日本新聞: 踏切の視覚障害者向けブロック半年で設置2か所なぜ進まない

踏切ふみきりの視覚しかく障害しょうがい者しゃ向むけブロック半年はんとしで設置せっち2か所かしょなぜ進すすまない

Dec 3, 2022 17:12

Furigana

視覚しかく障害しょうがい者しゃが踏切ふみきり内ないで列車れっしゃにはねられ死亡しぼうする事故じこが相次あいついだことを受うけ、国くには、踏切ふみきり内ないに視覚しかく障害しょうがい者しゃ向むけの誘導ゆうどう用ようのブロックを設置せっちするよう各地かくちに促うながしましたが、この半年はんとし間かんに全国ぜんこくで2か所かしょしか設置せっちされていないことが分わかりました。自治体じちたいなどは「国くにが詳細しょうさいな設置せっち基準きじゅんを示しめさず設置せっちしたくてもできない」などと批判ひはんしています。

視覚しかく障害しょうがい者しゃの踏切ふみきり内ないの事故じこは去年きょねん8月つき、静岡しずおか県けんで20代だいの男性だんせいが列車れっしゃにはねられ死亡しぼうしたほか、ことし4月つきにも奈良なら県けんで50代だいの女性じょせいが死亡しぼうする事故じこが起おきました。

いずれの事故じこも、踏切ふみきり付近ふきんの自分じぶんの立たち位置いちが分わからなかったことが原因げんいんとみられることから、国土こくど交通こうつう省しょうはことし6月つき、視覚しかく障害しょうがい者しゃが立たち位置いちを認識にんしきして安全あんぜんに踏切ふみきりを渡わたるための誘導ゆうどう用ようのブロックを設置せっちするよう促うながすガイドラインを作成さくせいし、全国ぜんこくの鉄道てつどう会社かいしゃや自治体じちたいに通知つうちしました。

しかし、NHKが全国ぜんこく135の鉄道てつどう会社かいしゃや自治体じちたいに取材しゅざいした結果けっか、ガイドライン作成さくせい後ごの半年はんとし間かんに踏切ふみきり内ないにブロックが設置せっちされたのは、大阪おおさか府内ふないの2か所かしょにとどまっていることが分わかりました。

設置せっちが進すすまない理由りゆうは？自治体じちたい「国くにが基準きじゅんを示しめすまでは…」

静岡しずおか市しは、視覚しかく障害しょうがい者しゃの利用りようが多おおい市しの中心ちゅうしん部ぶの踏切ふみきりについて、ブロックの設置せっちを検討けんとうしていますが、今年度こんねんど中ちゅうの設置せっちは難むずかしいとしています。

主おもな理由りゆうについて、市しの担当たんとう者しゃは、踏切ふみきり内ないに設置せっちする設備せつびがほかの自治体じちたいと別べつのものになると逆ぎゃくに危険きけんになる可能かのう性せいもあるため、国くにが統一とういつ的てきな基準きじゅんを示しめすまで設置せっちできないためとしています。

静岡しずおか市し道路どうろ保全ほぜん課かの田中たなか朋彦ともひこ係長かかりちょうは「統一とういつ的てきに全国ぜんこくどこに行いっても、この形状けいじょうを踏ふめば、踏切ふみきりの中なかだと分わかることが事故じこの防止ぼうしにつながるので、市し独自どくじのものは今いまのところ考かんがえていない。国くにで検討けんとうするとのことだが、どのような形状けいじょうのものを使つかいましょうと指示しじがあると、スムーズに施工しこうに移うつれる」と話はなしていました。

この踏切ふみきりについて、視覚しかく障害しょうがい者しゃの団体だんたいはできるだけ早はやくブロックを設置せっちするよう、市しなどに要望ようぼうしています。

静岡しずおか県けん視覚しかく障害しょうがいバリアフリー推進すいしん協議きょうぎ会かいの蓮池はすいけ悟志さとし代表だいひょう委員いいんは「去年きょねんは地元じもとで、ことしは奈良ならで事故じこがあり、あのような事故じこがまた起おきて欲ほしくないという気持きもちでお願おねがいしている。一刻いっこくも早はやくなんとかしてほしい」と話はなしていました。

すでに設置せっちされた場所ばしょでも不安ふあんが…

すでにブロックが設置せっちされている大阪おおさか・豊中とよなか市しの踏切ふみきりでは先月せんげつ、視覚しかく障害しょうがい者しゃが参加さんかしてどれだけ安全あんぜんに歩あるくことができるかを確認かくにんする実証じっしょう実験じっけんが行おこなわれました。

視覚しかく障害しょうがい者しゃ20人にんが参加さんかし、踏切ふみきりの手前てまえにある点字てんじブロックや、踏切ふみきり内ないにある、別べつの形状けいじょうをした誘導ゆうどう用ようのブロックを踏ふんで、自分じぶんの今いまの位置いちを確認かくにんしながら、踏切ふみきりを渡わたっていました。

参加さんかした女性じょせいは「横断おうだん歩道ほどうと比くらべ、踏切ふみきりは分わかりづらく不安ふあんが大おおきいので、設置せっちされていたら必かならず使つかうと思おもう。幅広はばひろく設置せっちしてもらえると気付きづきやすくありがたい」と話はなしていました。

一方いっぽうで、横断おうだん中ちゅうに踏切ふみきりの警報けいほう音おんが聞きこえると怖こわくて焦あせってしまい、ブロックだけで冷静れいせいに判断はんだんできるか不安ふあんだなどという意見いけんも聞きかれ、視覚しかく障害しょうがい者しゃの支援しえん団体だんたいは、国くにも現地げんち調査ちょうさなどを行おこなうべきだとしています。

日本にっぽん歩行ほこう訓練くんれん士し会かいの古橋ふるはし友則とものり会長かいちょうは「現場げんばには会議かいぎなどでは見みえない課題かだいが多おおくあると感かんじている。国くにも、こうした実証じっしょう実験じっけんなどで、現場げんばの生なまの声こえを確認かくにんしながら施策しさくやガイドラインに反映はんえいしてほしい」と話はなしていました。

ガイドライン作成さくせい後ご初はじめての検討けんとう会議かいぎも結論けつろん出でず

ことし6月つきにガイドラインが作成さくせいされて以降いこう、初はじめてとなる国土こくど交通こうつう省しょうの検討けんとう会議かいぎが2日にちに開ひらかれました。会議かいぎには、国くにの担当たんとう者しゃのほか、視覚しかく障害しょうがい者しゃの団体だんたいやバリアフリーの専門せんもん家かなどが出席しゅっせきしました。

国くにはガイドラインで、踏切ふみきり内ないに設置せっちするブロックについて、表面ひょうめんに凹凸おうとつのついた誘導ゆうどう表示ひょうじ等とうで、その形状けいじょうは踏切ふみきり手前てまえのものとは異ことなることが望のぞましいと記しるしていますが、具体ぐたい的てきな形状けいじょうなどの基準きじゅんは示しめしていません。理由りゆうについて「有効ゆうこう性せいの根拠こんきょが不十分ふじゅうぶんのまま示しめすことはできないため」としています。

会議かいぎでは、実際じっさいの踏切ふみきりで実験じっけんするなど全国ぜんこく的てきな基準きじゅんを作つくるための国くにの調査ちょうさや研究けんきゅうが足たりないという意見いけんや、ブロックだけではなく音おとなどほかの手段しゅだんも検討けんとうすべきなどといった意見いけんが出だされましたが、設備せつびの設置せっち基準きじゅんなどについては今後こんご、改あらためて話し合はなしあうことになりました。

国土こくど交通こうつう省しょうによりますと、この半年はんとし間かん、国くにによる踏切ふみきりでの実証じっしょう実験じっけんなどは行おこなっていないということです。

国土こくど交通こうつう省しょうの担当たんとう者しゃは「国くにとしてはできるだけ間まをあけずに議論ぎろん、準備じゅんびしてきょう会議かいぎを開ひらいたと考かんがえている。会議かいぎのメンバーから、新あたらしい基準きじゅんは十分じゅうぶんに議論ぎろんを尽つくすべきで、拙速せっそくに決きめるべきではないという意見いけんもあったので、意見いけんを伺うかがうところは伺うかがうという手続てつづきを踏ふんだ上うえで、スピード感かんを持もって議論ぎろんを積み重つみかさねて今後こんごの対応たいおうを示しめしたい」と話はなしています。