ノーベル文学ぶんがく賞しょうにアメリカの詩人しじん ルイーズ・グリュック氏し

スウェーデンのストックホルムにある選考せんこう委員いいん会かいは日本にっぽん時間じかんの午後ごご8時じすぎ、ことしのノーベル文学ぶんがく賞しょうの受賞じゅしょう者しゃにアメリカの詩人しじん、ルイーズ・グリュック氏しを選えらんだと発表はっぴょうしました。

“自然しぜんだが衝撃しょうげき的てき”

ノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいはグリュック氏しについて「厳粛げんしゅくな美びを伴ともなう、まぎれもなく詩的してきな声こえで、個この存在そんざいを普遍ふへん的てきなものにした」と評価ひょうかしています。

そのうえで「詩しの音色ねいろは一見いっけん、自然しぜんだが衝撃しょうげき的てきだ。読者どくしゃは痛々いたいたしい家族かぞく関係かんけいの、残酷ざんこくなほど直接ちょくせつ的てきなイメージに遭遇そうぐうする。それは率直そっちょくで妥協だきょうがなく、詩的してきな装飾そうしょくを施ほどこした痕跡こんせきはない。彼女かのじょは人生じんせいの過あやまちや変化へんかし続つづける状況じょうきょうだけにとらわれない、根本こんぽん的てきな変化へんかと再生さいせいの詩人しじんでもある。その飛躍ひやくは、深ふかい喪失そうしつの感覚かんかくから生うまれている」としています。

1993年ねん ピュリツァー賞ぴゅりつぁ-しょうを受賞じゅしょう

さまざまな分野ぶんやで功績こうせきをあげた人ひとたちを紹介しょうかいするアメリカの団体だんたいのホームページによりますと、グリュック氏しは1943年ねんにニューヨークで生うまれ、幼おさない頃ころからことばや物語ものがたりに興味きょうみを持もち、10代だいで雑誌ざっしに作品さくひんを投稿とうこうし始はじめたということです。

コロンビア大学ころんびあだいがくなどで学まなんだあと1968年ねんに初はじめての詩集ししゅうを発表はっぴょう。この中なかで、グリュック氏しは怒いかりや疎外そがい感かんを感かんじている人々ひとびとの声こえを1人称にんしょうで語かたり、その独創どくそう性せいと実力じつりょくが評価ひょうかされてアメリカの詩人しじん協会きょうかいの賞しょうを受賞じゅしょうしました。

創作そうさく活動かつどうのかたわら、1983年ねんからは東部とうぶマサチューセッツ州しゅうの大学だいがくで20年間ねんかんにわたって教きょうべんをとりました。

1990年代ねんだいはグリュック氏しにとって最もっとも評価ひょうかされ意欲いよく的てきに活動かつどうした時期じきと言いわれ、1992年ねんには愛読あいどくされる詩集ししゅうの一ひとつ、「ワイルド・アイリス」を発表はっぴょうしました。

この詩集ししゅうに収おさめられている54の詩しは、わずか10週間しゅうかんで書き上かきあげたと言いわれていて、1993年ねん、ピュリツァー賞ぴゅりつぁ-しょうなどを受賞じゅしょうしました。

その後そのご、50年間ねんかんにわたる創作そうさく活動かつどうの集大成しゅうたいせいとしての詩集ししゅうも出だし、現在げんざいは、イェール大学だいがくで文章ぶんしょう表現ひょうげんを教おしえています。

文学ぶんがくファンは…

東京とうきょう 新宿しんじゅく区くの紀伊國屋きのくにや書店しょてん新宿しんじゅく本店ほんてんでは、文学ぶんがくファンなどが集あつまって店内てんないのモニターでノーベル文学ぶんがく賞しょうの発表はっぴょうの瞬間しゅんかんを見守みまもりました。

午後ごご8時じ、アメリカの詩人しじん、ルイーズ・グリュック氏しの名前なまえが発表はっぴょうされると、予想よそうが外はずれたのか、驚おどろいた表情ひょうじょうを浮うかべる人ひとや、早速さっそくスマートフォンでグリュック氏しのことを調しらべ始はじめる人ひともいました。

書店しょてんの店員てんいんは、特設とくせつコーナーを設置せっちするためすぐに関連かんれんの書籍しょせきを探さがしましたが、日本にっぽん語ごに翻訳ほんやくされた作品さくひんは出版しゅっぱんされておらず、英語えいごの原書げんしょも在庫ざいこがなかったということです。

読書どくしょ会かいのメンバーとともに発表はっぴょうを見守みまもった40代だいの男性だんせいは、「候補こうほとして名前なまえがあがっていた作家さっかの本ほんをメンバーで分担ぶんたんして読よんできましたが、ルイーズさんは日本語にほんご訳やくがなかったので読よめていませんでした。今後こんご、出版しゅっぱんされるのが楽たのしみです」と話はなしていました。

専門せんもん家か「アメリカらしい詩しを書かき続つづけた人ひと」

アメリカ現代げんだい詩しが専門せんもんの上智じょうち大学だいがくの飯野いいの友幸ともゆき教授きょうじゅは「現代げんだい社会しゃかいをきるといった作風さくふうではなく、身近みぢかな物ものを題材だいざいに、普遍ふへん的てきなものにつなげる地道じみちな手法しゅほうを続つづけてきた詩人しじんです。アメリカらしい詩しを書かき続つづけてきた人ひとでそれが評価ひょうかされたのはうれしいです。コロナ禍かで身近みぢかな世界せかい、足元あしもとを見みつめることが大事だいじだと訴うったえかけることは意味いみがあると思おもいます」と話はなしていました。