店頭でわずか15分で完売も
東京 渋谷区のドラッグストア「三千里薬品神南店」では、1週間ほど前からマスクの入荷が難しい状態が続いていて、50枚入りの箱入りマスクは1家族1個まで、それ以外のばら売りのマスクは1人当たり3個までに購入を制限しています。
5日は午前10時半に箱入りマスク50個を2日ぶりに店頭に並べましたが、マスクを求める客が次々に集まって20人ほどの長い列ができ、わずか15分で完売になりました。
箱入りのマスクを購入した都内の男性は「感染症にかかっていて、外出する際にはマスクが手放せません。自宅にあるマスクも少なくなってきたので、3日前から売っている店がないか探し回っていましたが、なかなか見つかりませんでした。ようやく購入できて、一安心です」と話していました。
三千里薬品神南店の比嘉靖司店長は「ようやくマスクを入荷してもすぐに売り切れる状態が1週間ほど前から続いている。ネット上でマスクが高値で転売されていることは知っているので、購入制限をするなどして本当に必要としている人に届くようにしたい」と話しています。
ネット上では「3箱3万円」高額転売も
インターネット上の通販サイトやフリマアプリでは品薄の状態が続いているマスクが定価の10倍以上の高値で転売されるケースが相次いでいます。
インターネット通販大手の「アマゾン」では、通常の価格で販売されているマスクのほとんどが「在庫切れ」になっている一方、多くの商品が定価を大きく上回る数千円から数万円で出品されています。
中には定価およそ650円の箱入りマスクが3個で3万2800円と定価の15倍以上の高値で転売されているケースもあります。
フリマアプリ大手の「メルカリ」でも、数千円から数万円で出品された商品が次々に購入されていて、定価の10倍の高値で売買が成立しているケースもありました。
こうした状況を受けて「メルカリ」は4日、ホームページ上で、「マスクは禁止出品物には該当しませんが、社会通念上適切な範囲での出品・購入にご協力をお願いいたします」というコメントを発表しました。
メルカリは、取り引きの状況によっては出品者から入手経路を確認したり、商品の削除や利用制限などを行ったりする場合もあるとしています。
また「アマゾン」は「購入しやすい価格で出品していただけるよう規約を設けてサイトをモニタリングしており規約に違反した場合には出品取り下げなどの対応を取っている」としています。
全国マスク工業会「本来必要な人に届かず 節度ある購入を」
国内のマスクの製造会社などで作る団体はマスクの在庫がほぼ底をつき需要に供給が追いついていない状況だとして、転売目的の購入や過剰な買いだめを控えるなど節度を持って購入するよう呼びかけています。
国内のマスクの製造会社や販売会社115社が加盟する「全国マスク工業会」によりますと、年明けの時点では業界全体で年間のマスクの販売枚数のおよそ3か月分にあたる在庫があったということですが、現在はほぼ底をついた状態だということです。
このため工業会は加盟各社に増産を呼びかけていて、国内に製造拠点のある10社余りは生産ラインを24時間体制で動かすなどして増産に取り組んでいるということですが、需要に供給が追いついていない状況が続いているということです。
工業会は「マスクが本来必要としている人たちに届いておらず、ネット上で高値で転売されている状態になっている。現時点で小売店に十分なマスクの量を供給できる時期の見通しは立っておらず、転売目的での購入や過剰な買いだめを控えるなど、節度ある購入をお願いしたい」と呼びかけています。
専門家「“転売社会の影” 出品禁止などちゅうちょなく対策を」
ネット上の転売問題に詳しい福井健策弁護士は「転売が社会問題になったコンサートやスポーツなどのチケットについては去年、高値での転売が法律で禁止されたが、マスクなど多くの商品は規制の対象になっておらず、経済活動の自由の観点からも法律で規制するのは難しいのではないか」としたうえで、「誰もが簡単にネット上に出品でき、買いたい人と結び付くことができるのは本来すばらしいことだが、今回のマスクの問題では買い占めや高額転売を招いて必要な人に商品が行き届かなくなっており、“転売社会”の影の部分が出てしまった」と指摘しています。
一方で福井弁護士は買い占めや転売によって社会に混乱が広がるおそれがある場合には対策が必要だと指摘し、「ドラッグストアなどの小売店側は店頭に『販売個数の限定』や『転売目的お断り』の表示をし、実際にルールを破る客に対しては購入を断ることが必要だ。サイト側も小売店と連携し不当に高値で転売しようとしている商品は出品禁止にするなどちゅうちょなく対策を行う必要がある」としています。