300年余ねんよ前まえの富士山ふじさん噴火ふんかで埋うずもれた家屋かおく 発掘はっくつ調査ちょうさで初はつ確認かくにん 静岡しずおか

富士山ふじさんのふもと、静岡しずおか県けん小山おやま町まちの須走すばしり地区ちくには江戸えど時代じだいに須走すばしり村むらの集落しゅうらくがありましたが、1707年ねんに発生はっせいした宝永ほうえい噴火ふんかで火山灰かざんばいが3ｍめ-とるほど降り積ふりつもって埋没まいぼつしたとされています。

さらに現在げんざいはその上うえに街まちが作つくられているため、須走すばしり村むらの集落しゅうらくが埋うまった記録きろくは古こ文書ぶんしょなどに残のこされるだけで、実際じっさいに家屋かおくが見みつかったことはありませんでした。

火口かこう近ちかくにあった須走すばしり村むらの集落しゅうらくがどのような被害ひがいを受うけたのか明あきらかにしようと、去年きょねん6月つき、小山おやま町まちと、考古こうこ学がくや火山かざんの専門せんもん家かで作つくる研究けんきゅうチームが初はじめての発掘はっくつ調査ちょうさを行おこないました。

調査ちょうさは初はじめは重機じゅうきで行おこなわれ、20センチ余あまり掘ほると、宝永ほうえい噴火ふんかで噴出ふんしゅつした火山灰かざんばいや軽石かるいしなどの層そうが出でてきました。

さらに人ひとの手ても使つかって掘ほり進すすめると、2ｍめ-とるほどの深ふかさの場所ばしょに、

▽家屋かおくの「柱はしら」とみられる2本ほんの四角しかくい木材もくざいのほか、

▽家屋かおくの「壁かべ」や「わらぶき屋根やね」の一部いちぶが、次々つぎつぎと見みつかりました。

宝永ほうえい噴火ふんかで埋うずもれた須走すばしり村むらの家屋かおくが見みつかるのは今回こんかいが初はじめてです。

さらに、こうした木材もくざいは黒くろく焼やけ焦こげていたうえ、内部ないぶが赤あかくなった軽石かるいしも見みつかったことから、研究けんきゅうチームは、噴火ふんかで飛とんできた高温こうおんの軽石かるいしによって家屋かおくが燃もえた可能かのう性せいが高たかいとみています。

今後こんご、研究けんきゅうチームは、家屋かおくが噴火ふんかのどの段階だんかいで、どのように燃もえたのかなど、検証けんしょうを進すすめていくことにしています。

調査ちょうさに参加さんかした小山おやま町まち教育きょういく委員いいん会かいの金子かねこ節郎せつおさんは「燃もえた柱はしらが出でてきた時ときには震ふるえるほどの興奮こうふんがあり、これまで古こ文書ぶんしょしかなかった村むらの歴史れきしについて実際じっさいに裏付うらづけがとれたのは大おおきな成果せいかだ。発掘はっくつで分わかったことを今後こんごの防災ぼうさいに生いかしていくとともに、今後こんごもこまめな調査ちょうさを行おこなって遺跡いせきを大事だいじに保存ほぞんしていきたい」と話はなしていました。

研究けんきゅうチームのリーダー、東京とうきょう大学だいがくの杉山すぎやま浩平こうへい特とく任にん研究けんきゅう員いんは「富士山ふじさんの噴火ふんかで住宅じゅうたくが燃もえたことが実証じっしょうされ、噴火ふんか対策たいさくを考かんがえるうえで重要じゅうような手てがかりになる」と話はなしていました。

分厚ぶあつい火山灰かざんばいに覆おおわれた須走すばしり地区ちく

宝永ほうえい噴火ふんかは300年ねん余あまり前まえの江戸えど時代じだい中期ちゅうき、1707年ねん12月つき16日にちから富士山ふじさんの南東なんとうの中腹ちゅうふくで始はじまった大だい噴火ふんかで、翌年よくねんの1月つき1日にちまで続つづきました。

古こ文書ぶんしょなどで最もっとも被害ひがいが大おおきかったとされるのが宝永ほうえい火口かこうから10キロほど離はなれたふもとの須走すばしり村むらで、現在げんざいの静岡しずおか県けん小山おやま町まち須走すばしり地区ちくにあたります。

須走すばしり村むらは、富士ふじ山さんへの登山とざん道どうの入り口いりくちにある「冨士ふじ浅間あさま神社じんじゃ」とその門前もんぜんに広ひろがる村むらでした。

古こ文書ぶんしょの記録きろくでは、死者ししゃはいなかったものの高温こうおんの噴出ふんしゅつ物ぶつによる火災かさいで37棟むねの家屋かおくが焼失しょうしつし、3ｍめ-とる以上いじょう積つもった噴出ふんしゅつ物ぶつの重おもみやたび重かさなる地震じしんで、焼失しょうしつを免まぬかれた残のこりの39棟むねもすべて倒壊とうかいしたとされています。

村むら全体ぜんたいが分厚ぶあつい火山灰かざんばいに覆おおわれたことからほとんど除去じょきょされず、その上うえに新あらたな町まちを復興ふっこうしたため、埋没まいぼつした家屋かおくは見みつけられることなく言い伝いいつたえとなっていました。

富士山ふじさんでは過去かこの発生はっせい周期しゅうきなどから将来しょうらい的てきに噴火ふんかする可能かのう性せいは高たかいとみられ、最後さいごに起おきた宝永ほうえい噴火ふんかによる被害ひがいの様相ようそうを明あきらかにすることは今後こんごの防災ぼうさいを考かんがえるうえでも重要じゅうようで、今回こんかいの家屋かおくの発見はっけんは注目ちゅうもくされます。

小山おやま町まち須走すばしり地区ちくにある「冨士ふじ浅間あさま神社じんじゃ」の石橋いしばし良弘よしひろ神主かんぬしは「昔むかしから言い伝いいつたえで、地面じめんの下したには噴火ふんかで埋うまった町まちがあると聞きいていて、本当ほんとうなのかとずっと思おもっていましたが、今回こんかいの調査ちょうさで科学かがく的てきに実証じっしょうされて、うれしく思おもう。集落しゅうらくを埋うめた火山灰かざんばいの上うえに新あらたな町まちをつくることで富士山ふじさん噴火ふんかの脅威きょういに立ち向たちむかったことも昔むかしの人ひとたちの知恵ちえなので、教訓きょうくんとして大切たいせつにしたい」と話はなしていました。

レーダー探査たんさで地中ちちゅうに複雑ふくざつな凹凸おうとつ 家屋かおくか 発掘はっくつ開始かいし

発掘はっくつ調査ちょうさを行おこなったのは、静岡しずおか県けん小山おやま町まちと、考古こうこ学がくが専門せんもんの東京とうきょう大学だいがく 杉山すぎやま浩平こうへい特とく任にん研究けんきゅう員いん、火山かざん学がくが専門せんもんの東京とうきょう大学だいがく 藤井ふじい敏嗣としつぐ名誉めいよ教授きょうじゅらの研究けんきゅうチームです。

研究けんきゅうチームは3年ねん前まえから、古こ文書ぶんしょなどで埋没まいぼつした集落しゅうらくがあるとされる須走すばしり地区ちくで、電波でんぱを使つかって地中ちちゅうを探さぐるレーダー探査たんさを行おこなってきました。

その結果けっか、数すうか所かしょの空き地あきちの地中ちちゅうに複雑ふくざつな凹凸おうとつがあることを確認かくにんし、研究けんきゅうチームはここに家屋かおくのような構造こうぞう物ぶつがあると推定すいていしました。

そして、この空き地あきちで重機じゅうきや手て作業さぎょうによる発掘はっくつ調査ちょうさを開始かいし。縦たて12ｍめ-とる、幅はば3ｍめ-とるほどの穴あなを掘ほりました。

地表ちひょう面めんから20センチほど掘ほると、その下したには火山灰かざんばいやマグマが発泡はっぽうしながら冷ひえて固かたまったスコリアなど、噴火ふんかによる噴出ふんしゅつ物ぶつが厚あつさ2ｍめ-とるほどにわたって堆積たいせきしていました。

いちばん下かの層そうには、噴火ふんか直後ちょくごに降ふってきたとみられる白しろっぽい軽石かるいしが15センチほど堆積たいせきしていて、その中なかから黒くろく焼やけ焦こげた直径ちょっけい10センチほどの大おおきさの「柱はしら」とみられる木材もくざいが2本ほん、直立ちょくりつした状態じょうたいで出でてきました。

周辺しゅうへんからは、家屋かおくの「壁かべ」や「わらぶき屋根やね」の一部いちぶが燃もえたような破片はへんも見みつかりました。

さらにその南側みなみがわからは縦たて50センチ、横よこ1メートル10センチほどの大おおきさの畑はたけの畝うねが見みつかり、採取さいしゅした土どを調しらべたところ、大麦おおむぎが含ふくまれていたということです。

過去かこにも、静岡しずおか県けん御殿場ごてんば市しの長坂ながさか遺跡いせきでは、宝永ほうえい噴火ふんかで埋うまった家屋かおくの一部いちぶが発掘はっくつされたことはありましたが、集落しゅうらく全体ぜんたいが埋うまった須走すばしり地区ちくでこうした家屋かおくが確認かくにんされるのは初はじめてです。

東京とうきょう大学だいがくの杉山すぎやま特とく任にん研究けんきゅう員いんは「これまでは須走すばしりが噴火ふんかで埋うまったことは言い伝いいつたえでしかなかったが、初はじめて、存在そんざいを証明しょうめいできたのは考古こうこ学がく上じょうも大おおきな成果せいかだ」と話はなしていました。