逮捕されたのは旅客船「Shrimp of Art」の船長で高松市に住む多田陽介容疑者(45)です。
高松海上保安部によりますと、多田船長は19日午後、修学旅行の一環で瀬戸内海をクルージングしていた、坂出市立川津小学校の6年生ら62人を乗せた旅客船を、岩場の存在などを十分に確認せずに航行させ、香川県坂出市沖の浅瀬に乗り上げて沈没させたとして、業務上過失往来危険の疑いが持たれています。
調べに対して容疑を認めているということです。
海の中で見つかった、沈没していた旅客船の塗料と、同じものとみられる塗料が、現場近くの岩場に付着していたということで、海上保安本部はいきさつを詳しく調べています。
また、国の運輸安全委員会も21日以降、事故の調査を始めるということです。
沈没した旅客船です。海上保安部の潜水士が撮影しました。船は全長が11メートル余りです。(写真提供:高松海上保安部)
平成29年に事故が2件発生
旅客船は香川県坂出市沖の与島と、その北にある岩黒島の間を通る瀬戸大橋を、くぐるように航行していたとみられ、20日午前、瀬戸大橋から東に2キロほど離れた海の中で沈んでいるのが見つかりました。
第6管区海上保安本部によりますと、与島と岩黒島の間は岩場が多く、平成29年には航行中の船が岩場の浅瀬に乗り上げる事故が2件発生しています。
3月には大型船のえい航などに使われる「タグボート」が、5月には重さ800トンの貨物を積んで航行する「はしけ」が、いずれも岩場の浅瀬に乗り上げたということです。
全長50メートル以上の船が瀬戸大橋をくぐる場合、与島と岩黒島の間を航行することは法律で禁じられています。
沈没した旅客船は全長が11メートル余りで航行に制限はありませんでしたが、高松海上保安部は船の大きさに関係なく、この海域を航行する場合は見張りを徹底し、海図を見て十分に安全を確保するよう呼びかけていました。
専門家「全員助かったのは非常にけう」
瀬戸内海の船の安全対策に詳しい、松山市に住む海事補佐人の鈴木邦裕さんは「全員助かったというのは非常にけうなことだと思う。本当だったら犠牲者が出てもおかしくない重大事故だ」と述べました。
鈴木さんによりますと、事故が起きた海域は島と島の間隔が比較的狭い場所があるほか、暗礁が多いという特徴があるものの、事前に航路を定めてそのとおりに航行すれば事故は起きにくく、安全を確保できるということです。
そのうえで「前方の見張りを怠らず、安全運航をするのが第一だ。どんなささいな事故でも起こさないという心構え、特に旅客船の船長はそういう心構えが必要だ」として、旅客船の運航会社などに対し安全対策の基本を徹底してほしいと話しています。
海事補佐人は、船の衝突事故などが起きた時に開かれる海難審判の際に、いわゆる弁護士役を務めます。