NHKは先月、東京大会の組織委員会と契約するスポンサー企業78社に対し、大会の延期を受けたアンケート調査を行い、57社から回答を得ました。
スポンサー企業の契約期間は、大会が行われる予定だったことし12月末までのため、まず、大会の延期で契約を延長するか聞きました。
すると、12%の企業が契約を「延長する」と答え、65%の企業が組織委員会とまだ具体的な協議をしていないなどとして契約を延長するか「決めていない」と答えました。
新型コロナウイルスの企業の業績への影響は、68%が「悪化している」と回答し、契約の延長で追加の協賛金の負担を求められた場合には、「できない」または「金額による」と答えたのは合わせて14%で、多くの企業が回答を控えました。
一方で、スポンサー企業としての意見を聞いたところ、「大会に関わるすべての人の『健康と安全』が担保されることが大前提」「安心して出場・観戦できる環境が整っていることが不可欠」「世界中の人々、アスリートの生命・健康の安全を守ることが最優先」など、安全・安心を求める企業が16社あり、新型コロナウイルス感染症を懸念する声が多く聞かれました。
中には、「大会前や大会中のスポンサーのイベントはほとんどが3密で、感染者を発生させてしまうリスクもある」としたうえで「ウイルスの影響で宣伝の機会が失われている。大会が中止になる可能性もあり、追加負担は慎重にならざるをえない」と答える企業もありました。
また、契約を延長する方針の企業からも「『大会の再延期はない』と報じられていて、中止が心配だ。無観客試合でも業界にとっては中止も同然だ」といった意見もあり、来年の開催に不安を抱えている企業があることも明らかになりました。
多くのスポンサー企業が契約を延長するかは「決めていない」と答える中、組織委員会が新たな大会計画の中で感染症対策を明確に示せるかが、企業がスポンサー活動を継続するうえでの重要な判断材料となりそうです。
スポンサー企業とは
オリンピックとパラリンピックのスポンサー企業は、IOC=国際オリンピック委員会やIPC=国際パラリンピック委員会が契約を結ぶ、全世界での活動を対象としたものと、大会の組織委員会が契約を結ぶ、その大会に限って国内での活動を対象としたものに分かれています。
このうち、東京大会の組織委員会が契約を結ぶスポンサー企業は78社あり、契約期間は大会が行われる予定だったことし12月末までで、スポンサー料となる協賛金を支払うことで、大会のエンブレムを使って広告や宣伝をすることなどができます。
また、協賛金や活動の内容に応じて3つのランクに分かれていて、
▽協賛金の額は最も高いランクで1社当たりおよそ150億円、
▽2番目のランクで数十億円、
▽3番目のランクで10億円前後と言われていて、
個別の契約内容によって金額は異なります。
協賛金は大会運営のために充てられ、組織委員会は去年12月の予算で、組織委員会の収入6300億円の50%以上を占める3480億円を計上していて、スポンサー企業からの収入としては過去大会と比べて最多となる見込みです。
専門家「組織委は安全な大会へ感染防止対策の情報発信を」
企業マーケティングに詳しい明治大学経営学部の大石芳裕教授は「現時点でスポンサー契約を延長したいと考える企業は、苦しい経営環境の中でも大会をサポートする意志を貫き通すことが評判を上げ、ブランド構築につながると考えていると思う。一方、決めていない企業は、来年に大会がやれるかどうかなどのリスクと自分たちのリターンを比較し、むしろマイナスになると考えれば、残念ながら下りる可能性はある」と話しています。
そのうえで、スポンサー企業の判断材料として、ことし9月ごろの新型コロナウイルスの状況や、同じ時期に見えてくる各企業の今年度の決算予測、そして組織委員会の感染防止対策を挙げました。
大石教授は「大会でクラスターが発生すれば、企業のプロモーション効果もネガティブになり、スポンサーとしていちばん恐ろしいことだ。組織委員会が安全な大会のために考えていることを発信し続けないと、スポンサー企業も疑心暗鬼になる」と述べ、組織委員会の情報発信の必要性を指摘しました。