アスリートの盗とう撮と被害ひがい 法ほう整備せいびなど対策たいさく強化きょうか求もとめる声こえ高たかまる

また

▽日本にっぽん陸上りくじょう競技きょうぎ連盟れんめいが初はじめて行いった調査ちょうさでは警察けいさつに通報つうほうや相談そうだんをした関連かんれん団体だんたいが半数はんすうを超こえたほか

▽5月つきにはテレビ番組ばんぐみの画像がぞうをアダルトサイトに無断むだん転載てんさいしたとして関連かんれんする事件じけんとして初はじめて立件りっけんされました。

こうした中なか、今月こんげつ23日にち、スポーツに関かかわる法律ほうりつを研究けんきゅうする団体だんたいがシンポジウムを開ひらき実態じったいや対策たいさくを議論ぎろんしました。

元もと競泳きょうえいの日本にっぽん代表だいひょうで、オリンピックにも2度ど出場しゅつじょうした伊藤いとう華はな英すぐるさんは「胸むねのあたりや水みずから上あがる瞬間しゅんかんをねらわれて雑誌ざっしなどに載のせられた。SNSで卑ひわいなメールが送おくられる被害ひがいもありブロックしても別べつのアカウントから送おくられるなど怖こわい思おもいをした」と経験けいけんを語かたりました。

弁護士べんごしからは

▽盗と撮とを取り締とりしまる法律ほうりつがなく都道とどう府県ふけんの条例じょうれいも罰則ばっそくが軽かるいうえ

▽民事みんじでの慰謝いしゃ料りょうの請求せいきゅうも手続てつづきが煩雑はんざつだとして

諸しょ外国がいこくに比くらべ法ほう整備せいびが遅おくれている日本にっぽんの現状げんじょうが指摘してきされました。

また、指導しどう者しゃの問題もんだいも議論ぎろんされ伊藤いとうさんが「親おやには言いえず監督かんとくやコーチに勇気ゆうきを振り絞ふりしぼって相談そうだんするので『女性じょせいだからしかたない』という対応たいおうだけはしないでほしい」と訴うったえると、2次じ被害ひがいを生うまないよう競技きょうぎを横断おうだんした相談そうだん窓口まどぐちや指導しどう者しゃへの研修けんしゅうの充実じゅうじつが必要ひつようだと意見いけんが出だされました。

最後さいごに

▽法ほう整備せいびを早急そうきゅうに行おこなうこと

▽誰だれもが安心あんしんしてスポーツができる環境かんきょうを各かく組織そしきや競技きょうぎ団体だんたいが作つくる必要ひつようがあることなどを提言ていげんしました。

性せい犯罪はんざいの適切てきせつな処罰しょばつの在り方ありかたを議論ぎろんしてきた法務省ほうむしょうの検討けんとう会かいが、先週せんしゅうまとめた報告ほうこく書しょにも盗と撮とや画像がぞうの拡散かくさんを取り締とりしまる法ほう整備せいびが必要ひつようだと盛り込もりこまれています。

京都きょうと府ふの37歳さいの自営業じえいぎょう者しゃはおととし、テレビのスポーツ番組ばんぐみで放送ほうそうされた複数ふくすうの女性じょせいアスリートの画像がぞう、合あわせて39点てんをみずからが運営うんえいするアダルトサイトに無断むだんで転載てんさいしたとして著作ちょさく権けん法ほう違反いはんの疑うたがいで逮捕たいほされ、今月こんげつ20日にちに罰金ばっきん60万まん円えんの略式りゃくしき命令めいれいを受うけました。

警視庁けいしちょうによりますと、運営うんえいしていたのは9つのサイト。

このうち少すくなくとも4つのサイトに女性じょせいアスリートの画像がぞうが卑ひわいなことばとともに掲載けいさいされているのが確認かくにんされたということです。

サイトの運営うんえいで得えた広告こうこく収入しゅうにゅうは、ことし3月つきまでの10年間ねんかんで少すくなくとも1億おく2000万まん円えんに上のぼるとみられています。

この自営じえい業者ぎょうしゃは調しらべに対にたいし「生活せいかつ費ひを稼かせぐため話題わだい性せいのある画像がぞうを掲載けいさいしていた。悪わるいことだという認識にんしきはあったが逮捕たいほされるとは思おもわなかった」と話はなしていたということです。

アスリートが盗と撮うつされたり、画像がぞうがインターネット上じょうに性的せいてきな目的もくてきで拡散かくさんされたりする被害ひがいが相次あいつぐ中なか、警視庁けいしちょうはJOC＝日本にっぽんオリンピック委員いいん会かいからこれまでにおよそ1000件けんの情報じょうほう提供ていきょうを受うけて捜査そうさを進すすめてきました。

しかし、立件りっけんは難むずかしいのが現状げんじょうだということです。

まず、刑法けいほうには盗と撮とそのものに関にかんする規定きていがありません。

このため盗とう撮と行為こういについては都道とどう府県ふけんの迷惑めいわく防止ぼうし条例じょうれいが適用てきようされるケースが多おおくなっていますが、捜査そうさ関係かんけい者しゃによりますと盗と撮との対象たいしょうは服ふくで隠かくされている下着したぎなどの部分ぶぶんに限かぎられ、アスリートの競技きょうぎ中ちゅうの姿すがたは対象たいしょうにならない可能かのう性せいが高たかいということです。

また、画像がぞうの拡散かくさんについても、わいせつな画像がぞうではないため直ただちに取り締とりしまることは難むずかしいとしています。

捜査そうさ関係かんけい者しゃによりますと、今回こんかいはサイトの中なかにテレビで放送ほうそうされた画像がぞうが含ふくまれていたことから著作ちょさく権けん法ほう違反いはんの容疑ようぎが適用てきようできると判断はんだんし、逮捕たいほに踏み切ふみきったということです。

一方いっぽう、盗と撮うつされた画像がぞうが卑ひわいなことばとともに掲載けいさいされていた場合ばあいは名誉めいよ毀損きそん罪ざいや侮辱ぶじょく罪ざいにあたる可能かのう性せいがありますが、被害ひがい者しゃが告訴こくそしなければ罪つみには問とわれません。

被害ひがい者しゃにとっては「自分じぶんと特定とくていされてしまうのではないか」「家族かぞくなどに知しられたくない」という思おもいが強つよく、被害ひがいの申告しんこくをためらうアスリートも少すくなくないということです。

警視庁けいしちょうの幹部かんぶは「アスリートの盗とう撮と画像がぞうを扱あつかう悪質あくしつなサイトがはびこっているのが分わかっていても法律ほうりつの壁かべがあるうえ、被害ひがい者しゃの協力きょうりょくを得えられなければ立件りっけんはできない。一方いっぽうで被害ひがいを申告しんこくすることでさらに傷きずついてしまうという2次じ被害ひがいの問題もんだいも考慮こうりょしなければならず、歯はがゆい思おもいだ」と話はなしています。

女性じょせいが初はじめて被害ひがいに気付きづいたのは大学だいがくに入はいったころで、会場かいじょうに来きていた友人ゆうじんから「前まえにいた人ひとがあなたのお尻しりをアップにした写真しゃしんを撮影さつえいしていた」と教おしえられ驚おどろいたといいます。

さらに、大会たいかいで成果せいかを出だし注目ちゅうもくされるようになると写真しゃしんに卑ひわいなことばをつけて拡散かくさんされたり、自身じしんのSNSに送おくりつけられたりすることもあったといいます。

当時とうじを振り返ふりかえり女性じょせいは「写真しゃしんや動画どうがに『お尻しりが大おおきくて好すき』とか『下着したぎが透すけていてエロい』といったことばが貼はられていて気持きもちが悪わるかった。大会たいかい中ちゅうも自分じぶんがどう切り取きりとられるのか、被害ひがいにあうのではないかと意識いしきしてしまいます。疲つかれてひざに手てを置おく時ときさえもお尻しりをカメラに向むけないよう意識いしきする現状げんじょうで常つねに5％くらい頭あたまの片隅かたすみにあるので影響えいきょうはゼロではないです」と苦痛くつうを訴うったえました。

その後そのごも、自分じぶんやほかの選手せんしゅへのSNSによる被害ひがいが深刻しんこく化かし、社会しゃかい人じん選手せんしゅだけでなく中学生ちゅうがくせいや高校生こうこうせいにも被害ひがいが生しょうじていたことから、女性じょせいは去年きょねん8月つき、別べつの選手せんしゅと2人にんで日本にっぽん陸上りくじょう競技きょうぎ連盟れんめいに被害ひがいを訴うったえました。

しかし、それが報ほうじられるとインターネット上じょうには『そんな格好かっこうをしているほうが悪わるい』とか『陸上りくじょうみたいなマイナーなスポーツはそうやっていかないと観客かんきゃくが入はいらない』といったコメントが相次あいついだと言いうことで、女性じょせいは「心こころないコメントが結構けっこうあり、そういう考え方かんがえかたの人ひとがいるとわかってはいたがこんなにも多おおいのかとショックでした」と振り返ふりかえりました。

また、日本にっぽん陸連りくれんに伝つたえるまで何なん年ねんも被害ひがいの相談そうだんをできなかった経験けいけんから、競技きょうぎ団体だんたい側がわの課題かだいも指摘してきし「当時とうじ、人ひとに言いうのはタブーなのかなという雰囲気ふんいきを感かんじたし『言いったところで誰だれが解決かいけつしてくれるのだろう』という思おもいもあり、声こえを上あげることも相談そうだんすることもしなかった。今いままで野放のばなしにされてきた部分ぶぶんでもあり最終さいしゅう的てきに相談そうだんした時ときも『そんなことあるのか』という声こえが競技きょうぎ団体だんたいからあった。これだけ被害ひがいが多おおいのに知しらないこと自体じたい、問題もんだいではないかと思おもいました」と競技きょうぎ団体だんたいや指導しどう者しゃにも対処たいしょしてほしいと訴うったえました。

そして「中学生ちゅうがくせい、高校生こうこうせいが被害ひがいに遭あうことも絶対ぜったいにあると思おもいますし、自分じぶんが目指めざしていた選手せんしゅが被害ひがいにあっているのを見みて気持きもち悪わるくて競技きょうぎ自体じたいに嫌悪けんお感かんを持もってしまうこともあると思おもいます。取り締とりしまるための法ほう整備せいびが進すすんでほしいという思おもいがいちばんです」と話はなしていました。

スポーツとジェンダーが専門せんもんの明治めいじ大学だいがくの高峰たかみね修おさむ教授きょうじゅは「問題もんだいは20年ねん以上いじょう前まえから指摘してきされており、一部いちぶの団体だんたいを除のぞきスポーツ界かい全体ぜんたいとしては具体ぐたい的てきな対策たいさくを取とるのに時間じかんがかかりすぎている」と対応たいおうの遅おそさを指摘してきしたうえで「これまでスポーツの領域りょういきではむしろアスリートを使つかって消費しょうひ者しゃの性的せいてきな欲望よくぼうを刺激しげきしてきた、性せいを商品しょうひん化かしてきた側面そくめんがある」という見方みかたを示しめしました。

高峰たかみね教授きょうじゅによりますとIOC＝国際こくさいオリンピック委員いいん会かいが2018年ねんに公表こうひょうした「ジェンダー平等びょうどう報告ほうこく書しょ」では、ユニフォームが技術ぎじゅつ的てきな必要ひつよう性せいを反映はんえいし、男女だんじょ間かんで不当ふとうな違ちがいがないよう勧告かんこくしているということです。

しかし「例たとえばビーチバレーのユニフォームは最近さいきんでこそバリエーションが増ふえてきたが、男性だんせいはランニングシャツとハーフパンツの一方いっぽうで女性じょせいはビキニタイプなどと規定きていされた時期じきがあった。ルール上じょうの違ちがいはネットの高たかさだけなのに形状けいじょうがここまで違ちがうのは、競技きょうぎに関係かんけいない側面そくめんが影響えいきょうしていると考かんがえるのが合理ごうり的てきだ。他たの競技きょうぎも含ふくめ本当ほんとうは露出ろしゅつの多おおいものを着きたくないが、状況じょうきょう的てきに着きざるをえないアスリートがいることを考かんがえるべきで、中学生ちゅうがくせいの部活ぶかつなどでも特とくに配慮はいりょが必要ひつようだ」として、選手せんしゅ自身じしんが選択せんたくできることが大事だいじだと話はなしました。

メディアについても「アスリートの性的せいてきな写真しゃしんを売うりにした雑誌ざっしが販売はんばいされ、イケメンとか美女びじょとか『美うつくしすぎる』と言いう表現ひょうげんがごく当たり前あたりまえに使つかわれていて、この20年ねん、一向いっこうに変かわる気配けはいがない。細こまかい描写びょうしゃの蓄積ちくせきが今いまの状況じょうきょうを作り出つくりだしており責任せきにんは大おおきい」と指摘してきしています。

今後こんごに向むけては「被害ひがいを防ふせぐ法的ほうてきな取り組とりくみはもちろん重要じゅうようだが、この問題もんだいをきっかけにスポーツ界かいとしても性せいの商品しょうひん化かについてもう一度もういちど振り返ふりかえる必要ひつようがある。そして性的せいてきな画像がぞうの問題もんだいに限かぎらずさまざまなハラスメントからアスリートや関係かんけい者しゃを守まもる、人権じんけんを守まもる役割やくわりを強つよく意識いしきしてほしい」とスポーツ界かいにも意識いしき改革かいかくを求もとめています。