マラソン指導しどう者しゃ 小出こいで義雄よしおさん 死去しきょ

高橋たかはしさんが金メダルきんめだるを獲得かくとくしたシドニーオリンピックのあと、千葉ちば県けんに佐倉さくらアスリート倶楽部くらぶを設立せつりつし、平成へいせい14年ねんからは倶楽部くらぶに籍せきを置おきながら選手せんしゅや実業じつぎょう団だんチームの指導しどうに当あたってきました。

小出こいでさんは、最近さいきんは体調たいちょうがすぐれず入にゅう退院たいいんを繰り返くりかえし、ことし３月さんがついっぱいで指導しどうの第一線だいいっせんから退しりぞいていました。

関係かんけい者しゃによりますと、小出こいでさんは心臓しんぞうを患わずらっていて、今月こんげつから病院びょういんの集中しゅうちゅう治療ちりょう室しつで治療ちりょうを受うけていましたが、24日にち午前ごぜん、亡なくなったということです。

小出こいでさんは、ことし２月にがつに静養せいようで訪おとずれた鹿児島かごしま県けんの徳之島とくのしまでは元気げんきな姿すがたを見みせ、ＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに対にたいし「オリンピックの代表だいひょうをみんなが納得なっとくして選えらぶには代表だいひょう選考せんこうレースしかない」と述のべ、９月くがつに初はじめて行おこなわれるオリンピックの代表だいひょう選考せんこうレースＭＧＣ＝「マラソングランドチャンピオンシップ」へ大おおきな期待きたいを寄よせていました。

「女子じょしマラソン界かいの名めい伯楽ばくろう」として知しられる

小出こいで義雄よしおさんは千葉ちば県けんの出身しゅっしんで、20歳さいをすぎてから順天堂大学じゅんてんどうだいがくに進学しんがくし、箱根はこね駅伝えきでんに１いち年生ねんせいから３さん年ねん連続れんぞくで出場しゅつじょうしました。

卒業そつぎょう後ごは千葉ちば県けんの高校こうこうで陸上りくじょう部ぶを指導しどうし、全国ぜんこく高校こうこう駅伝えきでんでチームを優勝ゆうしょうに導みちびき、指導しどう者しゃとして注目ちゅうもくされました。

1988年ねんからは実業じつぎょう団だんで指導しどうを始はじめ、オリンピックのバルセロナ大会たいかいで銀ぎん、アトランタ大会たいかいでは銅どうのメダルを獲得かくとくした有森ありもり裕子ゆうこさんや、シドニー大会たいかいで金メダルきんめだるを獲得かくとくした高橋たかはし尚子しょうこさんなど多おおくのトップ選手せんしゅを育そだて、女子じょしのマラソンや長距離ちょうきょり選手せんしゅの育成いくせいに優すぐれた指導しどう力りょくを発揮はっきしました。

2001年ねんからは、景気けいきや企業きぎょうの経営けいえい方針ほうしんに選手せんしゅが振り回ふりまわされることなく競技きょうぎに専念せんねんできるように、趣旨しゅしに賛同さんどうする企業きぎょうから資金しきんを集あつめて運営うんえいする「佐倉さくらアスリート倶楽部くらぶ」を千葉ちば県けんに設立せつりつし、選手せんしゅやチームの指導しどうを続つづけ、女子じょしマラソン界かいの名めい伯楽ばくろうとして知しられていました。

常識じょうしきにとらわれない練習れんしゅう法ほうで名めいランナー育成いくせい

小出こいで義雄よしおさんは、選手せんしゅのやる気やるきを引き出ひきだす指導しどう法ほうとともに、常識じょうしきにとらわれないくつかのトレーニングを日本にっぽんの長距離ちょうきょり界かいに取り入とりいれ、数々かずかずの名めいランナーを育そだてました。

大学だいがくを卒業そつぎょう後ご、昭和しょうわ40年ねんに千葉ちば県内けんないの高校こうこうで指導しどう者しゃ生活せいかつを始はじめた小出こいでさんが取り入とりいれたのは、高校こうこうの近ちかくの公園こうえんにあった起伏きふくのあるコースでの走り込はしりこみです。今いまでは長距離ちょうきょりの多おおくの選手せんしゅが取り入とりいれているクロスカントリーなど起伏きふくを使つかった練習れんしゅうですが、足あしを鍛きたえるのに適てきしていると考かんがえて導入どうにゅうした、時代じだいを先取さきどりした指導しどう法ほうでした。

実業じつぎょう団だんに入はいってから有森ありもり裕子ゆうこさんらの指導しどうに当あたる中なか、有名ゆうめいだったのがその人心じんしん掌握しょうあく術じゅつです。記者きしゃとの雑談ざつだんでは冗談じょうだんも飛び出とびだすなど豪放ごうほうらいらくな性格せいかくでしたが、選手せんしゅへの接せっし方かたは繊細せんさいで、褒ほめることでやる気やるきを引き出ひきだし、納得なっとくしたうえで厳きびしい練習れんしゅうに取り組とりくませることで結果けっかを出だしました。

また標高ひょうこう1600メートルを超こえるコロラド州しゅうボルダーでの高地こうちトレーニングを日本にっぽんの実業じつぎょう団だんではいち早いちはやく取り入とりいれたことでも知しられ、スピードだけでなく、スタミナと心肺しんぱい機能きのうの強化きょうかにもつなげました。

高橋たかはし尚子しょうこさんが出場しゅつじょうしたシドニーオリンピックのマラソンは、起伏きふくが激はげしい難なんコースで行おこなわれましたが、酸素さんそが薄うすく起伏きふくもあるボルダーを練習れんしゅうの拠点きょてんとしたことが功こうを奏そうして、日本にっぽんの女子じょしの陸上りくじょう選手せんしゅとして初はじめてとなる金メダルきんめだる獲得かくとくにつながりました。

小出こいでさんの薫陶くんとうを受うけた指導しどう者しゃも多おおく、マラソンで活躍かつやくした土佐とさ礼子あやこさんや渋井しぶい陽子ようこ選手せんしゅを育そだてた鈴木すずき秀夫ひでおさんや、リオデジャネイロオリンピックのトラック種目しゅもくに出場しゅつじょうした鈴木すずき亜あ由子ゆうこ選手せんしゅや関根せきね花はな観かん選手せんしゅを指導しどうしている高橋たかはし昌彦まさひこ監督かんとくなどがいます。

高橋たかはし尚子しょうこさん「感謝かんしゃの気持きもちでいっぱい」

小出こいで義雄よしおさんが亡なくなったことを受うけ、シドニーオリンピック金きんメダリストの高橋たかはし尚子しょうこさんは24日にち午後ごご、文書ぶんしょでコメントを発表はっぴょうしました。

高橋たかはしさんは、「オリンピックでメダルを獲えれたのも世界せかい記録きろくを出だせたのも、今いまの自分じぶんがあるのも小出こいで監督かんとくのおかげです。弱よわい私わたしを根気こんきよく指導しどうして下くださって、一緒いっしょに走はしって下くださって、自信じしんをつけさせてくださって、監督かんとくの大切たいせつな時間じかんを費ついやして下くださって、オリンピックでメダルを獲えらせて下くださって、ありがとうございます、と何なん度ど言いっても伝つたえきれないほど感謝かんしゃの気持きもちでいっぱいです。たくさんのことを教おそわりました。監督かんとくの笑顔えがおをもっと見みたかったし、お話おはなしももっと聞ききたかったです。これからは大好だいすきなお酒さけをたくさん飲のんで、思おもいっきりかけっこして下ください」と小出こいでさんへの感謝かんしゃの思おもいをつづりました。

鈴木すずきスポーツ庁ちょう長官ちょうかん「恩師おんし もっと話はなしをしたかった」

マラソンの指導しどう者しゃ、小出こいで義雄よしおさんが亡なくなったことについて、スポーツ庁ちょうの鈴木すずき長官ちょうかんは、高校こうこう時代じだいの体育たいいくの授業じゅぎょうで小出こいでさんから教おそわったことに触ふれたうえで、「非常ひじょうに残念ざんねんだ。陸上りくじょう界かいの名めい指導しどう者しゃだったし、恩師おんしだったので、もっともっと話はなしをしたかった」と述のべました。

そして、「やる気やるきを引き出ひきだすのが上手じょうずな先生せんせいで、いつも励はげましてくれ、勇気ゆうきづけられていた。小出こいでさんと同おなじ大学だいがくに進すすみ、いい指導しどう者しゃになりたいと思おもった。それくらい影響えいきょうを受うけた先生せんせいだった」と振り返ふりかえりました。

そのうえで、「すばらしい先生せんせいに高校こうこう時代じだいに教おしえてもらったことは誇ほこりだ。東京とうきょうオリンピックで小出こいでさんが直接ちょくせつ指導しどうするところが見みたかった」と述のべました。