裁判では、もう1人の実行犯とされたインドネシア人の女性の起訴が3日前に取り下げられ、女性は釈放されて帰国しました。
これを受けて、フオン被告の弁護士も起訴の取り下げを求めましたが、14日に開かれた裁判で検察側は起訴の取り下げを認めないことを明らかにし、裁判は続けられることになりました。
弁護士は「被告のうち一方だけを優遇している。差別的だ」と訴えたうえで、フオン被告の体調もすぐれないとして、14日に予定されていた被告人質問などの期日の延期を求め、裁判官はこれを認めました。
法廷で発言を促されたフオン被告は「気分はよくありません。ストレスを感じ、悲しいです。いったい何が起きているのかわかりません」と話していました。
今回の検察の判断は被告によって分かれる結果となりました。犯行時の状況をとらえた空港の監視カメラの映像では、フオン被告がキム・ジョンナム氏に直接、液体を塗る様子が映っていました。
これに対して、釈放された女性はそばにはいたものの直接何かをした様子は映っておらず、弁護士も直接的な証拠はないと主張していました。
ただ、検察は判断が分かれた理由を明らかにしていません。フオン被告の弁護士は今後も起訴の取り下げを求め続けていくとしています。
弁護側「理由の説明を」
フオン被告の弁護士は裁判のあと、記者団に対して「落胆している。なぜフオン被告の起訴の取り下げは却下され、もう一方は認めたのか、理由を説明するべきだ」と述べました。
そして、検察に起訴の取り下げを求め続けていく考えを示し、「ここ数日でベトナム政府がマレーシアの閣僚とやり取りし文書も送ったと聞いた。裁判の延期は政府間で話をしてもらうための時間を稼ぐねらいもある」と明らかにしました。
被告の父親「納得できない」
検察が起訴の取り下げを認めなかったことについて、フオン被告の父親はNHKの電話取材に応じ、「もう1人は釈放されたのに、どうしてこんなことになるのか、納得できない」と述べました。
そのうえで、「私にできることは何もないし、待つことしかできない。ベトナム政府とマレーシア政府には、私の娘と、娘を待つ私たち家族を助けてほしい。早く娘を釈放してほしい」と訴えました。