前半のショートプログラムでトップに立った坂本選手は、25日の後半のフリーで確実性を重視して組み込んだダブルアクセルをほぼ完璧に決めて勢いに乗ると、演技後半にも3回転からの連続ジャンプや、ダブルアクセルからの3連続ジャンプを次々とミスなく決めました。
坂本選手は、ステップとスピンでも最高評価のレベル4を獲得するなど、大きなミスのない完成度の高い演技を見せてフリーで154.83、合計234.06をマークして3年ぶり2回目の優勝を果たし、オリンピック代表内定を確実にしました。
坂本選手は2018年のピョンチャン大会に続き、2大会連続のオリンピック出場となります。
2位は3年前の世界選手権で銀メダルを獲得した樋口新葉選手で、冒頭のトリプルアクセルこそ着氷がやや乱れたものの、その後の演技をまとめ、フリーで147.12、合計で221.78をマークしました。
3位は17歳の河辺愛菜選手で、冒頭でトリプルアクセルを着氷するなど、フリーで135.38、合計で209.65をマークしました。
前半で5位だった三原舞依選手は、順位を1つ上げて4位、ピョンチャンオリンピック代表の宮原知子選手は、ジャンプに精彩を欠き、5位でした。
北京オリンピックの代表内定選手は、26日行われる男子フリーの演技のあと、発表される予定です。
<上位5選手の成績>
1位 坂本花織
総合得点234.06(フリー得点154.83、SP得点79.23)
2位 樋口新葉
総合得点221.78(フリー得点147.12、SP得点74.66)
3位 河辺愛菜
総合得点209.65(フリー得点135.38、SP得点74.27)
4位 三原舞依
総合得点206.86(フリー得点133.20、SP得点73.66)
5位 宮原知子
総合得点206.51(フリー得点132.75、SP得点73.76)
前回のオリンピックは追う立場から逆転での代表入りでしたが、今シーズンはグランプリシリーズのNHK杯で2連覇を果たすなど日本女子を引っ張る存在として着実に結果を残してきました。 しかし、その歩みは決して平たんなものではありませんでした。 2019年から2020年のシーズンはモチベーションの維持に苦しみ、2連覇が期待された全日本選手権は6位。その後はロシア勢を中心にトリプルアクセルや4回転ジャンプなど高難度の大技が主流となり、坂本選手も習得を目指しましたが試合で跳べるまでには至りませんでした。 そして、去年の全日本選手権では目の前で年下の紀平梨花選手に4回転サルコーを決められ敗れるなど世界を見据えるなかで焦りがつのりました。 そうした中で迎えたオリンピックシーズン。 坂本選手はみずからの武器を見つめ直し、ジャンプの高さや幅といった質の高さ、そして演技全体の完成度で勝負しようと覚悟を決めました。 その成果は徐々に形となりNHK杯で優勝。 今大会のショートプログラムは、3つのジャンプすべてで高い出来栄え点を獲得し、自己ベストの得点をマークしました。 坂本選手は後半のフリーを前に、記者会見で「4年前は運が良ければ代表に入りたいと思っていたが、ことしは優勝して一発でオリンピック代表を決めたい」と強い気持ちを前面に出しました。
4回転ジャンプで世界を席巻するロシア勢に対し、磨き上げてきた完成度の高さがどこまで通用するのか、オリンピック本番へ期待が高まる結果となりました。
4回転ジャンプなどの大技への挑戦を封印し、ジャンプの質や演技の完成度を高めることで自己ベストを更新したことについては「ジャンプの出来栄え点で加点の幅が増えたし、演技構成点も1年ごとに上がってきている。また振り付け師がブノワ・リショーさんに変わってから細かなつなぎの部分が評価されて嬉しい。スケーティングの技術は上がっていると思う」と話していました。 北京オリンピックに向けては「前回のピョンチャン大会では団体戦も個人戦もミスが出たので、北京ではどれもパーフェクトに演技できるようにしたい」と意気込みを話しました。
前回、ピョンチャン大会の代表を逃してからの4年間について問われると「あのときは勝つことだけを考えて、せまい気持ちのなかでスケートの楽しさが感じられないまま試合に向かっていた。この1年2年はスケートに向き合うことができて、練習がつらかったり試合で力が発揮できなかったりしてもそれをプラスに変えることができるようになった。今回もオリンピックに行くことがすべてではないと思ってやってきた」と話していました。 そして、北京オリンピックの代表に選ばれた場合はショートプログラムでもトリプルアクセルに挑戦する意向を示し「オリンピックで自分のやりたいことを出し切りたい。もし、代表に選ばれたならば自分が持っているものを最大限にいかした試合をしたい」と意気込みを話しました。
急成長の要因を聞かれると、「国際大会を経験したことが一番大きい。まわりを気にしないということができるようになってきた。自分に集中することを去年はできていなかったが、それができるようになった」と自己分析していました。 そして、北京オリンピックの代表内定の発表を待つ心境を聞かれると「自分はまだまだオリンピックに出られるレベルに達していないと思う。あまり期待はしていないが、どこの試合に派遣していただけたとしてもいい演技ができるように練習を精いっぱい頑張りたい。まさか3位に入れると思っていなかったし、これからの練習は代表に選ばれても選ばれなくても一生懸命やるのは変わらない。それを大事に頑張りたい」と話しました。
そして、体調不良のため競技を休養するなど様々なことがあった4年間を振り返り「色んなことがあった4年間ですごく大変だったけど、あっという間だった。少しは前に進めたのかなと思う。きょうは緊張もあったので、もっと耐えることができる強いアスリートになっていきたい」と話しました。
<技術点 得点:80.04>(※GOE=出来栄え点) ダブルアクセル:4.81(GOE1.51) 3回転ルッツ(明確でない踏切):6.74(GOE0.84) 3回転フリップ+2回転トーループ:8.19(GOE1.59) 3回転サルコー:5.77(GOE1.47) フライングシットスピン(レベル4):3.90(GOE0.90) 3回転フリップ+3回転トーループ:12.80(GOE2.35) ダブルアクセル+3回転トーループ+2回転トーループ:11.00(GOE1.32) ステップシークエンス(レベル4):5.40(GOE1.50) 足換えコンビネーションスピン(レベル4):4.50(GOE1.00) コレオシークエンス:4.86(GOE1.86) 3回転ループ:7.42(GOE2.03) フライング足換えコンビネーションスピン(レベル4):4.65(GOE1.15) <演技構成点 得点:74.79> スケートの技術:9.43 演技のつなぎ:9.14 演技表現:9.54 振り付け:9.32 音楽の解釈:9.32
<技術点 得点:75.71>(※GOE=出来栄え点) トリプルアクセル:6.40(GOE-1.60) 3回転ルッツ+3回転トーループ:11.79(GOE1.69) 3回転サルコー:5.28(GOE0.98) 足換えコンビネーションスピン(レベル4):4.40(GOE0.90) 2回転アクセル:4.24(GOE0.94) 3回転ルッツ+3回転トーループ(回転不足):9.09(GOE-1.10) 3回転ループ+2回転トーループ+2回転ループ:9.60(GOE0.91) 3回転フリップ(明確でない踏切):6.06(GOE0.23) フライングキャメルスピン(レベル4):3.75(GOE0.55) ステップシークエンス(レベル4):5.68(GOE1.78) コレオシークエンス:5.07(GOE2.07) フライング足換えコンビネーションスピン(レベル4):4.35(GOE0.85) <演技構成点 得点:71.41> スケートの技術:8.82 演技のつなぎ:8.64 演技表現:9.04 振り付け:9.07 音楽の解釈:9.07
<技術点 得点:71.38>(※GOE=出来栄え点) トリプルアクセル:9.94(GOE1.94) 3回転ルッツ+2回転トーループ:7.28(GOE0.08) レイバックスピン(レベル4):3.32(GOE0.62) 3回転ループ:4.83(GOE-0.07) 3回転ルッツ:4.21(GOE-1.69) ステップシークエンス(レベル4):4.57(GOE0.67) 2回転アクセル+3回転トーループ+2回転トーループ:10.22(GOE0.54) フライングシットスピン(レベル4):3.39(GOE0.39) 3回転フリップ+3回転トーループ:10.22(GOE-0.23) 3回転サルコー:4.91(GOE0.18) コレオシークエンス:4.29(GOE1.29) 足換えコンビネーションスピン(レベル4):4.20(GOE0.70) <演技構成点 得点:64.00> スケートの技術:8.14 演技のつなぎ:7.75 演技表現:8.00 振り付け:8.11 音楽の解釈:8.00
坂本 完成度の高さで圧倒 有言実行の優勝に
【各選手談話】
優勝 坂本花織「北京ではどれもパーフェクトに」
2位 樋口新葉「この大会のためだけに頑張ってきた」
3位 河辺愛菜「100点のトリプルアクセル」
4位 三原舞依「本当に悔しい」
5位 宮原知子「一瞬で終わってしまった」
【得点詳細】
優勝 坂本花織 総合得点:234.06
2位 樋口新葉 総合得点:221.78
3位 河辺愛菜 総合得点:209.65