生まれる前の検査で分かり、その際、医師からは「1年も生きられないかもしれない」と告げられました。
おなかの中で成長していることを実感する中で、夫婦で何度も話し合い、長く生きられるためにできるかぎりのことをしようと決めたといいます。
心咲さんは生後まもなく心臓の手術を受けたほか、視力や聴力が弱く、立ち上がるときは補助器具が必要です。
心咲さんが1歳になるころ、岸本さんは心咲さんをお風呂に入れると表情が和らぎ、体も動かそうとすることに気付きました。
水が好きなのではないかとプールに連れて行くと、心咲さんは体を動かして楽しそうに遊んだといいます。
今では水に潜ったり、息継ぎの練習をしたり、いつもよりも明るい表情を見せるようになったということです。
海外旅行にも行けるようになり、岸本さんは毎日の生活の中で心咲さんの成長を感じているといいます。
岸本さんの団体は「18トリソミー」の子どもたちの写真の展示会を開いていて、ふだんの生活の様子を伝える活動を行っています。
岸本さんは「重い障害は大変なこともありますが、生まれる前には想像できていなかった幸せを娘と一緒に暮らしながら感じていることを、もっと多くの人たちに伝えたいです」と話しています。
そして岸本さんは、検査を行う施設が増えることが予想されることについて「検査を行って、その結果をただ伝えるだけのものにならないか心配しています。すべての施設でしっかりと赤ちゃんの命と向き合って、家族に正しい情報を伝えられるような態勢を整えてほしい」と話していました。
専門家「生まれくる子の人権は」容認できず
生命倫理の問題に詳しい北里大学医学部の齋藤有紀子准教授は「妊婦の人権を守るという意味では不十分なところが多く、容認するのは難しい」と見解を述べました。
その理由について「専門の資格を持った医師やカウンセラーに不安とか悩みをじっくり聞いてもらえることは、妊婦が難しい意思決定をするときの大きな助けになる。それを検査の説明などでよいという内容にしてしまったのは、これまでの仕組みから大きく後退したと言わざるをえない」と指摘しました。
さらに「この検査は妊婦の人生の意思決定に関わると同時に、生まれてくる子どもや障害者の人権とも深く関わっている。カウンセリングの位置づけを変更したことは、生まれてくる命のことを十分に考えることから遠ざかってしまう。最も妊婦さんに近い医療を担っている学会が、妊婦の意思決定を支える部分を緩めてしまっている」と話していました。