国産こくさんそばが不足ふそく 値上ねあげの検討けんとうも

東京とうきょう・新橋しんばしにある「道みち菴」は北海道ほっかいどう産さんにこだわってそばを提供ていきょうしてきましたが、仕入しいれ価格かかくの上昇じょうしょうに頭あたまを悩なやませています。北海道ほっかいどうにある契約けいやく先さきの農場のうじょうから仕入しいれるそばの価格かかくは、ことしの秋あき、一気いっきに２に割わり上あがりました。

店みせでは今いまのところ値段ねだんを据え置すえおいて年越としこしそばの予約よやくの受け付うけつけを始はじめましたが、経費けいひ削減さくげんの努力どりょくは限界げんかいに来きているということです。

店主てんしゅの三島みしま貴たかさん（62）は「今いまの価格かかくでそばを提供ていきょうするのは本当ほんとうに苦くるしい。値上ねあげも検討けんとうせざるをえない」と話はなしています。

全国ぜんこく一いちの産地さんちで記録きろく的てき不作ふさく

全国ぜんこく一いちのそばの産地さんち、北海道ほっかいどう幌加内ほろかない町まちではことし記録きろく的てきな不作ふさくに見舞みまわれています。町内ちょうないでは3000ヘクタール以上いじょうでそばが栽培さいばいされていますが、ことし夏なつの大雨おおあめが畑はたけを直撃ちょくげきして根ねが流ながされたり生育せいいくが遅おくれたりする被害ひがいが広ひろがり、町内ちょうないの収穫しゅうかく量りょうは例年れいねんの半分はんぶん程度ていど、およそ1000トンに落ち込おちこむ見通みとおしです。

この記録きろく的てきな不作ふさくが今いま、そばの原料げんりょうの価格かかく高騰こうとうを招まねいています。幌加内ほろかない産さんそばの加工かこうを手てがける製粉せいふん工場こうじょうでは、この時期じき、年越としこしそばの需要じゅようもあって製粉せいふん機きを夜間やかんも動うごかし、１いち日にち１いちトン以上いじょうのそば粉こをつくっています。

しかし、原料げんりょうのそばの実じつ＝玄げんそばの仕入しいれ価格かかくは去年きょねんの1.4倍ばいに上昇じょうしょう。十分じゅうぶんな収穫しゅうかく量りょうがあった４よん年ねん前まえと比くらべると実じつに2.3倍ばいに跳ね上はねあがりました。

製品せいひんの価格かかくに転嫁てんかしなければ経営けいえいが成り立なりたたないとして、会社かいしゃはそば粉こ１いちキロ当あたり100円えん程度ていどの値上ねあげを決きめ、取引とりひき先さきに通知つうちしました。この先さきも原料げんりょうを十分じゅうぶん確保かくほできず、取引とりひき先さきの需要じゅように応おうじられるのか、不安ふあんが尽つきないと言いいます。

「ほろかない振興しんこう公社こうしゃ」の小関おぜき義明よしあき社長しゃちょうは「近年きんねんこれだけの不作ふさくは珍めずらしく、原料げんりょうも満足まんぞくな仕入しいれになっていないため、そばが供給きょうきゅうができない事態じたいがあるかもしれず、出荷しゅっか量りょうを調整ちょうせいしながらなんとかしていきたい」と話はなしています。

価格かかく高騰こうとうの余波よは広ひろがる

価格かかく高騰こうとうの余波よははほかの産地さんちにも広ひろがっています。

北海道ほっかいどう十勝とかち地方ちほうの新得しんとく町まちにあるそば製造せいぞう会社かいしゃでは、11月つきから年末ねんまつにかけてのこの時期じき、お歳暮せいぼや年越としこしそば向むけにそばづくりが最盛さいせい期きを迎むかえ、スーパーや百貨店ひゃっかてんに出荷しゅっかしています。

独特どくとくの風味ふうみを保たもつため、原料げんりょうのうちおよそ３さん分ぶんの１いちは近隣きんりんにある清水しみず町まちや南富良野みなみふらの町まちなどで収穫しゅうかくされた玄げんそばを使つかいます。

しかし、これらの地域ちいきの玄げんそばも最大さいだいの産地さんち・幌加内ほろかない町まちなどの不作ふさくの影響えいきょうを受うけて価格かかくが上昇じょうしょう。仕入しいれ価格かかくは３さん割わり程度ていど上あがったということです。

会社かいしゃでは商品しょうひんの値上ねあげも検討けんとうしましたが、売れ行うれゆきに影響えいきょうが出でかねないとしてなんとか価格かかくを据え置すえおいています。その代かわり、風味ふうみや品質ひんしつを損そこなわない範囲はんいで値上ねあがりした近隣きんりん産さんの玄げんそばの割合わりあいを数すう％程度ていどだけ減へらしました。

さらに、年明としあけからは工場こうじょうの稼働かどうを週しゅう２に回かいから１いち回かいにし、製造せいぞう費ひに加くわえて人件じんけん費ひも抑おさえる徹底てっていしたコスト削減さくげんを行おこなう方針ほうしんです。しかし、こうした対策たいさくだけでは上昇じょうしょうした分ぶんのコストを吸収きゅうしゅうしきれないということです。

そば製造せいぞう会社かいしゃ「新得しんとく物産ぶっさん」の赤木あかぎ教きょう仁ひとしさんは「十勝とかち産さんの収穫しゅうかく量りょうは平年へいねんに比くらべてそこまで悪わるくないが、幌加内ほろかない町まちなどに影響えいきょうを受うけて価格かかくが上あがっているのが悩なやましい。多おおくの人ひとが楽たのしみに待まっているので、工夫くふうでなんとか我慢がまんしていきたい」と話はなしています。

そば専門せんもん店てんでは10年ねんぶり値上ねあげも

札幌さっぽろ市しにある地元じもと産さんにこだわったそばの専門せんもん店てんでは先月せんげつ、10年ねんぶりにすべての商品しょうひんを値上ねあげしました。値上ねあげ幅はばは30円えんから80円えんで、この時期じき、注文ちゅうもんの多おおいかけそばは１いち杯はいが500円えんから580円えんとなりました。

値上ねあげの主おもな原因げんいんは原料げんりょうのそばの価格かかく高騰こうとうです。店みせでは北海道ほっかいどう幌加内ほろかない町まちからそばの実みやそば粉こを仕入しいれていますが、そばの実みの仕入しいれ価格かかくは去年きょねんの同おなじ時期じきと比くらべて1.6倍ばいに上あがったというということです。

来店らいてんした客きゃくは「よく家族かぞくで来きますが、財布さいふにやさしいほうがいいですが値上ねあげはしょうがない」と話はなしていました。

そば専門せんもん店てん「長命ちょうめい庵あん」の森もり清きよし店長てんちょうは「原料げんりょうは22年ねん前まえから幌加内ほろかない産さんを継続けいぞくして使つかっています。毎日まいにち毎日まいにち、来きたられているお客おきゃくさんがいるので本当ほんとうは値上ねあげをしたくなかったのですが、やむにやまれぬ決断けつだんでした」と話はなしています。