日本にっぽんの景気けいき 雇用こように変調へんちょうか “製造せいぞう業ぎょうの求人きゅうじんも減少げんしょう”

製造せいぞう業ぎょうの新規しんきの求人きゅうじん数すうは、ことし２月にがつから前まえの年としの水準すいじゅんを下回したまわるようになっています。特とくに、夏なつ以降いこうは８月はちがつが15.9％、９月くがつが11％、10月つきが15.6％、それぞれ少すくなくなりました。

このうち、自動車じどうしゃメーカーでは工場こうじょうで働はたらく期間きかん従業じゅうぎょう員いんの募集ぼしゅうを見合みあわせる動うごきが相次あいついでいます。

マツダは海外かいがいで自動車じどうしゃの販売はんばいが減へっていることから、広島ひろしま県けんの本社ほんしゃ工場こうじょうと山口やまぐち県けんの防府ほうふ工場こうじょうで期間きかん従業じゅうぎょう員いんの募集ぼしゅうを先月せんげつから停止ていししています。ホンダも生産せいさん計画けいかくの見直みなおしにあわせて、埼玉さいたま製作せいさく所しょの寄居よりい工場こうじょうで期間きかん従業じゅうぎょう員いんの募集ぼしゅうを停止ていししているほか、日産にっさん自動車じどうしゃも人員じんいん削減さくげんを進すすめています。

自動車じどうしゃメーカー以外いがいでも、大だい規模きぼな人員じんいん削減さくげんに踏み切ふみきる企業きぎょうが出でています。

アルミ加工かこう最大さいだい手しゅの「ＵＡＣＪ」は、中国ちゅうごく経済けいざいの減速げんそくの影響えいきょうで業績ぎょうせきが悪化あっかし、2022年度ねんどまでに2000人にん規模きぼで人員じんいんを削減さくげんするほか、旧きゅう三井みつい造船ぞうせんの三井みついＥい-＆Ｓえすホールディングスも1000人にん規模きぼの人員じんいん削減さくげんと配置はいち転換てんかんを行おこなうと発表はっぴょうしました。

流通りゅうつう大手おおての「セブン＆アイ・ホールディングス」も、傘下さんかのデパートの店舗てんぽの閉鎖へいさなどによって、３さん年ねん後ごまでにおよそ3000人にんを削減さくげんするとしています。

また、早期そうき退職たいしょくを募つのる企業きぎょうも増ふえています。民間みんかんの調査ちょうさ会社かいしゃ「東京商工リサーチとうきょうしょうこうりさ-ち」のまとめでは、ことしに入はいって先月せんげつまでに上場じょうじょう企業きぎょうが募集ぼしゅうした早期そうき退職たいしょくの数かずは１いち万まん人にんを超こえ、ここ５ご年間ねんかんで最もっとも多おおくなっています。

政府せいふも先月せんげつの月例げつれい経済けいざい報告ほうこくで「雇用こよう情勢じょうせい」の判断はんだんを５ご年ねんぶりに下方かほう修正しゅうせいしました。

部品ぶひん工場こうじょうで雇用こよう調整ちょうせいの兆きざし

大手おおて自動車じどうしゃメーカー向むけの部品ぶひんを製造せいぞうしている企業きぎょうも、「雇用こよう」が気きになり始はじめています。

茨城いばらき県けんなどにある工場こうじょうでブレーキ関連かんれんの部品ぶひんを生産せいさんしている「大川おおかわ精きよし螺にし工業こうぎょう」では、これまで取り引とりひきしている自動車じどうしゃメーカーからの増産ぞうさんの要請ようせいに応こたえるため、派遣はけん社員しゃいんを増ふやして生産せいさんを続つづけてきました。

しかし、大手おおてメーカーの海外かいがい販売はんばいが減少げんしょうし、ことし８月はちがつから先月せんげつにかけて部品ぶひんの受注じゅちゅうが去年きょねんの同おなじ時期じきよりおよそ10％減へったということです。受注じゅちゅうの減少げんしょうは少すくなくとも来年らいねんの２月にがつごろまで続つづく見通みとおしです。

会社かいしゃでは人員じんいん削減さくげんはしていませんが、派遣はけん会社かいしゃに新あらたな求人きゅうじんを出だすのを見合みあわせています。この先さきも自動車じどうしゃの販売はんばいが上向うわむくかどうか見通みとおせないため、当面とうめん、派遣はけん社員しゃいんを増ふやすのは難むずかしいと考かんがえています。

大川おおかわ知樹ともき取締役とりしまりやくは「今いまはなるべく残業ざんぎょうをしないように調整ちょうせいしているが、今いま以上いじょうに受注じゅちゅうが落ち込おちこむことになれば、休日きゅうじつを増ふやすなどさらなる対応たいおうが必要ひつようになる。非常ひじょうに厳きびしい状況じょうきょうです」と話はなしていました。

人材じんざい派遣はけん会社かいしゃも変調へんちょう

工場こうじょうなどに人材じんざいを派遣はけんする側がわも対応たいおうを迫せまられています。

東京とうきょうにある人材じんざい派遣はけん会社かいしゃ「アウトソーシング」は、自動車じどうしゃや機械きかいメーカーなどさまざまな業種ぎょうしゅに２に万まん人にん以上いじょうを派遣はけんしている業界ぎょうかい大手おおてです。

しかし、会社かいしゃによりますと、製造せいぞう業ぎょうではことしの夏なつから期間きかん従業じゅうぎょう員いんの新規しんきの募集ぼしゅうを見合みあわせるメーカーが増ふえ始はじめているということです。会社かいしゃがことし10月つきに「自動車じどうしゃ・重機じゅうき・バイク」の工場こうじょうに派遣はけんした人ひとの数かずは、前まえの年としより40％以上いじょう少すくなくなりました。

中本なかもと敦あつし専務せんむは「通常つうじょうであれば夏なつぐらいから生産せいさんも増ふえ始はじめ、労働ろうどう者しゃの需要じゅようも出でてくるが、ことしは引き合ひきあいがなかった。待まってもらう場合ばあいも多おおい」と話はなしていました。

この会社かいしゃで工業こうぎょう製品せいひんのデザイン技術ぎじゅつを学まなんでいる小野おの達也たつやさん（24）は、ことし６月ろくがつに勤つとめていた携帯けいたい電話でんわの販売はんばい会社かいしゃを退職たいしょくし、当初とうしょは自動車じどうしゃ工場こうじょうでものづくりに携たずさわりたいと考かんがえていました。ただ、期間きかん従業じゅうぎょう員いんの募集ぼしゅう停止ていしの動うごきをみているうちに、工場こうじょうで長ながく働はたらくことができるか不安ふあんを感かんじるようになり、技術ぎじゅつを身みにつけておこうと工業こうぎょう製品せいひんのデザインや設計せっけいの技術ぎじゅつを一いちから学まなぶことにしました。

小野おのさんは「ソフトウエアでちょっと凝こった形かたちのものをつくりあげる技術ぎじゅつはまだまだ勉強べんきょうが足たりないと思おもいますが、どの職場しょくばでも活躍かつやくできるよう頑張がんばります」と話はなしていました。

会社かいしゃも、この先さき、期間きかん従業じゅうぎょう員いんの募集ぼしゅうを見合みあわせる動うごきが相次あいついだとしても、人手ひとでを必要ひつようとしている分野ぶんやに即そく戦力せんりょくとなる人材じんざいを派遣はけんできるよう研修けんしゅうの内容ないようをこれまでよりも充実じゅうじつさせることにしています。

中本なかもと専務せんむは「変動へんどうに対応たいおうするというのが企業きぎょうにとっては人材じんざいビジネスの１ひとつの使い方つかいかたという形かたちになる。やる気やるきのある人ひとたちを教育きょういくし、企業きぎょうの求もとめるスキルに持もっていくことで企業きぎょうのニーズに応こたえたい」と話はなしていました。

専門せんもん家か「日本にっぽん経済けいざいは今こん踊り場おどりばの状況じょうきょう」

みずほ総合そうごう研究所けんきゅうじょの嶋中しまなか由理子ゆりこエコノミストは「日本にっぽん経済けいざいは今こん踊り場おどりばの状況じょうきょうだとみている。特とくに気きになっているのが『雇用こよう』の状況じょうきょうで、製造せいぞう業ぎょうの新規しんきの求人きゅうじんは減少げんしょう基調きちょうとなり、世界せかい経済けいざいが減速げんそくする中なかで製造せいぞう業ぎょうを中心ちゅうしんに先行さきゆきに対にたいする慎重しんちょうさが増ましている。雇用こよう環境かんきょうが悪わるくなって消費しょうひが弱よわまると、内需ないじゅが外需がいじゅの減速げんそくを支ささえるこれまでの構図こうずが崩くずれる可能かのう性せいがあり、注意ちゅういが必要ひつようだ」と指摘してきしています。

また、先行さきゆきについては「これまで緩ゆるやかに回復かいふくしてきた『雇用こよう』が今後こんごは横よこばいになっていくとみている。景気けいき全体ぜんたいの回復かいふく基調きちょうも弱よわいものにとどまるのではないか」と話はなしています。