アーダーン首相は日本時間の午後3時半ごろ記者会見し、過激な思想を持った容疑者による「テロ攻撃だ」としたうえで、少なくとも40人が死亡し、20人以上が重傷を負ったことを明らかにしました。
事件は少なくとも2か所のモスクで起き、警察はこれまでに男3人と女1人の身柄を拘束しました。
事件を受けて、オーストラリアのモリソン首相は「拘束されたうちの1人はオーストラリア生まれだと確認した」と述べ、事件の捜査に協力する考えを示しました。
ニュージーランドの警察は、事件が収束したかどうかはわからないとして、市民に対して、引き続き安全な場所にとどまるよう呼びかけています。
さらに、警察は、容疑者が使っていた車からいくつもの手製爆弾が見つかり、軍が爆発しないよう処置したことも明らかにしました。
現地の有力紙「ニュージーランド・ヘラルド」は、モスクから逃げ出した男性の話として、「犯人は白人の男で、軍服のような服を着て、足にいくつもの弾倉をくくりつけていた」と伝えています。
クライストチャーチにある病院で撮影された映像には、担架で人が次々と運び込まれる様子が映っていて、中にはぐったりとして動かない人もいます。
クライストチャーチにある日本の領事事務所によりますと、これまでのところ日本人が事件に巻き込まれたという情報は入っていません。領事事務所は引き続き情報収集を続けるとしています。
ムスリム団体が警戒呼びかけ
事件を受けて、ニュージーランドのイスラム教徒の団体、国際ムスリム協会は声明を出し、イスラム教徒に対して、礼拝を終えたあとはすぐにモスクを離れ、不必要に施設の外にとどまらないよう、警戒を呼びかけています。
また、ニュージーランドの最大都市・オークランドのムスリム協会は声明で、「すさまじいショックと悲しみと怒りを感じる」と述べたうえで、「マイノリティーに向けられた憎しみと闘うために十分警戒してほしい。偏見と不寛容が無害な人の命を脅かしている」として、連帯を呼びかけました。
日本の旅行会社に被害の情報なし
事件を受けて、日本の旅行会社では、現地にいる観光客の安全確認を進めています。これまでのところ事件に巻き込まれた人の情報はありません。
このうち、日本旅行では、個人旅行や団体旅行でクライストチャーチを訪れている人が51人いて、現地の係員が電話で全員の無事を確認しました。
また、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムも、現地にいる顧客全員の無事を確認しています。
また、JTBとエイチ・アイ・エスも、現地の係員を通して顧客の安否を確認していて、現在のところ事件に巻き込まれた人の情報は無いということです。
菅官房長官「邦人被害の具体的情報なし」
菅官房長官は午後の記者会見で、「犠牲者とそのご家族の方々に心から哀悼の意を表するとともに、負傷された方々にお見舞い申し上げる。ニュージーランド国民に心から連帯の意を表する」と述べました。
また、「邦人被害の状況は引き続き確認中だが、現時点まで具体的な情報には接していない。政府としては、事件発生を受け、在クライストチャーチ領事事務所を通じ、在留邦人や『たびレジ』の登録者に対し、メールを出して注意喚起を行っている」と述べました。
銃撃の容疑者は3人 監視対象含まれず
ニュージーランドのアーダーン首相は、身柄を拘束した4人のうち、3人が銃撃に関わったと断定したと明らかにしました。
このうち、1人が主犯格で、2人が事件に関わったとしています。
容疑者の名前は、ニュージーランドのテロの監視対象には含まれていなかったということです。
また、すでに身柄を拘束した以外にも犯行に関わった人物がいる可能性もあるとして、捜査を継続していると話しました。
一方、6段階に分けたテロに対する警戒レベルを2番目に高いレベルまで引き上げたことも明らかにしました。
銃乱射の動画か NZ政府は削除要請
この事件では、銃を乱射する様子を撮影したとみられる動画がSNSや動画投稿サイトに投稿され、ニュージーランド政府は削除を要請するとともに、シェアしないよう呼びかけています。
問題の動画にはモスクのような場所で銃を乱射する様子が撮影されていますが、誰がいつどこで撮影したかは確認されていません。
これについて、ニュージーランドのアーダーン首相は会見で、「動画をシェアしないよう求める」と述べて、動画を拡散させないよう訴えました。
また、警察もツイッターに「事件に関係する極めて凄惨な映像がオンライン上で出回っている」としたうえで、「私たちはこの映像の削除に取り組んでおり、シェアしないよう強く求める」と投稿しました。
この動画について、地元のメディアは、容疑者がインターネット上で犯行の状況を中継した際の映像だと伝えています。