青い「e」のマークのアイコンが特徴で、ウェブサイトを閲覧するソフトとして、1990年代のインターネット黎明期から2000年代にかけて、圧倒的なシェアを誇りました。
その後、「エクスプローラー」は、マイクロソフトの技術に特化した仕様で機能を追加していきました。
ただ、インターネットの普及に伴い、国際団体によってウェブサイトの仕様などに関する標準規格がつくられ、この規格に対応したグーグルの「クローム」やアップルの「サファリ」などの閲覧ソフトがシェアを伸ばす一方、対応していない「エクスプローラー」は次第にシェアを落とす形となりました。
マイクロソフトによりますと、それでも日本と韓国での「エクスプローラー」の利用率は世界の中でも比較的高いということです。
そして、マイクロソフトは2015年、エクスプローラーの後継ソフトとなる「マイクロソフトエッジ」の提供を開始。
標準規格に対応させているほか、セキュリティーを強化し、スマートフォンでの利用もできるようにしました。
東京 府中市にあるパソコン教室では、表計算ソフトの操作のほか、動画の編集などの個別指導が行われていて、幅広い年齢層の生徒が学んでいます。 この教室では「インターネット エクスプローラー」のサポートが終了することを記載したチラシを作成し、講師が▽家庭のパソコンでこの閲覧ソフト=ブラウザーが使われていないか確認をしたり、▽使用している場合には、速やかに別のブラウザーに切り替えたりするよう呼びかけていました。
また、表計算ソフトを学ぶ40代の女性は「3、4年ほど前までは使っていましたが、パソコンを買い替えてからは使っていません。なくなることには少し寂しさを感じます」と話していました。 この教室では高齢者を中心に▽「何か特別な手続きは必要か」という質問や、▽「インターネット エクスプローラー」にしか対応していないウェブサイトについての相談などが寄せられたということです。 教室長の岡本隼人さんは「サポートの終了だけでなく、ソフトウェアのアップデートなどセキュリティー関連については、常に考えておくように指導しています」と話していました。
神戸市にある甲南大学では、これまで図書館の本を登録したり貸し出し状況を記録したりする管理システムに「インターネット エクスプローラー」を利用してきました。 大学によりますとサポートの終了が近づくなか、別のブラウザーで使えるようにするための作業を続け、今月12日に終えたということです。
サポートの終了が当初の予定よりも早まったことや、学生生活に影響が出ないよう長期休暇に集中して作業を進めてきたため、最後に残った図書館のシステムの更新がこの時期になったということです。 甲南大学図書館事務室の高野重成課長補佐は「サポート終了前に更新の手続きが終わり、なんとか間に合ってほっとしている。ブラウザーが違うとシステムの操作が少し変わるので慣れていきたい」と話していました。
このうちツイッターには「Win95から27年、大変お世話になりましたありがとうIE!」とか、「問い合わせには、青いEのアイコンないですか?とよく言ってました。IEさんお勤めご苦労様でした!」などソフトに感謝する声が相次いでいます。 また、「プリントアウトの縮尺を変える時、細かい設定ができて結構便利だった」などと惜しむ声や、「あなたのせいで日付が変わるまでひたすらコードを書き続けたこともありました。でも、今となってはよい思い出だし、そこから得たものもたくさんありました」と思い出と合わせたツイートも多く見られました。 一方「IEのみで動作するソフトを利用している方は注意してくださいね」などと呼びかける投稿もありました。
一般の利用者は今後、「エクスプローラー」ではなく、後継となる「マイクロソフトエッジ」のほか、グーグルの「クローム」やアップルの「サファリ」など、ほかの閲覧ソフトを使うことになります。 マイクロソフトによりますと、ウィンドウズ10以降のパソコンには「エッジ」が標準搭載されていて、新たにインストールする必要はなく、そのまま利用できるということです。 また、「エクスプローラー」でお気に入りに登録しているウェブサイトについては、「エッジ」にデータを取り込むことができるということです。 ウェブサイトのほとんどは「エッジ」「クローム」「サファリ」などで開くことができますが、なかには「エクスプローラー」のみに対応したウェブサイトもあるということで、この場合は「エッジ」の「インターネットエクスプローラーモード」という機能を使えば閲覧できるということです。 一方、企業の会計や出退勤管理などのシステムの中には、「エクスプローラー」の利用を前提に開発されたものも多く、改修などの対応が必要になるケースがあるということです。 こうした場合も「エッジ」の「インターネットエクスプローラーモード」を使えば利用を続けることが可能で、会社は7年後の2029年まではこの機能を提供するとしていますが、早めの移行を呼びかけています。 日本マイクロソフトの春日井良隆さんは、「企業の方にはまだ7年ではなくて、もう7年しかないと考えてもらいたい。エクスプローラーでしか使えないということは、スマートフォンでも扱えないということだ。デジタル変革に後れをとることにもなるので、システムの刷新をぜひ検討してもらいたい」と話しています。
徳島県の公立病院では、去年10月、「ランサムウエア」と呼ばれる身代金を要求されるコンピューターウイルスによって電子カルテなどが使えなくなり、2か月以上にわたって通常の診療ができなくなりました。 この件で有識者会議の会長を務めた神戸大学大学院の森井昌克教授によりますと、システムのプログラムの一部でサポートが切れたことなどによるぜい弱性が狙われたと考えられるということです。 有識者会議の報告書ではシステムの提供事業者の対応不足などをあげたうえで、事業者に運用を任せていた病院側にも「継続的な連携が必要だということを忘れてはならない」と指摘されています。 病院の担当者はNHKの取材に対して「システム業者にすべて任せるのではなく、サポート切れのものは質問して説明を求めるなど連携して防ぐべきだという教訓を得ました。サポートの終了を狙ったサイバー攻撃は個人、法人を問わず起きるおそれがあるので、対岸の火事と思わず注意してほしい」と話していました。
このため、サポート終了後も利用を続けるユーザーが一定数いるのではないかと指摘しています。 そのうえで、今後、サポートの切れた状態でソフトを使い続けると▽アクセスすることができないサイトが増えるほか▽ウイルスに感染するリスクが高まるおそれがあり、すぐに別のブラウザーに切り替えることが必要だということです。 また、特定のブラウザーに合わせて複雑に作り込まれたサイトの場合、別のブラウザーに対応させるには多くの労力や費用がかかるため、一部の企業では対応が進まないことも想定されるということです。 齋藤教授は企業などの対応の遅れを防ぐため、補助金など国による支援も必要だと指摘し「社会問題になるおそれもあるので、新しいブラウザーに移行させるための動機づけを行政が与えることも検討していく必要がある」と話しています。
パソコン教室で切り替え呼びかけ
更新対応に追われた施設も
SNS上では感謝や惜しむ声 注意呼びかけなど多数の投稿
サポート終了にともなう注意点は
サポート終了のプログラム使用で思わぬ被害も
専門家「移行の動機づけ 行政が与えること検討を」