野田市などによりますと、心愛さんはおととし11月に当時通っていた小学校で行われたアンケートで「父からいじめを受けている」と訴え、1か月余り児童相談所に一時保護されました。一時保護が解除されたあとの去年1月栗原容疑者が小学校を訪れ「娘に暴力は振るっていない」とか「人の子どもを一時保護といって勝手に連れて行くのはおかしい」などと抗議したうえで、アンケートの回答を見せるよう強く求めたということです。
学校側は「個人情報なので本人の同意もない中、父親でも見せることはできない」と拒否しましたが、その3日後に栗原容疑者が心愛さんの同意を取ったとする書類を持って市の教育委員会を訪れたたため、教育委員会はアンケートのコピーを渡したということです。
コピーを渡すことについて、児童相談所には相談していなかったということです。
これについて野田市は「一時保護に対する父親の怒りを抑えるためやむなくコピーを渡してしまったが、著しく配慮を欠いた対応だった。亡くなった心愛さんに大変申し訳なく思っています」としています。
弁護士「市教委の対応 論外」
児童虐待の防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」の後藤啓二弁護士は「父親に対してアンケートのコピーを渡せば、虐待がひどくなるおそれもあり、野田市教育委員会の対応は論外だ。父親の怒りを恐れてのことかもしれないが、この問題を市で抱え込まず、警察などと連携して女の子の保護を進めるべきだった」と話しています。
児相と学校などの連携不足指摘
児童虐待をめぐっては、これまでも事件が起きるたびに、関係機関の連携不足が指摘されてきました。
去年、厚生労働省がまとめた緊急対策でも、児童相談所と学校などの間で情報共有を進めることが盛り込まれました。虐待を発見しやすい立場にある学校からの情報をもとに児童相談所が速やかに対応するねらいで、虐待が疑われる通報を受けてから原則48時間以内に子どもの安全を確認することとしています。
ところが、今回の千葉県野田市の事件では、女の子が今月に入って一度も登校していなかったにもかかわらず、学校が児童相談所に伝えたのは事件の3日前でした。
さらに、児童相談所も学校からの情報を受けたあと、状況を確認するための家庭訪問など速やかな対応をとることはありませんでした。
また、それ以前の児童相談所の対応にも問題があったとされています。死亡した女の子は虐待が疑われたことから、おととし11月に児童相談所に一時保護されました。ところが、児童相談所は翌月に一時保護を解除したあと、一度も女の子の自宅を訪問していなかったということです。
厚生労働省が定めたガイドラインでは、児童相談所が一時保護を解除する際には、虐待再発のリスクや家庭環境の改善などを確認したうえで、解除後も必要に応じて子どもとの面会や家族との面談を行うなどとしています。また、去年まとめられた緊急対策でも児童相談所は一時保護を解除したあとも状況を把握し、リスクが高まった場合にはためらわずに再び一時保護することとしています。
森田知事「児童相談所の対応に問題」
一方、今回の事件で女の子を一時保護していた千葉県の柏児童相談所の対応について、森田知事は、記者会見で「一生懸命にやったとは思うが、こういうことが起きたのは、どこかに隙間や油断があったということだ」と述べ、問題があったという認識を示しました。
そのうえで「どこに隙間や油断があったのか、それをなくすためにはどうすればいいのかを一つ一つ検証したい。こういうことを二度と起こさないようにするのが県の責任だ」と述べ、専門家などによる検証委員会の設置を急ぎ、問題点の把握と対策の検討を進める考えを強調しました。