首都しゅと直下ちょっか地震じしん 今いまこの瞬間しゅんかんもひずみ蓄積ちくせき いざという時ときの備そなえを

関東かんとう地方ちほうは、陸りく側がわのプレートの下したに、南みなみから「フィリピン海うみプレート」東ひがしから「太平洋たいへいようプレート」という２ふたつの海うみのプレートが沈しずみ込こむ複雑ふくざつな構造こうぞうで、さまざまなタイプの大だい地震じしんが繰り返くりかえし発生はっせいしてきました。

京都大きょうとだい学がく防災ぼうさい研究所けんきゅうじょの西村にしむら卓也たくや准じゅん教授きょうじゅは、ＧＰＳの観測かんそくデータを用もちいて地盤じばんの動うごきを分析ぶんせきし、どれくらい「ひずみ」がたまっているかを調しらべています。

分析ぶんせきによりますと、陸りく側がわのプレートはフィリピン海うみプレートの沈しずみ込こみに伴ともなって北きた向むきに押おされ、関東かんとう南部なんぶほど変化へんかの量りょうは大おおきく、房総ぼうそう半島はんとうや三浦みうら半島はんとうなどでは地盤じばんが年間ねんかん２にセンチほど動うごいているということです。

西村にしむら准じゅん教授きょうじゅは「陸地りくちの中なかに、どんどんひずみがたまっていくと陸地りくちにある活かつ断層だんそうが動うごきやすくなり、いわゆる『内陸ないりく直下ちょっか型がた』の地震じしんが起おこりやすくなると言いえる」としています。

さらに、西村にしむら准じゅん教授きょうじゅは、地下ちか深ふかくで別べつのタイプの地震じしんを引き起ひきおこすひずみも、たまり続つづけていると指摘してきします。

フィリピン海うみプレートが沈しずみ込こんだ先さきでは、東ひがしから沈しずみ込こんだ太平洋たいへいようプレートによって一部いちぶがブロックされ、プレート自体じたいが曲まがるような力ちからがかかっているということです。

こうして起おきるのがフィリピン海うみプレート内ないを震源しんげんとする地震じしんで、震源しんげんの真上まうえが東京とうきょう都とや千葉ちば県けんなどにあたり人口じんこう密集みっしゅう地域ちいきで揺ゆれが激はげしくなります。

国くにが首都しゅと直下ちょっか地震じしんとして想定そうていしている複数ふくすうの地震じしんのうち、最悪さいあくの場合ばあい２に万まん3000人にんが死亡しぼうするとしている「都心としん南部なんぶ直下ちょっかマグニチュード7.3」の地震じしんも、タイプとしてはフィリピン海うみプレート内ないで発生はっせいする地震じしんです。

西村にしむら准じゅん教授きょうじゅは「首都しゅと直下ちょっか地震じしんの発生はっせい確率かくりつは今後こんご30年ねん以内いないに70％とされているが、これは、30年ねん後ごに起おきるという意味いみではなく、あす起おきてもおかしくない。身の回みのまわりの危険きけんや家いえの備そなえなどを見直みなおし、できる備そなえを実行じっこうに移うつすことが重要じゅうようだ」と話はなしています。

首都しゅと直下ちょっか地震じしんとは

首都しゅと圏けんで甚大じんだいな被害ひがいが出でるおそれのある「首都しゅと直下ちょっか地震じしん」は、政府せいふの地震じしん調査ちょうさ委員いいん会かいが今後こんご30年ねん以内いないに70％の確率かくりつで発生はっせいすると予測よそくしているマグニチュード７ななクラスの大だい地震じしんです。

この地震じしんについて、専門せんもん家かなどでつくる国くにの検討けんとう会かいは東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいを教訓きょうくんに平成へいせい25年ねん、最大さいだいクラスの地震じしんによる被害ひがい想定そうていと対策たいさくの方向ほうこう性せいを公表こうひょうしました。

首都しゅとの直下ちょっかで起おきる地震じしんにはさまざまなタイプがありますが、被害ひがい想定そうていは、このうち、陸りくのプレートの下したに南みなみから沈しずみ込こむ海うみ側がわの「フィリピン海うみプレート」の内部ないぶで発生はっせいし、首都しゅと中枢ちゅうすう機能きのうへの影響えいきょうが特とくに大おおきいマグニチュード7.3の「都心としん南部なんぶ直下ちょっか」というタイプの大だい地震じしんで考かんがえられています。

まず、揺ゆれの大おおきさは、東京とうきょうの江戸川えどがわ区くと江東こうとう区くで震度しんど７なな、東京とうきょう、千葉ちば、埼玉さいたま、神奈川かながわの４よっつの都県とけんで震度しんど６ろく強きょうの激はげしい揺ゆれに襲おそわれると想定そうていされています。

被害ひがいが最もっとも大おおきくなると想定そうていされるのは、まさに今いまの季節きせつ、風かぜの強つよい「冬ふゆ」の夕方ゆうがたに地震じしんが起おきた場合ばあいで、全壊ぜんかい、または焼失しょうしつする建物たてものは61万まん棟むねに上のぼり、このうち火災かさいによって41万まん2000棟むねが焼失しょうしつするとされています。

死者ししゃはおよそ２に万まん3000人にんに上のぼり、その７なな割わりにあたるおよそ１いち万まん6000人にんは火災かさいが原因げんいんで死亡しぼうするとされています。

また、けが人けがにんは12万まん3000人にん、救助きゅうじょが必要ひつような人ひとは５ご万まん8000人にん、避難ひなん者しゃの数かずは最大さいだい720万まん人にんに達たっすると想定そうていされています。

上下じょうげ水道すいどうや電気でんきなどライフラインや交通こうつうへの影響えいきょうも長期ちょうき化かし、鉄道てつどうは１いち週間しゅうかんから１いちか月かげつ程度ていど運行うんこうできない状態じょうたいが続つづくおそれがあるほか、都心としんの一般いっぱん道どうは激はげしい交通こうつう渋滞じゅうたいが数すう週間しゅうかん継続けいぞくし、食料しょくりょうや水みず、ガソリンなどの燃料ねんりょうも不足ふそくした状態じょうたいが続つづくとされています。

経済けいざい的てきな被害ひがいは、建物たてものなどの直接ちょくせつ的てきな被害ひがいに加くわえ、企業きぎょうの生産せいさん活動かつどうやサービスの低下ていかによる間接かんせつ的てきな被害ひがいをあわせると、95兆ちょう円えん余あまりに上のぼると想定そうていされています。

その一方いっぽうで、事前じぜんの対策たいさくを徹底てっていすれば死者ししゃは10分ぶんの１いちにまで減へらせるとしていて、建物たてものの耐震たいしん化かを進すすめることや、出火しゅっか防止ぼうしのため、揺ゆれを感知かんちして自動的じどうてきに電源でんげんを遮断しゃだんする「感かん震しんブレーカー」の普及ふきゅうなどが重要じゅうようだとしています。

今後こんご30年ねん以内いないに70％の確率かくりつで発生はっせいの根拠こんきょは

今後こんご30年ねん以内いないに70％の確率かくりつで発生はっせいすると予測よそくされる「首都しゅと直下ちょっか地震じしん」。

過去かこに繰り返くりかえし起おきた大だい地震じしんをもとに導き出みちびきだされています。

関東かんとう南部なんぶの沖合おきあいの「相模さがみトラフ」では、陸りくのプレートの下したに海うみ側がわの「フィリピン海うみプレート」が沈しずみ込こんでいて、２ふたつのプレートの境界きょうかいでは過去かこに“巨大きょだい地震じしん”が発生はっせいしています。

1703年ねんのマグニチュード8.2の「元禄げんろく関東かんとう地震じしん」と、1923年ねんに「関東かんとう大震災だいしんさい」を引き起ひきおこしたマグニチュード7.9の「大正たいしょう関東かんとう地震じしん」です。

このプレート境界きょうかいで発生はっせいするマグニチュード８はちクラスの“巨大きょだい地震じしん”は、今後こんご30年ねん以内いないの発生はっせい確率かくりつは、ほぼ０ぜろ％から６ろく％とされています。

一方いっぽう、２ふたつの“巨大きょだい地震じしん”に挟はさまれた220年ねんの間まには、ひとまわり規模きぼが小ちいさいマグニチュード７ななクラスの大だい地震じしんが数多かずおおく発生はっせいしています。

例たとえば、江戸えど時代じだい1782年ねんの「天明てんめい小田原おだわら地震じしん」、1855年ねんの「安政あんせい江戸えど地震じしん」、明治めいじ時代じだいには1894年ねんに「明治めいじ東京とうきょう地震じしん」と「東京とうきょう湾わん付近ふきんの地震じしん」、さらに大正たいしょうに入はいってからは1922年ねんの「浦賀うらが水道すいどう付近ふきんの地震じしん」など、220年間ねんかんで合あわせて８やっつの大だい地震じしんが発生はっせいしました。

政府せいふの地震じしん調査ちょうさ委員いいん会かいは、これらの発生はっせい頻度ひんどをもとに、2014年ねんに「首都しゅと直下ちょっか地震じしん」の将来しょうらいの発生はっせい確率かくりつを公表こうひょうしました。

２ふたつの“巨大きょだい地震じしん”が起おきた220年間ねんかんを１ひとつのサイクルとした場合ばあい、この間このかんにマグニチュード７ななクラスの大だい地震じしんは平均へいきんで27.5年ねんに１いち回かい発生はっせい。

これをもとに導き出みちびきだされたのが「マグニチュード７ななクラスの首都しゅと直下ちょっか地震じしんは、今後こんご30年ねん以内いないに70％の確率かくりつで発生はっせいする」というものでした。

地震じしん調査ちょうさ委員いいん会かいが指摘してきしているのは、マグニチュード７ななクラスの大だい地震じしんには“静穏せいおん期き”と“活動かつどう期き”があるように見みえるということです。

220年間ねんかんの前半ぜんはんの100年ねんは静穏せいおん期きで、関東かんとう大震災だいしんさいに至いたる後半こうはんの100年ねんは大だい地震じしんが相次あいつぐ活動かつどう期きだったというのです。

関東かんとう大震災だいしんさいからまもなく100年ねんになりますが、この100年間ねんかんにマグニチュード７ななクラスの地震じしんは１いち回かいしかなく、いわば静穏せいおん期きでした。

地震じしん調査ちょうさ委員いいん会かいは、今後こんごは地震じしん活動かつどうが活発かっぱつになる可能かのう性せいもあるという考え方かんがえかたも示しめしています。