事実関係に争いはありませんが、被告側は当時、精神障害の影響で責任能力はなかったとして無罪を主張する見通しです。
平成28年7月、相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者が次々と刃物で刺され19人が殺害されたほか、職員を含む26人がけがをするなどした事件では、施設の元職員、植松聖被告(29)が殺人などの罪に問われています。
事件からまもなく3年半となりますが、8日から横浜地方裁判所で裁判員裁判が始まります。
事実関係に争いはありませんが、被告が当時、刑事責任を問える精神状態だったかが争点で、検察が捜査段階での精神鑑定の結果を踏まえて責任能力はあったと主張するのに対し、被告側は大麻を使用したことによる精神障害の影響で、刑事責任を問えない状態だったとして無罪を主張する見通しです。
被告は12月、接見したNHKの記者に対し「死刑になりたいわけではなく、罪は軽いほどいい」と述べたうえで、障害がある人たちに対しては「社会にいないほうがよいと伝えることが大切だと思っている」などと、これまでと変わらない差別的な主張を繰り返しました。
被告は逮捕されてから一度も髪を切っていないということで、背中の中ほどまで伸びています。また被告は初公判前日の7日も接見に応じ、「法廷で遺族や亡くなった方、ご迷惑をかけた皆様に対しておわびしたい。ただただしっかりと謝ろうと思う」と述べました。
この裁判で被害者は1人を除いて「甲A」などと呼ばれ、名前など個人が特定される情報は伏せて匿名で審理が行われる見通しです。
また傍聴席に座る被害者や遺族などがほかの傍聴者から見えないように、裁判所が傍聴席の一部に遮蔽板を設置する異例の対応を取ることを決めています。判決は3月16日に言い渡される予定です。
事実関係認めても無罪主張のケースとは
裁判では、被告本人が事実関係について認めていても、被告の弁護士が無罪を主張するケースがあります。
刑法では犯罪行為があっても、被告に精神障害などがあって善悪の判断もできない場合や、自分の行動を抑えられない場合は、本人に責任を負わせることはできないと定められているからです。
今回の裁判でも、被告本人と弁護士は、いずれも殺害したことなど事実関係について争いはありませんが、弁護士は、当時、精神障害の影響があり、被告の刑事責任は問えないとして無罪を主張する見通しです。
神奈川県知事「しっかり裁きを」
相模原市の知的障害者施設で入所者19人が殺害されるなどした事件で、殺人などの罪に問われている29歳の元職員の裁判員裁判が、8日から始まるのを前に、神奈川県の黒岩知事は「被告のでたらめな主張に同調する人が出ないよう、しっかり裁いてほしい」と述べました。
平成28年7月、相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、19人の入所者が殺害されるなどした事件では、施設の元職員、植松聖被告(29)が殺人などの罪に問われています。
8日から横浜地方裁判所で、裁判員裁判が始まるのを前に、神奈川県の黒岩知事は7日の会見で「あの忌まわしい事件は生涯忘れることはできない。『コミュニケーションを取れない人間は生きている資格がない』という勝手で、でたらめな主張で19人もの貴重な命を奪うことは許すわけにはいかない」と述べました。
そして「そうした意見に同調する人が出てくることは問題なので、その流れを断ち切るためにも裁判でしっかり裁いていただきたい」と話しました。