信託しんたく銀行ぎんこう2行こう 株主かぶぬし総会そうかい議決ぎけつ権けん集計しゅうけい 計けい1300社しゃ余よで誤あやまり

三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうとみずほ信託しんたく銀行ぎんこうは、企業きぎょうから引き受ひきうけていた株主かぶぬし総会そうかいの議決ぎけつ権けん行使こうしの書面しょめんの扱あつかいを巡めぐり、合あわせて1300社しゃ余あまりの集計しゅうけい業務ぎょうむで誤あやまりがあったと発表はっぴょうしました。期限きげん内ないに届とどいていた書面しょめんを集計しゅうけいの対象たいしょうから外はずしていたということで、一部いちぶの株主かぶぬしの意見いけんが採決さいけつに反映はんえいされていませんでした。三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうの発表はっぴょうによりますと、株主かぶぬしが議決ぎけつ権けんを行使こうしするために事前じぜんに郵送ゆうそうする書面しょめんについて、株主かぶぬし総会そうかいの事務じむを担になうグループ会社かいしゃの「日本にっぽん株主かぶぬしデータサービス」が、実際じっさいは総会そうかいの前日ぜんじつに書面しょめんが届とどいていたのに締め切しめきりが過すぎた総会そうかい当日とうじつに届とどいたものとして扱あつかい集計しゅうけいの対象たいしょうから外はずしてしまう不適切ふてきせつな処理しょりを行おこなっていたということです。

こうした処理しょりは、「日本にっぽん株主かぶぬしデータサービス」が事務じむ作業さぎょうの時間じかんを確保かくほするため行おこなわれていて、株主かぶぬしなどには知しらされないまま少すくなくともおよそ20年ねんにわたって続つづけられていたということです。

この結果けっか、ことしは集計しゅうけい業務ぎょうむの委託いたくを受うけた975社しゃで、一部いちぶの株主かぶぬしの意見いけんが採決さいけつに反映はんえいされていませんでした。

ただ、再さい集計しゅうけいしたところ株主かぶぬし総会そうかいの議案ぎあんの結果けっかに影響えいきょうを及およぼすケースはなかったとしています。

記者きしゃ会見かいけんした三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうの海原うなばら淳あつし取締役とりしまりやく専務せんむは、「集計しゅうけい結果けっかに修正しゅうせいが生しょうじることとなり、深ふかくおわび申し上もうしあげます」と陳謝ちんしゃしたうえで、今後こんごこうした処理しょりは取とりやめるとしました。

今回こんかいの問題もんだいは、ことし7月つきの「東芝とうしば」の株主かぶぬし総会そうかいで、海外かいがいの投資とうしファンドが、郵送ゆうそうした書面しょめんが採決さいけつに反映はんえいされていないと主張しゅちょうしたのをきっかけに明あきらかになりました。

同様どうように「日本にっぽん株主かぶぬしデータサービス」に事務じむを委託いたくしていたみずほ信託しんたく銀行ぎんこうも、24日にち不適切ふてきせつな扱あつかいが371社しゃで確認かくにんされたと発表はっぴょうしました。

2つの信託しんたく銀行ぎんこうで合あわせて1346社しゃの集計しゅうけい業務ぎょうむで誤あやまりがあったことになり、株主かぶぬしの権利けんりが損そこなわれる事態じたいが広ひろがっています。

東芝とうしば 「監査かんさ委いの検証けんしょう結果けっか踏ふまえ適切てきせつな措置そち講こうじる」

集計しゅうけい作業さぎょうを委託いたくしていた三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうが不適切ふてきせつな対応たいおうがあったと発表はっぴょうしたことについて、東芝とうしばは「再さい集計しゅうけいの結果けっかを待まつとともに、監査かんさ委員いいん会かいによる三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうの調査ちょうさの方法ほうほうや、その結果けっかの妥当だとう性せいについての検証けんしょう結果けっかを踏ふまえ、適切てきせつな措置そちを講こうじていく」とコメントしています。

総会そうかいの事務じむを担になう「日本にっぽん株主かぶぬしデータサービス」とは

「日本にっぽん株主かぶぬしデータサービス」は、株主かぶぬし総会そうかいに向むけて事前じぜんに株主かぶぬしから郵送ゆうそうされる書面しょめんの集計しゅうけいなどを主おもな業務ぎょうむとしています。

2008年ねん、「三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこう」と「みずほ信託しんたく銀行ぎんこう」が50％ずつ出資しゅっしして設立せつりつしました。会社かいしゃによりますと、業務ぎょうむを委託いたくしている企業きぎょうはことし3月末げつまつ時点じてんで上場じょうじょう企業きぎょう全体ぜんたいのほぼ6割わりにあたるおよそ2200社しゃに上のぼるということです。

このうち、ことしの株主かぶぬし総会そうかいが集中しゅうちゅうする期間きかんに総会そうかいを行おこなった1346社しゃで、不適切ふてきせつな処理しょりが明あきらかになりました。

問題もんだいの背景はいけいに特別とくべつな慣例かんれい「先さき付づけ処理しょり」

三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうによりますと、今回こんかいの問題もんだいでは議決ぎけつ権けん行使こうし書しょの取り扱とりあつかいで「先さき付づけ処理しょり」と呼よばれる特別とくべつな慣例かんれいが長ながく続つづいていたことが背景はいけいにあるとしています。

総会そうかいの事務じむを担になう「日本にっぽん株主かぶぬしデータサービス」は、株主かぶぬし総会そうかいが集中しゅうちゅうする時期じきなどに、株主かぶぬしから郵送ゆうそうされる議決ぎけつ権けん行使こうしの書面しょめんを、本来ほんらいよりも1日にち早はやく受け取うけとれるようにしていました。

株主かぶぬし総会そうかいの前まえに集中しゅうちゅうする議決ぎけつ権けん行使こうしの書面しょめんの集計しゅうけいなど事務じむ作業さぎょうに必要ひつような時間じかんを確保かくほするためで、「先さき付づけ処理しょり」と呼よばれるこの慣例かんれいは、少すくなくともおよそ20年ねんにわたって続つづけられてきたということです。

この「先さき付づけ処理しょり」では、書面しょめんの配達はいたつ日びを示しめす「交付こうふ証しょう」には本来ほんらい、到着とうちゃくする予定よていだった日付ひづけ、つまり実際じっさいの到着とうちゃくより1日にち遅おそい日付ひづけが記しるされます。日本にっぽん株主かぶぬしデータサービスは、締め切しめきり前まえの総会そうかい前日ぜんじつに届とどいた書面しょめんでも、交付こうふ証しょうの日付ひづけに基もとづいて締め切しめきりが過すぎた総会そうかい当日とうじつに届とどいたことにしていました。

民法みんぽうでは、郵送ゆうそうなどでの意思いし表示ひょうじは相手あいてに到着とうちゃくした時点じてんで効力こうりょくが生しょうじると定さだめています。しかし「先さき付づけ処理しょり」の慣例かんれいに基もとづいて、書面しょめんは期日きじつまでに届とどかなかったと見みなされ、株主かぶぬし総会そうかいの採決さいけつの対象たいしょう外がいとされていたのです。一連いちれんの処理しょりは、株主かぶぬしや委託いたく元もとの企業きぎょうにも周知しゅうちされずに行おこなわれていました。

三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうは、「先さき付づけ処理しょり」と呼よばれる方法ほうほうを長年ながねんにわたって続つづけてきた理由りゆうについて、「議決ぎけつ権けん行使こうしの処理しょりをできるだけ的確てきかくにやるために、“現場げんばの知恵ちえ”みたいな形かたちで続つづいてきたと考かんがえている。今回こんかいのように集計しゅうけい方法ほうほうに問題もんだいがあるというのは、認識にんしきできなかったというのが正直しょうじきなところだ」と説明せつめいしています。

ただ、こうした不適切ふてきせつな書面しょめんの処理しょりは株主かぶぬしの権利けんりを損そこなうことになるとの指摘してきも出でています。

三井みつい住友すみとも信託しんたく銀ぎん“問題もんだいあると認識にんしき持もてず”

株主かぶぬし総会そうかいでの議案ぎあんの採決さいけつについて、会社かいしゃ法ほうでは一連いちれんの事務じむ処理しょりを外部がいぶに委託いたくすることができると定さだめています。

今回こんかいのケースでは、株主かぶぬし総会そうかいを開催かいさいする企業きぎょうから、三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうなどが事務じむ処理しょりの委託いたくを受うけ、信託しんたく銀行ぎんこうのグループ会社かいしゃの「日本にっぽん株主かぶぬしデータサービス」に再さい委託いたくしていました。

株主かぶぬし総会そうかいに向むけて、日本にっぽん株主かぶぬしデータサービスは株主かぶぬしから事前じぜんに郵送ゆうそうされた議決ぎけつ権けんを行使こうしするための書面しょめんを集計しゅうけいし、委託いたく元もとの企業きぎょうに報告ほうこくすることになっています。

不適切ふてきせつな処理しょりを続つづけていたことについて、三井みつい住友すみとも信託しんたく銀行ぎんこうは、行内こうないの一部いちぶで把握はあくしていたものの、長年ながねんの慣例かんれいとしてとらえ、問題もんだいがあるという認識にんしきを持もてなかったとしています。

専門せんもん家か「マーケット全体ぜんたいの信用しんようや信頼しんらいを損そこないかねない」

この問題もんだいについて企業きぎょう統治とうちに詳くわしい日比谷ひびやパーク法律ほうりつ事務所じむしょの久保くぼ利とし英明えいめい弁護士べんごしは、「議決ぎけつ権けんを行使こうしし、書面しょめんが届とどいているのにカウントされなかったことは投票とうひょうする株主かぶぬしの権利けんりはどこに行いったのか、と、株主かぶぬしにとっては心外しんがいな事態じたいだ。全まったく公表こうひょうも発表はっぴょうもしないまま20年間ねんかん堂々どうどうと行おこなわれてきたことも問題もんだいだ」と指摘してきしています。

そのうえで、「透明とうめい性せいや正確せいかく性せいにも欠かける今回こんかいの事態じたいは、日本にっぽんのマーケット全体ぜんたいの信用しんようや信頼しんらいを損そこなうことにもなりかねず、信託しんたく銀行ぎんこうは説明せつめいを尽つくしたうえで、期限きげん内ないに届とどいた書面しょめんはすべてそのとおり集計しゅうけいするという正直しょうじきな姿勢しせいをとるようのぞみたい」と話はなしています。