Actualités japonaises: 「あなたを絶対に許さない」美帆さんの母親陳述全文

「美帆みほは冬ふゆ晴はれの日ひに誕生たんじょうしました」。

「ひまわりのような笑顔えがおでした」。

相模原さがみはら市しの知的ちてき障害しょうがい者しゃ施設しせつで入所にゅうしょ者しゃ19人にんが殺害さつがいされるなどした事件じけんで、殺人さつじんなどの罪つみに問とわれている被告ひこくの裁判さいばんが開ひらかれ、検察けんさつは被告ひこくに責任せきにん能力のうりょくがあったとして死刑しけいを求刑きゅうけいしました。

法廷ほうていでは検察官けんさつかんによる求刑きゅうけいに先立さきだって、19歳さいで犠牲ぎせいとなった「美帆みほさん」の母親ははおやが何なん度ども声こえを震ふるわせ、時ときにおえつしながら心情しんじょうを語かたりました。犠牲ぎせい者しゃが匿名とくめいで審理しんりされる中なか、母親ははおやは「娘むすめは甲かぶとでも乙おつでもない」と裁判さいばんに合あわせて下したの名前なまえを公表こうひょうしました。母親ははおやは被告ひこくの変かわらぬ差別さべつ的てきな主張しゅちょうに心こころが壊こわれそうになりながらも傍聴ぼうちょうに通かよい、法廷ほうていで心情しんじょうを語かたるために長ながい時間じかんをかけてことばをつづり練習れんしゅうも重かさねてきました。

（以下いか、陳述ちんじゅつ全文ぜんぶん）

美帆みほが人生じんせいの全すべてでした

私わたしは美帆みほの母親ははおやです。美帆みほは12月つきの冬ふゆ晴はれの日ひに誕生たんじょうしました。１ひとつ上じょうに兄あにがいて待まちに待まった女の子おんなのこでした。

幼おさないころはとても音おとに敏感びんかんでした。大おおきな音おと、初はじめての場所ばしょ、人ひとがたくさんの場所ばしょが苦手にがてでした。人ひとに挨拶あいさつされただけで泣き叫なきさけぶ子こでした。

３さん歳さい半はんで自閉症じへいしょうと診断しんだんされたあとは、とにかく勉強べんきょうしました。本ほんを読よんだり、講演こうえん会かいに通かよい、少すこしでも美帆みほのことを理解りかいしようとしました。

他たの親御おやごさんたちと障害しょうがいのある方ほうや、その親おやの気持きもちを伝つたえようと思おもい、学校がっこうや地域ちいきで語かたったこともありました。にらまれたり怒おこられたりするのが怖こわかったから理解りかいしてくれる人ひとを増ふやそうと思おもいました。

美帆みほが私わたしの人生じんせいの全すべてでした。

多おおくの良よい先生せんせいや、友達ともだち、支援しえんしてくれた職員しょくいんさん、ガイドヘルパーさん、ボランティアさんに恵めぐまれました。皆みな、やさしく接せっしてくれたので、とても人ひとが好すきで人懐ひとなつっこい子こに育そだちました。

とても音楽おんがくが好すきで「いきものがかり」ドラマの主題しゅだい歌かや童謡どうよう、クラシック、アニメ等とうジャンルは問とわず、いろいろな曲きょくを聴きいてノリノリで踊おどっていました。

乗り物のりものに乗のっているとご機嫌きげんで、よくドライブしたり、電車でんしゃやバスに乗のりました。小ちいさい時ときはブランコが大好だいすきでした。プール、ジェットコースター、プラネタリウム、水族館すいぞくかん、パレード、らーめん博物館はくぶつかん、公園こうえん等とう、本当ほんとうに大好だいすきでいろんな場所ばしょに家族かぞくやガイドヘルパーさん、ボランティアさんと出でかけていました。

ひまわりのような笑顔えがお私わたしの娘むすめであり先生せんせいでした

成長せいちょうするにつれ、美帆みほは落ち着おちついてきました。一方いっぽうで、９きゅう歳さいから大おおきなてんかん発作ほっさがあり、小学校しょうがっこう５ご年生ねんせいぐらいから多おおい時ときは週しゅう１いち少すくない時ときも月つき１いち回かいぐらい発作ほっさがありました。

家庭かていの事情じじょうで中学ちゅうがく２に年生ねんせいの時ときから児童じどう寮りょうで生活せいかつしていました。毎月まいつき会あいに行いくのが楽たのしみでした。仕事しごとも娘むすめのためと思おもうと頑張がんばれました。多おおいときには４よっつの仕事しごとをかけもちでしていました。

娘むすめに障害しょうがいのこと、自閉症じへいしょうのこと、てんかんのこと、いろいろ教おしえてもらいました。私わたしの娘むすめであり先生せんせいでもあります。優やさしい気持きもちで人ひとと接せっすることが出来できるようになりました。待まつことの大切たいせつさや、人ひとに対にたいしての思おもいやりが持もてるようになりました。人ひとの良よい所ところ（長所ちょうしょ）を見みつけることが上手じょうずになりました。人ひとを褒ほめることが上手じょうずになりました。

人懐ひとなつっこくて言葉ことばはありませんが、すーす-っと人ひとの横よこ（そば）に来きて挨拶あいさつをして、前まえから知り合しりあいのように接せっしていました。笑顔えがおがとても素敵すてきで、まわりを癒やしてくれました。ひまわりのような笑顔えがおでした。美帆みほは毎日まいにちを一生懸命いっしょうけんめい生いきていました。

（法廷ほうていで被告ひこくに）「お母おかあさんのことを思おもうといたたまれません」と言いわれて、むかつきました。考かんがえも変かえず、１いちｍｍみりめ-とるも謝罪しゃざいされた気きがしません。痛いたみのない方法ほうほうで殺ころせばよかったということなんでしょうか。冗談じょうだんじゃないです。ふざけないで下ください。美帆みほにはもう、どんな方法ほうほうでも会あえないんです。

「美帆みほちゃん、美帆みほちゃん」一生いっしょう忘わすれられない冷つめたさ

（事件じけん）当日とうじつは７なな時じ30分ふん頃ごろ「美帆みほが被害ひがいにあっている」との連絡れんらくをもらい９きゅう時じから10時の間ときのまごろ、やまゆり園えんに着つきました。

名簿めいぼの×を見みたときから、もう何なにがなんだかわからなくなり、頭あたまも真っ白まっしろでした。何なん回かいも夢ゆめじゃないかと思おもい、ほっぺたをつねってみたのですが、夢ゆめか現実げんじつか、自分じぶんが誰だれなのか、どうしてここにいるのかも、わからなくなっていました。

だいぶ時間じかんがたってから美帆みほに会あえました。顔かおしか見みせてもらえませんでした。ストレッチャーに乗のせられていて「美帆みほちゃん、美帆みほちゃん」と何なん度ど呼よんでも答こたえてくれなくて、自分じぶんで体温たいおん調節ちょうせつをするのが苦手にがてで、汗あせをあまりかかない子こだったので、いつも暖あたたかい子こが、その時ときはすごく冷つめたくて、冷つめたくて、そんなこと一いち度どもなかったのにすごく冷つめたくて一生いっしょう忘わすれることのできない冷つめたさでした。会あったのは数すう分ふんだと思おもいます。

プリント等とう配くばっていましたが、何なにを手てにしているのだろう、皆みな、何なにを言いっているのだろうと不思議ふしぎでした。私わたしは頭痛ずつうがひどくて「診療しんりょう所しょの先生せんせいが園えんに来きているから具合ぐあいの悪わるい人ひとは言いって下ください」と園長えんちょう先生せんせいに言いわれて診みてもらったら「血圧けつあつがすごく高たかいので頭痛ずつうはなおらないけど点滴てんてきするので診療しんりょう所しょに来きたられるようなら来きて下ください」と言いわれ警察けいさつの車くるまに乗のせて頂いただき点滴てんてきを受うけました。

警察けいさつと園えんと遺族いぞくの話はなしで、名前なまえを出だすか出ださないかでとても揉もめていたのを覚おぼえています。私わたしは言葉ことばがでなくて一言ひとことも発はっすることが出来できませんでした。

葬儀そうぎは、地元じもとの斎場さいじょうで音楽おんがく葬そうでしました。マスコミが多おおく来きていたようですが、弁護士べんごし会かいから来きて頂いただいている弁護士べんごしや警察けいさつが協力きょうりょくして入いれないようにしてもらえました。

美帆みほの好すきな童謡どうようや「いきものがかり」などの音楽おんがくを流ながし、参列さんれつ者しゃには娘むすめの顔かおも見みてもらいました。美帆みほのアルバムや額がくに入はいった写真しゃしんを見みてもらいました。着物きものを着きせて見送みおくりました。のべ200人にん位いの人ひとが見送みおくってくれました。

自分じぶんの命いのちより大切たいせつな人ひとを失うしない私わたしたちは殺ころされた

事件じけん後ご、家いえはめちゃくちゃになりました。

社交しゃこう的てきで老人ろうじん会かいや自治じち会かいの活動かつどうに積極せっきょく的てきに参加さんかしていた祖母そぼが家いえに引ひきこもってしまい、一いち歩ほも外そとに出でなくなりました。人ひとと話はなしをするのが好すきだったのに誰だれとも話はなさなくなりました。料理りょうりや庭にわの手入ていれをするのが好すきでしたが全まったくしなくなりました。笑顔えがおが消きえ、表情ひょうじょうがなくなりました。

兄あには具合ぐあいが悪わるくなり、休み休やすみやすみ仕事しごとをしていましたが入院にゅういんすることになり仕事しごとを辞やめました。

私わたしは食事しょくじをしても味あじがわからなくなり、９きゅうｋｇきろぐらむやせました。心療しんりょう内科ないかに通かよい薬やくを飲のむようになりました。体からだが痛いたくて寝ねる時ときに骨ほねが当あたって痛いたくて眠ねむれませんでした。１いち人にんで外出がいしゅつするのが怖こわくなり、外そとに出でられなくなりました。がんばって外そとに出でると心臓しんぞうの動悸どうきがすごく、ドキドキしてブルブル全身ぜんしんが震ふるえてしまうことがよくありました。今いまでもこの発作ほっさで震ふるえてしまうことがあります。

私わたしの人生じんせいはこれで終おわりだと思おもいました。自分じぶんの命いのちより大切たいせつな人ひとを失うしなったのだから。

美帆みほがいなくなったショックで私わたしたち家族かぞくは、それまで当たり前あたりまえにしていたことが何一なにひとつできなくなりました。私わたしたち家族かぞく、美帆みほを愛あいしてくれた周まわりの人ひとたちは皆みな、あなたに殺ころされたのです。未来みらいを全すべて奪うばわれたのです。美帆みほを返かえして下ください。

あなたに極刑きょっけいを望のぞむ

他人たにんが勝手かってに奪うばっていい命いのちなど１ひとつもないということを伝つたえます。

あなたはそんなこともわからないで生いきてきたのですか。ご両親りょうしんから教おしえてもらえなかったのですか。周まわりの誰だれからも教おしえてもらえなかったのですか。何なにて、かわいそうな人ひとなんでしょう。何なにて、不幸ふこうな環境かんきょうにいたのでしょう。本当ほんとうにかわいそうな人ひと。

私わたしは娘むすめがいて、とても幸しあわせでした。決けっして不幸ふこうではなかったです。「不幸ふこうを作つくる」とか勝手かってに言いわないでほしいです。私わたしの娘むすめはたまたま障害しょうがいを持もって生うまれてきただけです。何なにも悪わるくありません。

あなたの言葉ことばをかりれば、あなたが不幸ふこうを作つくる人ひとで、生産せいさん性せいのない生いきている価値かちのない人間にんげんです。あなたこそが税金ぜいきんを無駄むだに使つかっています。あなたはいらない人間にんげんなのだから。あなたがいなくなれば、あなたに使つかっている税金ぜいきんを本当ほんとうに困こまっている人ひとにまわせます。

あなたが今いま、なぜ生いきているのかわかりません。私わたしの娘むすめはいないのに、こんなひどいことをした人ひとがなぜ生いきているのかわかりません。何なんであなたは１いち日にち３さん食しょくごはんを食たべているのですか。具合ぐあいが悪わるくなれば治療ちりょうも受うけられる。私わたしの娘むすめはもうこの世このよにいなくて何なにも出来できないのに。