し、東京電力の元幹部社員が供述調書の中で、事故の3年前に、勝俣元会長や武黒元副社長らも出席した会議で「想定される津波の高さが引き上げられて対策が必要になることを報告し、了承された」と証言していることについて、繰り返し問いただしました。
これに対し、武藤元副社長は「津波の説明は受けていない。あくまでも役員の情報共有の場で、決める場ではない」などと答えました。
武藤元副社長への被告人質問は17日も続く予定です。
傍聴した遺族「到底納得できない」
福島第一原発から4キロ余りの距離にある大熊町の「双葉病院」に入院し、事故後に避難を余儀なくされた父親を避難の末に亡くした、菅野正克さん(74)は被告人質問を傍聴した後、「もっと核心に迫る部分が出てくるのではないかと期待していましたが、あまり出てこなかった印象があり、残念に感じた」と話しました。
また、「事故の3年前に報告された最大で15.7メートルという津波の想定について、武藤元副社長は『信頼性がなかった』と証言していましたが、それは先送りするための方便だと思いましたし、到底、納得できませんでした。あす以降の被告人質問では、被害者や被災者に寄り添うという気持ちをもって真摯(しんし)な態度で臨んでほしい」と話していました。