事件を起こした岩崎隆一容疑者(51)は小学生たちを刺したあと自殺し、警察は29日、殺人の疑いで川崎市麻生区の自宅を捜索しました。
これまでの捜査で、岩崎容疑者は犯行当時、少なくとも4本の包丁を所持していたとみられています。包丁について同居していた親族が「自宅で使っていたものではない」などと警察に話していることが捜査関係者への取材で新たに分かりました。
警察は、岩崎容疑者が事前に包丁を準備し計画的に事件を起こしたとみて詳しいいきさつを調べています。
けがした人の年齢明らかに
この事件で警察は重軽傷を負った17人の詳しい内訳を明らかにしました。大けがをした女性は45歳で現場にいた子どもの保護者だということです。また、けがをした小学生は、6歳から12歳までの16人でこのうち女児2人が重傷だということです。
容疑者の足取り 犯行状況明らかに
これまでの警察の捜査で当時の状況がさらに明らかになってきました。
警察によりますと、岩崎容疑者は28日の朝、自宅近くの小田急線の読売ランド前駅から電車に乗り、現場の最寄り駅である登戸駅まで移動したということです。
駅を出たあとJR南武線の線路沿いの道を西向きに歩いていたとみられています。
そして線路沿いの道を右に曲がり、左前方にあったコンビニエンスストアの敷地にリュックサックを置いてから事件を起こしたということです。
防犯カメラの映像や目撃者の話などから、岩崎容疑者ははじめに亡くなった外務省職員の小山智史さん(39)の背中を刺したとみられています。
その後、重傷となっている45歳の女性を襲い、さらに亡くなった小学6年生の栗林華子さん(11)を切りつけたとみられています。
3人は5メートルほどの間隔を置いて倒れていたということです。岩崎容疑者は3人を襲ったあと、走りながらスクールバスを待っていたほかの16人の小学生を次々と襲い、最後に自殺したということです。
「心の傷が早く癒えるよう祈っています」
この事件で男に刃物で切りつけられた子どものうち、何人かは近くのコンビニエンスストアに逃げ込んでいました。
そのときの状況について、トイレを借りるため店にいたという高校2年の女子生徒は「突然子どもの悲鳴が聞こえたので出ていくと、首などを切られた子ども3人と切られていない5、6人ほどが店の奥でうずくまっていました。けがをした子どもは呆然としていましたが、していない子どもは取り乱し、声を上げて泣いていたので店にいた人たちがなだめて落ち着かせていました。トイレットペーパーを何重にもして止血の手当てをする女性がいたし、私も親と連絡を取りたがっていた子どもに携帯電話を貸してあげました。 子どもたちの心の傷が早く癒えるよう祈っています」と話していました。
「久しぶりに見かけると白髪頭になっていた」
岩崎容疑者の自宅の近所に住む70代の男性は「事件の3日前に近くを通りかかった容疑者を見かけたが、暗い顔でうつむいて、両手にスーパーの袋を持って歩いていた。彼を見たのは、『りゅう君』と呼んでいた子供のころ以来で、久しぶりに見かけると白髪頭になっていて驚いた。最近は会うこともなく、家に住んでいたかどうかも分からないくらいだった」と話していました。
そして「子どものころから実の親ではなくおじとおばの家に住んでいて男女2人のいとこも一緒にいたようだ」と話していました。
尾木直樹さん「顔見えるネットワークを」
教育評論家の尾木直樹さんは「去年6月に出された国のプランでも、登下校の安全のため、スクールバスを使うようにとされている。ここまで丁寧に取り組んでいる学校で事件が起きた衝撃は大きい」と話しています。
そして、「子どもたちが集まるところを警察官がパトロールするなど、犯罪を起こさせない状況を作ることが大事だ。加えて加害者を生まないよう、民生委員や保健師などを活用しながら、顔の見えるネットワークも作らなければならない」と指摘しました。
また、今後の子どもたちの心のケアについては、「自分を責める子どもも出てくるかもしれないが、それは違うということを教えるなど、専門家が支えていく必要がある。自治体の教育委員会と協力して態勢を取ってほしい」と話していました。