Japanese News: 増える？減る？高齢者人口・特養入所希望者数の今後は Q＆A

入所にゅうしょを待まつ待機たいき者しゃが多おおく「なかなか入いれない」と言いわれてきた介護かいご施設しせつ、特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホーム。

都市とし部ぶを中心ちゅうしんに依然いぜん、多おおくの高齢こうれい者しゃが入所にゅうしょを待まつ一方いっぽうで、人口じんこう減少げんしょうが進すすみ、高齢こうれい者しゃの人口じんこうも減へり始はじめている地域ちいきでは、ベッドの空あきが出でるのを懸念けねんする施設しせつも出でてきています。人口じんこう減少げんしょう時代じだいの「特とく養よう」の実情じつじょうをQ＆Aでまとめました。

Q1.「特とく養よう」ってなかなか入いれないのでは？

特とくに大だい都市とし部ぶでは、入所にゅうしょを希望きぼうする高齢こうれい者しゃが依然いぜんとして多おおい状態じょうたいが続つづいています。厚生こうせい労働ろうどう省しょうは特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームへの入所にゅうしょを希望きぼうする人ひとについて3年ねんに1度ど調査ちょうさしていて、2022年ねん4月つき時点じてんの調査ちょうさでは全国ぜんこく1018の自治体じちたいから回答かいとうがありました。

それによりますと、入所にゅうしょ希望きぼう者しゃはおよそ27万まん5000人にんでした。前回ぜんかい、2019年ねんの調査ちょうさからおよそ5万まん人にん減少げんしょうしていますが、依然いぜん多おおくの人ひとが入所にゅうしょを待機たいきしている状態じょうたいです。

このうち全国ぜんこくで最もっとも多おおい2万まん3694人にんに上のぼるのは東京とうきょう都とで3月つき下旬げじゅん、板橋いたばし区くの住宅じゅうたく地ちでは新あらたな特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームの建設けんせつが進すすめられていました。

建設けんせつしているのはこれまで隣となりの埼玉さいたま県けんで特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームなどを運営うんえいしてきた社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんで、今回こんかい初はじめて都内とないに進出しんしゅつしたということです。

施設しせつを運営うんえいする社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじん「大樹たいじゅ会かい」の井上いのうえ直樹なおき理事りじ長ちょうは「東京とうきょう都とがとにかく足たりないと聞きき、埼玉さいたまに一番いちばん近ちかい板橋いたばし区くだったので手てを挙あげました。この施設しせつで良よかったと納得なっとくしてもらえるような施設しせつづくりをしていきたい」と話はなしていました。

Q2. 人口じんこうが減へる地域ちいきでは？

人口じんこうが減少げんしょうする地域ちいきの特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームの中なかには、今後こんごの経営けいえいに懸念けねんを抱かかえているところもあります。およそ7500人にんが暮くらす石川いしかわ県けん穴水あなみず町まちの人口じんこうは過去かこ10年間ねんかんでおよそ20％にあたる2000人にん減少げんしょうし、このうち75歳さい以上いじょうの後期こうき高齢こうれい者しゃもおよそ150人にんとなりました。

町まちにあるただひとつの特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホーム「能登のと穴水あなみず聖きよし頌園えん」では入所にゅうしょ希望きぼう者しゃが10年ねん前まえには70人にんほどいたということですが、2022年ねん4月つき時点じてんの町まちの調査ちょうさでは15人にんとなりました。

施設しせつでは、今後こんごも入所にゅうしょを申し込もうしこむ高齢こうれい者しゃは減少げんしょうすると見込みこんでいて、ベッドに空あきが出でるようになって経営けいえいが維持いじできなくなった場合ばあい、経済けいざい的てきに民間みんかんの施設しせつには入いれない高齢こうれい者しゃが行き場いきばを失うしなうおそれもあるとして懸念けねんを強つよめています。

施設しせつ長ちょうの殿しんがり田和たわ博ひろしさんは「経済けいざい的てきに強つよくない方ほうもいらっしゃいますし、町まちの教育きょういくや医療いりょうと同おなじインフラの一環いっかんとして重要じゅうようで、次つぎの行き先ゆきさきのない田舎いなかで施設しせつがなくなると、かなりのショックだと思おもいます。特とく養ようだけでなく介護かいご施設しせつは本当ほんとうに過渡かと期きに来きている」と話はなしていました。

Q3. 後期こうき高齢こうれい者しゃの減少げんしょう、具体ぐたい的てきなデータは？

高齢こうれい者しゃの人口じんこうは地域ちいきごとにどのように推移すいいしてきたのか、NHKは住民じゅうみん基本きほん台帳だいちょうのデータを基もとに5年ねんごとの変化へんかを分析ぶんせきしました。特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームの入所にゅうしょ者しゃの92.9％を占しめる、75歳さい以上いじょうの「後期こうき高齢こうれい者しゃ」の人口じんこうが減少げんしょうした自治体じちたいを見みてみます。

それによりますと、2007年ねんから2012年ねんまでの5年間ねんかんに後期こうき高齢こうれい者しゃの人口じんこうが減少げんしょうした自治体じちたいは全国ぜんこくでは44でした。

それが、2017年ねんから去年きょねん（2022年ねん）までの5年間ねんかんでは、後期こうき高齢こうれい者しゃの人口じんこうが減少げんしょうした自治体じちたいは672と、全体ぜんたいの4割わり近ちかくを占しめ、2012年ねんまでの5年間ねんかんと比くらべ15倍ばい以上いじょうに増ふえました。

地域ちいき別べつでは、北海道ほっかいどうや東北とうほく、北陸ほくりく、山陰さんいん、四国しこく、九州きゅうしゅうなどの山間さんかん部ぶを中心ちゅうしんに減少げんしょうした自治体じちたいが広ひろがっています。

さらに今後こんごどうなるのか、後期こうき高齢こうれい者しゃの将来しょうらいの推計すいけい値ちも分析ぶんせきしました。国立こくりつ社会しゃかい保障ほしょう・人口じんこう問題もんだい研究所けんきゅうじょが5年ねんごとにまとめている「将来しょうらい推計すいけい人口じんこう」で、最新さいしんとなる2017年ねん発表はっぴょうのデータで後期こうき高齢こうれい者しゃの人口じんこうが減少げんしょうする自治体じちたいを見みてみます。

それによりますと、2040年ねんまでの自治体じちたい数すう1371は、今回こんかい分析ぶんせきした推計すいけい値ちの無ない福島ふくしま県けんの自治体じちたいを除のぞく全国ぜんこく1682の自治体じちたいのうち8割わり以上いじょうにあたり、東京とうきょうなどの大だい都市としや県庁けんちょう所在地しょざいちなど地方ちほうの都市とし部ぶを除のぞくほとんどの自治体じちたいで減少げんしょうしている状況じょうきょうとなっています。

Q4. 今後こんごどうなる？各かく自治体じちたいの見込みこみは

前述ぜんじゅつした厚生こうせい労働ろうどう省しょうの調査ちょうさで、入所にゅうしょ希望きぼう者しゃの今後こんごの見込みこみについて自治体じちたいに尋たずねたところ、回答かいとうは以下いかのような内訳うちわけになりました。

▼「増ふえる」391自治体じちたい（38.4％）

▼「大おおきな増減ぞうげんはない」307自治体じちたい（30.2％）

▼「減少げんしょうする」75自治体じちたい（7.4％）

▼「わからない」233自治体じちたい（22.9％）

このうち「減少げんしょうする」と答こたえた自治体じちたいに主おもな理由りゆうをたずねたところ、最もっとも多おおい50の市町村しちょうそんが「要よう介護かいごの利用りよう者しゃ数すうが減少げんしょうしていくため」と答こたえました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、大だい都市とし部ぶでは依然いぜん多おおくの高齢こうれい者しゃが入所にゅうしょを待まつ一方いっぽうで、過疎かそ地域ちいきなどでは高齢こうれい者しゃの人口じんこうが減へり始はじめ、介護かいごが必要ひつような人ひとの数かずも減へっていることが背景はいけいにあるということです。

Q5. 高齢こうれい者しゃ人口じんこうの減少げんしょう　地域ちいきへの影響えいきょうは？

高齢こうれい者しゃの減少げんしょうは、地域ちいきの経済けいざいにも影響えいきょうを及およぼしています。

石川いしかわ県けん穴水あなみず町まちの中心ちゅうしん部ぶにあるスーパーでは客きゃくの8割わりを高齢こうれい者しゃが占しめていますが、最近さいきんは、いつも来きていた客きゃくが施設しせつに入はいったり亡なくなったりといった話はなしを聞きくことが増ふえ、客足きゃくあしや売り上うりあげは年々ねんねん減少げんしょうしているということです。

店みせでは従業じゅうぎょう員いんの数かずを減へらし経費けいひを削減さくげんするなど経営けいえい努力どりょくを続つづけていますが、限界げんかいを感かんじていると言いいます。

スーパーの社長しゃちょう、谷口たにぐち順じゅん也さんは「人口じんこう減げんによる売上うりあげ減少げんしょうは仕方しかたないと割り切わりきりながらも、本当ほんとうに来年らいねんやっていけるかなというのが正直しょうじきなところで、当面とうめん存続そんぞくしていくことに精せいいっぱいです」と話はなしていました。

また、第だい三さんセクター「のと鉄道てつどう」の駅前えきまえにある衣料いりょう品ひん店てんも、売上うりあげはおよそ15年ねん前まえの半分はんぶん近ちかくに減少げんしょうしたと言いいます。

去年きょねん（2022年ねん）からことしにかけての冬ふゆの間まだけでもいつも来きていた古ふるくからの客きゃくの3人にんが転倒てんとうして骨折こっせつしたために入院にゅういんしたということです。

住み慣すみなれた地域ちいきを離はなれて入院にゅういんしたり施設しせつに入所にゅうしょしたりする高齢こうれいの客きゃくが増ふえるのに伴ともなって、この店みせでは介護かいごを受うける際さいに脱ぬいだり来きたりしやすい前ぜん開ひらきの下着したぎやシャツが多おおく売うれるようになっているということです。

店みせでは、客きゃくが急きゅうに入院にゅういんして遠方えんぽうで暮くらす家族かぞくがすぐ駆かけつけられずに必要ひつような衣類いるいを用意よういできない場合ばあいなど、病院びょういんに新あたらしい下着したぎなどを届とどけることもあり、長年ながねんの客きゃくとのつきあいで服ふくのサイズや色いろの好このみも知しっているため迅速じんそくに対応たいおうできるということです。

店長てんちょうの小林こばやし英夫ひでおさんは「地域ちいきでお互おたがいの人間にんげん性せいまでわかるような付き合つきあいをしてきたので、こういった対応たいおうができると思おもっています。この店みせを必要ひつようとする人ひとがいるかぎりは、細々こまごまとでも続つづけていけたらと思おもいます」と話はなしていました。

Q6. 今後こんご懸念けねんされる状況じょうきょうについて専門せんもん家かは？

今後こんご懸念けねんされる状況じょうきょうについて、介護かいごや人口じんこう問題もんだいなどに詳くわしい政策せいさく研究けんきゅう大学院だいがくいん大学だいがくの小野おの太一たいち教授きょうじゅに聞ききました。

小野おの教授きょうじゅは「高齢こうれい者しゃの人口じんこうは国くにや都道とどう府県ふけんの単位たんいで見みると今後こんごも増ふえる想定そうていだが、特定とくていの地域ちいきごとに見みるとすでに減へっている地域ちいきがあり、もう少もうすこし細こまかな視点してんで特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームなどの持続じぞく可能かのうな策さくを検討けんとうする必要ひつようがある」と指摘してきしています。

その上うえで「今後こんご、経営けいえいを維持いじできない介護かいご施設しせつが同おなじ地域ちいきで複数ふくすう発生はっせいして、住民じゅうみんが必要ひつようなサービスを受うけられなくなるといった事態じたいは避さけなければならない。地域ちいきの医療いりょう機関きかんについては将来しょうらいの人口じんこう減少げんしょうを見据みすえて異ことなる法人ほうじん間かんでの再編さいへんや統合とうごうの調整ちょうせいが進すすめられたが、介護かいごの分野ぶんやでも地域ちいきによっては検討けんとうの必要ひつようがあり、国くにや県けんが主導しゅどうして提示ていじしていく必要ひつようがある」と指摘してきしました。