今回の選挙も前回と同じ方式で行われましたが格差はわずかに拡大していました。
この「違憲」と言い切らずに「状態」がついた判断は、どういうことを意味しているのでしょうか。 1票の格差をめぐる裁判は、選挙区によって有権者が投ずる1票の価値に大きな格差があることが「投票価値の平等を保障した憲法に違反している」として選挙を無効にすることを求める訴えです。 こうした裁判では多くの場合、裁判所は訴えを認めるかどうか審理にあたり、2段階で検討を進めています。 まず検討するのは「選挙当日、選挙区の間で生じた格差が著しく不平等だったといえるかどうか」です。 この第1段階で、数値上の評価として「著しく不平等」だとする認定が「違憲状態」と表現されるものです。 しかし、この段階ではまだ「憲法違反」と言い切らないのです。 裁判所は、さらに第2段階の検討を進めます。 憲法は選挙区や投票方法を法律で決めると定めていて、国会はどのような制度を採用するか大きな裁量をもっています。 しかし、実際に選挙制度を変えようとすると政党や議員によって立場や考えが異なるため意見を調整するのにどうしても時間がかかります。 このため、第2段階の検討では「違憲状態」と評価した選挙が実施されるまでに国会がどれくらい真剣に格差是正に向けて取り組んだのかや、また、どのくらいの期間、選挙制度を検討する時間的な余裕があったのかを見極めるのです。 その結果「十分に時間があったにもかかわらず、漫然と放置した」と評価されると初めて「憲法違反」「違憲」という判決になります。 つまり「違憲状態」の判決とは「1票の格差が数値の上では、著しく不平等なんだけど、国会が是正するための取り組みを怠っていたともいえないので、トータルでみて憲法違反とまではいわない」という裁判所の評価です。 ただ「違憲状態」にとどまったとしても国会は安心することはできず、格差の是正に向けた取り組みを進めなければ次の選挙では「憲法違反」と判断される可能性を裁判所に指摘されたともいえます。
「違憲状態」とは
ことし7月の参議院選挙では、選挙区によって議員1人当たりの有権者の数に最大で3.03倍の格差があり、2つの弁護士グループが「投票価値の平等に反し、憲法に違反する」などとして選挙の無効を求める訴えを全国の高等裁判所や高裁の支部に合わせて16件、起こしています。
このうち初めての判決が関西2府4県の選挙を対象にした裁判で言い渡され、大阪高等裁判所の牧賢二 裁判長は、1票の格差が憲法の求める投票価値の平等に反した「違憲状態」だったとする判断を示しました。
選挙の無効を求める訴えは認めませんでした。










