オリンピックの開催について、これまでに専門家は多くの観客が移動したり、競技場の外でも多くの人の動きができたりすることで感染が拡大し、感染の第4波で起きたような医療体制の危機を招きかねないと指摘してきました。
また、専門家からは、スタジアムに多くの観客が入る様子が流れることで、感染対策を行っている人たちに対して「対策を取らなくてもよいのではないか」という矛盾したメッセージを送ることになるのではないかという懸念の声も出ています。
さらに、東京都で感染状況が下げ止まりする中、人出が増え、変異ウイルスの影響も加わって、感染が急拡大することが懸念されるとして、オリンピックは無観客での開催が望ましいという意見が強く、観客を入れる場合に取るべき対策なども説明する必要があるとしています。
専門家の有志は、見解を組織委員会などに伝えたうえで、18日午後6時に尾身会長らが日本記者クラブで会見を開き、説明することにしています。
これまでの感染拡大では、イベントや恒例行事に伴って感染者が急増したことが分かっていて、 ▽ことしの年始には、年末の忘年会などで飲食の機会が増えたことから、全国で感染が拡大したほか、 ▽感染の第4波では、懇親会や歓送迎会など、年度末や年度初めの行事を通じて大阪府など関西を中心に感染が拡大しました。 感染症対策の専門家は、オリンピックでは、さまざまな競技が同時多発的に行われ、ほかのスポーツイベントなどとは桁違いに多くの人が動くことや、非日常的なイベントで路上で喜び合うなど、人出や接触、飲食の機会が増えることで感染が拡大することを懸念しています。 政府分科会の尾身茂会長は、NHKのインタビューで「オリンピックを契機にした人の動きが問題だ。恒例行事で人の動きが盛んになって感染が増えていくことは証明済みだ。今回もスタジアムの中よりも、外の人の流れをどうコントロールするかで、選手の問題ではない」と指摘しています。 また、専門家は、スタジアムに多くの観客が入り、感染対策が不十分であるような映像が流れると、感染対策を行っている人たちに対して「対策を取らなくてもよいのではないか」という矛盾したメッセージを送ることになるのではないかと懸念しています。 尾身会長は6月9日、国会で「スタジアムの中の感染対策も大事だが、スタジアムに行かなくても、日本人のほとんどは、地域で一定程度の感染対策をお願いすることになるので、納得してもらえるようなスタジアムの中の景色も大事だ」と発言しています。 さらに、現在の感染状況について、 ▽東京や大阪では繁華街の人出が増えていて、特に東京都など首都圏で感染が下げ止まりの状況になっている中で、 ▽感染力が強いおそれが指摘されているインドで確認された変異ウイルス「デルタ株」が増加しているうえ、 ▽夏休みやお盆で多くの人が地域を越えて移動することが見込まれ、 感染が拡大する懸念が強まっています。 また、京都大学などのグループのシミュレーションでは、緊急事態宣言の解除後に人出が増えると、インドで確認された「デルタ株」の影響が小さいと仮定しても、東京都ではオリンピック開催期間中に再び緊急事態宣言のレベルまで感染者数が増加する可能性があるとする結果が出されていて、こうした結果をもとに対策に当たってきた専門家の中では、オリンピックは無観客での開催が望ましいという意見が強まっています。 尾身会長は6月2日、国会で「今のパンデミックの状況で開催するのは普通はない」と指摘したうえで「こういう状況の中でやるというのであれば、開催の規模をできるだけ小さくして、管理の体制をできるだけ強化するのが主催する人の義務だ」と述べていました。
専門家「桁違いに多くの人が動く 感染拡大の懸念」