東京オリンピックのマラソンの代表選考は、去年9月のMGC=マラソン グランド チャンピオンシップで男女とも上位2人がまず内定し、8日行われた、びわ湖毎日マラソンと名古屋ウィメンズマラソンまでの男女それぞれ3つの選考レースを受けて最後の一人が内定しました。
男子は、MGC1位の中村匠吾選手と2位の服部勇馬選手、それに東京マラソンで2時間5分29秒の日本記録をマークした大迫傑選手の3人が代表に内定しました。
女子は、MGC1位の前田穂南選手と2位の鈴木亜由子選手、それに名古屋ウィメンズマラソンで日本歴代4位の2時間20分29秒をマークした一山麻緒選手の3人が代表に内定しました。
また、日本陸上競技連盟の選考要項に基づき、男子はMGCで4位の大塚祥平選手とMGC5位の橋本崚選手が、女子はMGC3位の小原怜選手とMGC4位の松田瑞生選手が現時点で、それぞれ補欠となります。
東京オリンピックのマラソンは札幌市で行われ、女子は8月8日の午前7時、男子は8月9日の午前7時にスタートします。
札幌のコースは
東京オリンピックの男女のマラソンでは、去年のMGCで選手たちが競った東京のコースではなく、札幌のコースが舞台となります。
去年、猛暑の対策としてIOC=国際オリンピック委員会がマラソンと競歩の会場を急きょ札幌に移すことを表明し、調整の結果、札幌市中心部の「札幌大通公園」を発着するコースに決まりました。
マラソンのコースは、関係者の負担軽減や簡素化を図るため、変則的な周回コースとなり、1周目は大きいループとなる20キロを回ったあと、2周目と3周目は小さいループの10キロを回ります。
序盤の8キロ地点の前後にアップダウンがあるものの、そのあとは高低差の少ないフラットなコースで、東京よりも低い気温が見込まれることから、高速レースが予想されています。
札幌テレビ塔のほか、北海道大学や道庁の赤れんが庁舎など、札幌を代表する名所を経由しますが、このうち3回通る北海道大学の構内には細かいクランクがあり、前の選手の姿が見えにくくなることから、後半のスパートなど勝負の仕掛け所となりそうです。
マラソン代表の新たな選考方法 その成果は
長く低迷していた日本のマラソン界に変化をもたらそうと、東京オリンピックのマラソン選考は初めて“一発勝負”となる選考レースMGC=マラソングランドチャンピオンシップを導入するなど、これまでにないものとなりました。
2017年、日本陸上競技連盟の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、世界と戦える選手を選ぶことや選考の透明性を確保することを目指して、厳しい基準を突破した精鋭たちが一堂に会して代表3人のうち2人を決める“一発勝負”の選考レース、MGCを軸にした新たな選考方式を発表しました。
過去のマラソンの代表は、オリンピックの前のシーズンに行われる主要な大会の成績や内容をもとに日本陸連が総合的に判断して選んでいましたが、直近のリオデジャネイロ大会で日本選手の最高順位は男子が16位、女子が14位と振るわず、選手選考も大会のたびに物議を醸していたため、選考方式を大幅に変更する大なたを振るったのです。
新たな選考方式が示されたことで、選手は目標が明確になり、マラソンへのモチベーションが高まると目に見えて成果が出てきました。
男子では、2018年、設楽悠太選手が16年間破られることのなかった日本記録を更新すると、そのわずか7か月後には大迫傑選手が再び日本記録を更新しました。
女子でも若くスピードのある選手たちが、トラック種目からどんどんとマラソンに挑戦する流れができました。去年9月のMGCで、真夏のレースを想定し本番で力を発揮できる高い「調整能力」を持った男女それぞれ2人の選手が選ばれ、そして最後の1枠は「スピード」を重視し、MGCのあとに行われた対象レースで設定記録を切った選手の中から、最も記録のよい選手が選ばれました。
その結果、男子では大迫選手がみずからの記録を21秒更新する2時間5分29秒の日本新記録をマークしたほか、女子では22歳の一山麻緒選手が日本歴代4位の2時間20分29秒のタイムで海外勢を抑えて優勝するなど、今回の代表選考方式が日本マラソン界の底上げに大きく貢献したことを裏付ける結果となりました。
男女とも選考レースで世界の強豪選手と渡り合う展開が見られたことで、東京オリンピックで日本勢が久しぶりのメダルに手が届くのではとの期待も高まっています。