参議院さんぎいん選挙せんきょ【解説かいせつ】なぜ自民じみんが大勝たいしょう？ 結果けっかを詳くわしく分析ぶんせき

今回こんかい、なぜ自民党じみんとうが勝かったのか、さまざまな側面そくめんから掘り下ほりさげていきます。

政治せいじ部ぶの山崎やまざき記者きしゃの解説かいせつです。

（動画どうがは8分ふん37秒びょうです。データ放送ほうそうではご覧ごらんになれません）

Q．

与党よとうの勝利しょうりとなった今回こんかいの選挙せんきょ結果けっかを受うけて、岸田きしだ総理そうり大臣だいじんは、今後こんごどう動うごくか？

A．

より「岸田きしだカラー」を前面ぜんめんに出だした政権せいけん運営うんえいができるようになったといえます。去年きょねんの衆議院しゅうぎいん選挙せんきょに続つづいての勝利しょうりとなりましたので、岸田きしだ総理そうりの政府せいふ・与党よとう内ないでの求心力きゅうしんりょくが強つよまることになります。

衆議院しゅうぎいんの解散かいさんがなければ、このあと3年間ねんかんは、本格ほんかく的てきな国政こくせい選挙せんきょの予定よていがない「黄金おうごんの3年ねん」とも言いわれる期間きかんを手てにしたことになります。

一方いっぽうで、選挙せんきょ直前ちょくぜんに、自民党じみんとう最大さいだい派閥はばつの領袖りょうしゅう（りょうしゅう）の安倍あべ元もと総理そうり大臣だいじんが殺害さつがいされるという、誰だれも想像そうぞうしなかった事件じけんが起おきました。

自民党じみんとう内ないのパワーバランスが大おおきく変かわることも予想よそうされ、実際じっさいに岸田きしだ総理そうりがどれだけのフリーハンドを持もてるようになるのかは、現時点げんじてんで見通みとおすことは難むずかしいかと思おもいます。

Q．

安倍あべ元もと総理そうり大臣だいじんの事件じけんは、選挙せんきょ結果けっかにも影響えいきょうを与あたえたか？

A．

確実かくじつなことは分わかりませんが、有権者ゆうけんしゃの投票とうひょう行動こうどうに影響えいきょうした可能かのう性せいはあります。NHKが行おこなった期日きじつ前ぜん投票とうひょうの出口でぐち調査ちょうさでは、比例ひれい代表だいひょうで自民党じみんとうに投票とうひょうしたと回答かいとうした人ひとが事件じけんの翌日よくじつの土曜どよう日びに4ポイント余あまり伸のびています。

最近さいきんは、期日きじつ前ぜん投票とうひょうの最終さいしゅう日びに自民党じみんとうが伸のびる傾向けいこうはありますが、事件じけんのあと、自民党じみんとうへの投票とうひょうがより増加ぞうかしたということはあるかもしれません。

また、投票とうひょう率りつが、最終さいしゅう的てきに前回ぜんかいを上回うわまわる見通みとおしとなったことも、事件じけんの影響えいきょうがあるかもしれません。

演説えんぜつ中ちゅうに起おきた卑劣ひれつな事件じけんに「民主みんしゅ主義しゅぎへの冒ぼうとくだ」という批判ひはんが相次あいつぎ、選挙せんきょの重要じゅうよう性せいを改あらためて認識にんしきし、投票とうひょう所しょに足あしを運はこんだ有権者ゆうけんしゃが増ふえた可能かのう性せいもあると思おもいます。

Q．

与党よとう側がわの勝因しょういん、野党やとう側がわの敗因はいいん。どう分析ぶんせきできるか？

A．

勝負しょうぶを決きめたのは、全国ぜんこくに32ある1人にん区くです。

自民党じみんとうは、前回ぜんかいの選挙せんきょで22勝しょう、前々回ぜんぜんかいは21勝しょうだったのに対にたいし、今回こんかいは28勝しょうと大おおきく数かずを伸のばし、野党やとうを圧倒あっとうしました。

今回こんかいは、野党やとう側がわが候補こうほ者しゃを一いち本ほん化かし、与党よとうと対決たいけつする構図こうずとなった選挙せんきょ区くが11にとどまったということが、要因よういんの1つと考かんがえられます。

与野党よやとう一騎打いっきうちの構図こうずを作つくれず、野党やとう勢力せいりょくの結集けっしゅうを図はかる機運きうんを高たかめられませんでした。

さらに、野党やとう間かんの足並あしなみの乱みだれ以外いがいにも要因よういんがありそうです。

例たとえば新潟にいがた選挙せんきょ区くは、前回ぜんかいと前々回ぜんぜんかいは、野党やとう側がわが競り勝せりかったのに対にたいし、今回こんかいは、自民党じみんとうが7ポイント近ちかくの差さをつけて勝利しょうりしました。

出口いでぐち調査ちょうさの結果けっかを見みますと、ふだん自民党じみんとうを支持しじしていると答こたえた人ひとが全体ぜんたいの47％と、全体ぜんたいの半数はんすう近ちかくにのぼり、次つぎに多おおかった無党派むとうは層そうの19％の2倍ばい以上いじょうとなっていることがわかります。

新潟にいがた選挙せんきょ区くで当選とうせんした自民党じみんとうの小林こばやしさんは、自民党じみんとうの支持しじ層そうの80％余あまりから支持しじを得えました。さらに、無党派むとうは層そうでは、3年ねん前まえの選挙せんきょと比くらべ、野党やとう側がわとの差さを詰つめました。党とうの支持しじ層そうが結束けっそくし、支持しじを無党派むとうは層そうにも広ひろげたことが自民党じみんとうの勝因しょういんと言いえます。

Q．

憲法けんぽう改正かいせいに前向まえむきな勢力せいりょくが大幅おおはばに増ふえる結果けっかとなったが、憲法けんぽう改正かいせいが大おおきく動うごきだすことになりそうか？。

A．

憲法けんぽう論議ろんぎがさらに活発かっぱつになることは予想よそうされますが、すぐに改正かいせいの発議ほつぎにつながっていくかどうかはわかりません。

改正かいせいに前向まえむきな4党とうの中なかでも、憲法けんぽう改正かいせいの具体ぐたい的てきな中身なかみをめぐっては、主張しゅちょうに隔へだたりが見みられるからです。

例たとえば、憲法けんぽう9条じょうに自衛隊じえいたいを明記めいきすることについては、自民党じみんとうと日本にっぽん維新いしんの会かいが、「自衛隊じえいたいの違憲いけん論争ろんそうに終止符しゅうしふを打うつことが必要ひつようだ」などとして、実現じつげんを目指めざしています。

これに対にたいし、公明党こうめいとうは、山口やまぐち代表だいひょうが「ほとんどの国民こくみんは、自衛隊じえいたいは合憲ごうけんで定着ていちゃくしているという認識にんしきだ」と述のべるなど、慎重しんちょうに検討けんとうする方針ほうしんを示しめしています。さらに、国民こくみん民主みんしゅ党とうの玉木たまき代表だいひょうも「自衛隊じえいたいを明記めいきすることで何なにが変かわるのかわからない」と指摘してきしています。

実際じっさいに憲法けんぽう改正かいせいを発議ほつぎするには、憲法けんぽうのどの部分ぶぶんをどのように変かえるのかという点てんで、3分ぶんの2以上いじょうが一致いっちする必要ひつようがあります。

今回こんかいの選挙せんきょ結果けっかを受うけて、具体ぐたい的てきな一致いっち点てんを探さぐる議論ぎろんが本格ほんかく化かすると見みられます。

ただ、自民党じみんとう内ないからは「それほど簡単かんたんではない」という声こえも聞きかれます。

Q．

一方いっぽう、今回こんかいの選挙せんきょで大おおきな争点そうてんとなった「物価ぶっか高騰こうとう対策たいさく」については、岸田きしだ政権せいけんは、具体ぐたい的てきにどう取り組とりくんでいくことになりそうか？。

A．

岸田きしだ総理そうり大臣だいじんは、選挙せんきょ期間きかん中ちゅう、野党やとう側がわが主張しゅちょうしていた消費しょうひ税ぜいの減税げんぜいを否定ひていし、エネルギーと食料しょくりょう品ひんに特とく化かした政府せいふの対策たいさくの効果こうかが出でているという認識にんしきを示しめしていましたので、これまでの方針ほうしんに沿そった対策たいさくを続つづけるものと見みられます。

一方いっぽうで、今後こんごも当面とうめん、物価ぶっか高だかが続つづくと指摘してきされるなかで、課題かだいの1つとなるのが賃上ちんあげです。

岸田きしだ総理そうり大臣だいじんが掲かかげる「新あたらしい資本しほん主義しゅぎ」でも、賃上ちんあげは大おおきな柱はしらの1つになっています。

歴代れきだいの政権せいけんが長年ながねん取り組とりくみながら、実質じっしつ的てきな成果せいかが上あがっていない課題かだいですので、政権せいけんとしての本気ほんき度どが問とわれることになると思おもいます。

Q．

円えん安やすへの対応たいおうは？

A．

円えん安やすの原因げんいんの1つと指摘してきされる、現在げんざいの大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわについては、岸田きしだ総理そうり大臣だいじんは維持いじする考かんがえを示しめしていますが、欧米おうべいが金融きんゆう引き締ひきしめという逆ぎゃくの動うごきを強つよめるなか、日本にっぽんとして、いわゆる出口でぐち戦略せんりゃくをどのように描えがいていくのかも焦点しょうてんになります。

Q．

今後こんごの注目ちゅうもくすべき政治せいじ日程にっていは何なにか？

A．

まずは、自民党じみんとう役員やくいん人事じんじと内閣ないかく改造かいぞうです。秋あきに臨時りんじ国会こっかいが検討けんとうされていて、それに先立さきだって岸田きしだ総理そうり大臣だいじんは、人事じんじの検討けんとうに入はいるものと見みられます。

政策せいさく面めんでは、安全あんぜん保障ほしょうをめぐる議論ぎろんです。政府せいふは、ことしの年末ねんまつまでに、安全あんぜん保障ほしょう関連かんれんの3つの文書ぶんしょを改定かいていする方針ほうしんです。参議院さんぎいん選挙せんきょでも争点そうてんになった防衛ぼうえい費ひの増額ぞうがくのほか、いわゆる「敵てき基地きち攻撃こうげき能力のうりょく」の在り方ありかたなどについて、今後こんご、議論ぎろんが本格ほんかく化かする見通みとおしです。

外交がいこうでは、G20サミット＝主要しゅよう20か国かこく首脳しゅのう会議かいぎやASEAN関連かんれんの首脳しゅのう会議かいぎなど大型おおがたの国際こくさい会議かいぎが予定よていされています。引き続ひきつづき、ウクライナ情勢じょうせいへの日本にっぽんの対応たいおうも焦点しょうてんとなります。

Q．

安倍あべ元もと総理そうり大臣だいじんが亡なくなったことで、岸田きしだ総理そうり大臣だいじんの今後こんごの政権せいけん運営うんえいを占うらなううえで何なにがポイントになるとみているか？

A．

政府せいふ与党よとうの政策せいさく決定けってい過程かていがどうなっていくかが焦点しょうてんです。

自民党じみんとう内ないで、比較的ひかくてきリベラルとされる岸田きしだ派はを率ひきいる岸田きしださんと、保守ほしゅ派はのリーダーと目めされる安倍あべさんは、経済けいざい政策せいさくや安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくなどをめぐって、時折ときおり、路線ろせんの違ちがいも見みられました。

安倍あべさんが岸田きしだ政権せいけんをけん制けんせいするような発言はつげんを行おこない、岸田きしださんが配慮はいりょを見みせるという場面ばめんが何なん度どか見みられました。

一方いっぽうで岸田きしださんとしては、安倍あべさんの求心力きゅうしんりょくに頼たよることで、党内とうないの融和ゆうわを図はかっていたという面めんもあると思おもいます。

自民党じみんとうの閣僚かくりょう経験けいけん者しゃの1人にんは「安倍あべさんほど、党内とうないの多おおくをまとめる力ちからを持もった議員ぎいんは見当みあたらない」と指摘してきしています。

今後こんご、岸田きしださんの打ち出うちだす政策せいさくに対にたいし、党内とうないから異論いろんが出でた場合ばあい、どう調整ちょうせいを図はかっていくかは、安定あんていした政権せいけん運営うんえいを続つづける上うえで重要じゅうようなポイントになると思おもいます。

そうした意味いみでは、9月つき上旬じょうじゅんまでに行おこなわれるのではないかと見みられている党とう役員やくいん人事じんじと内閣ないかく改造かいぞうで、岸田きしださんの今後こんごの方針ほうしんの一端いったんが見みえてくるのかもしれません。