輪島わじま 市営しえい住宅じゅうたくで在宅ざいたく避難ひなん続つづける高齢こうれい者しゃ 支援しえん必要ひつようも「大丈夫だいじょうぶ」

輪島わじま市し二勢ふたせ町まちの市営しえい住宅じゅうたくは、70代だい以上いじょうの高齢こうれい者しゃが多おおく暮くらす団地だんちで地震じしんのあと、1か月かげつ以上いじょう、在宅ざいたく避難ひなんを続つづけている人ひとたちがいます。

40世帯せたい余あまりが住すむ棟むねの責任せきにん者しゃを務つとめる大塩おおしお政一まさかずさんによりますと、地震じしんから3週間しゅうかん程度ていどは寝ねたきりの人ひとや、つえをつかないと歩あるけない人ひとも、1人にんで暮くらしていたということです。

大塩おおしおさん自身じしんも地震じしんで倒たおれた家具かぐが右みぎの眉まゆに当にあたってけがをし、針はりをあぶって自分じぶんで縫ぬうほどでしたが、自分じぶんより高齢こうれいの住民じゅうみんの暮くらしぶりを気きにかけ、近ちかくの避難ひなん所しょに届とどいた食べ物たべものや薬くすり、下着したぎなどの物資ぶっしを部屋へやまで届とどけたり、給水きゅうすい車しゃの水みずを代かわりに運はこんだりしているということです。

大塩おおしおさんは、何なんらかの支援しえんが必要ひつようだと感かんじていますが、1月つき20日にちごろ、2次じ避難ひなんの希望きぼう調査ちょうさで同おなじ棟むねにとどまっていた20世帯せたい余あまりを回まわった際さいも、すぐに希望きぼうを出だした住民じゅうみんはわずかだったということです。

大塩おおしおさんは「行き先ゆきさきも期間きかんもわからず避難ひなんするのは、みんな不安ふあんなのではないか。どこにも行いくところがないので、断水だんすいさえ我慢がまんすれば、雨風あめかぜをしのげるここにいようという人ひとも多おおい。『大丈夫だいじょうぶ』ではなく、我慢がまんをしているだけで、みんなよく辛抱しんぼうしていると思おもう」と話はなしていました。

市営しえい住宅じゅうたくでの避難ひなん者しゃ数すう 市しは把握はあくできず

輪島わじま市しによりますと、二勢ふたせ町まちの市営しえい住宅じゅうたくには、地震じしんが起おきる前まえの昨年さくねん末まつの時点じてんで84世帯せたいが住すんでいたということです。

市しは当時とうじ、このうち35世帯せたいが高齢こうれい者しゃ向むけの部屋へやに住すみ、このほかの部屋へやにも高齢こうれい者しゃが住すんでいることは把握はあくしていますが、地震じしんのあと、この市営しえい住宅じゅうたくで、どれくらいの世帯せたいが避難ひなん生活せいかつを送おくっているかは把握はあくできていないということです。

市しは、自宅じたくなど避難ひなん所しょ以外いがいで避難ひなん生活せいかつを送おくっている被災ひさい者しゃに対にたいし、支援しえん情報じょうほうなどを届とどけるため、連絡れんらく先さきなどの登録とうろくを呼よびかけています。

1人にんで暮くらす91歳さいの女性じょせい 厳きびしい避難ひなん生活せいかつ

この市営しえい住宅じゅうたくに1人にんで暮くらす91歳さいの女性じょせいは、耳みみが遠とおく足あしもほとんど動うごかない中なか、厳きびしい避難ひなん生活せいかつを送おくっています。

女性じょせいは、地震じしんで家いえじゅうの家具かぐが倒たおれて散乱さんらんしてしまいましたが、足あしがほとんど動うごかないため、自力じりきでは片かたづけができず、心配しんぱいして様子ようすを見みに来きた隣となりの70代だいの住民じゅうみんに代かわりに片かたづけてもらったということです。

県けん外がいに住すむ家族かぞくがたびたび訪おとずれて、水みずなどの物資ぶっしを届とどけてくれるほか、ヘルパーが2、3日にちおきに食事しょくじなどの世話せわをしてくれていますが、断水だんすいが続つづく中なか、トイレを我慢がまんしておなかが痛いたくなり、おむつが必要ひつようになることもあったということです。

水洗トイレすいせんといれを載のせた「トイレトレーラー」が近所きんじょにやって来やってきたときも、段差だんさがあったため、利用りようするのを諦あきらめたということです。

地震じしんのあとは補聴器ほちょうきがほとんど使つかえなくなり、電話でんわやテレビの音おとも全まったく聞きこえなくなったということで、「電話でんわでのおしゃべりができず、話し相手はなしあいてがいなくてさみしい。でも、私わたしは住すむ家いえもあるし、皆みなさんに助たすけてもらっているので本当ほんとうにありがたいです」と話はなしています。

在宅ざいたく避難ひなん続つづける80代だい女性じょせい “気きが引ひけ物資ぶっし取とりにいけない”

市営しえい住宅じゅうたくに1人にんで暮くらす86歳さいの女性じょせいは、地震じしんのあと、電気でんきが使つかえるようになるまでのおよそ1週間しゅうかん、家いえにあったせんべいなどを食たべてしのぎました。

団地だんち内ないに設もうけられた避難ひなん所しょには、食料しょくりょうなどの支援しえん物資ぶっしが定期ていき的てきに届とどきますが、避難ひなん所しょには家いえが倒壊とうかいして住すめなくなった人ひともいるため、気きが引ひけて物資ぶっしを受け取うけとりにいけないといいます。

趣味しゅみはソフトバレーで、40年ねん以上いじょう前まえから一緒いっしょに汗あせを流ながしてきた仲間なかまたちがいましたが、地震じしんのあとは、ほとんどが輪島わじま市しを離はなれ連絡れんらくがとれなくなりました。

断水だんすいが続つづいているため、地震じしんのあとは一いち度どもお風呂ふろに入いれていないといいます。

毎日まいにち飲のんでいる血圧けつあつを抑おさえる薬くすりや、ストレスを和やわらげる薬くすりが足たりなくなると、亀裂きれつや段差だんさがある道みちを往復おうふく30分ふんかけて歩あるき、かかりつけの診療しんりょう所しょに行いっています。

それでも女性じょせいは今いまの暮くらしについて、「別べつに大変たいへんということはなく、大丈夫だいじょうぶ。戦争せんそう中ちゅうよりもひどい経験けいけんをしたけれど、生いきているだけでよかったと思おもっています。畳たたみの上うえに横よこになって寝ねられるだけありがたいと思おもわなければ」と話はなしています。

専門せんもん家か “本当ほんとうに「大丈夫だいじょうぶ」か フォローが求もとめられる”

福祉ふくし防災ぼうさい学がくが専門せんもんの同志社どうししゃ大学だいがくの立木たちき茂雄しげお教授きょうじゅは「『大丈夫だいじょうぶではないです』と言いうことは、自分じぶんを周まわりよりも弱よわい立場たちばにあると認みとめることになる。だから皆みなさん『大丈夫だいじょうぶです』と答こたえていて、自分じぶんの尊厳そんげんを守まもるために、極きわめて理りにかなった反応はんのうだ」と指摘してきしています。

そのうえで、「『大丈夫だいじょうぶです』と答こたえる気持きもちに思おもいをはせながら、背後はいごにある困こまり事ごとや支援しえんの必要ひつよう性せいにアンテナを張はることができる福祉ふくしの専門せんもん職しょくの方々かたがたが被災ひさい者しゃと接触せっしょくし、本当ほんとうに大丈夫だいじょうぶかをフォローしていくことが何なにより求もとめられている」と話はなしています。