御嶽山みたけさんの教訓きょうくん 生いかしたいものの… 全国ぜんこくの火山かざん23％に課題かだい

ＮＨＫえぬえいちけい 全国ぜんこくの火山かざんの地元じもとに取材しゅざい

５ご年ねん前まえの御嶽山みたけさんの噴火ふんかを教訓きょうくんに、気象庁きしょうちょうは、火山かざん活動かつどうに変化へんかがあった場合ばあいには、「臨時りんじ」と明記めいきした解説かいせつ情報じょうほうを発表はっぴょうすることにしていて、国くには、火山かざん周辺しゅうへんの自治体じちたいなどでつくる「火山かざん防災ぼうさい協議きょうぎ会かい」に対にたいし、この情報じょうほうが発表はっぴょうされた際さいの周知しゅうち方法ほうほうなどを事前じぜんに検討けんとうするよう求もとめています。

ところが、気象庁きしょうちょうが常つねに監視かんししている全国ぜんこくの47の火山かざんの火山かざん防災ぼうさい協議きょうぎ会かいなどをＮＨＫえぬえいちけいが取材しゅざいしたところ、およそ23％にあたる11の火山かざんでは、登山とざん者しゃや住民じゅうみんへの周知しゅうち方法ほうほうが具体ぐたい的てきに決きめられていないことがわかりました。

理由りゆうとしては、「検討けんとう中ちゅう」が最もっとも多おおく、中なかには「必要ひつよう性せいを感かんじない」、「噴火ふんか警戒けいかいレベルのような防災ぼうさい対応たいおうが示しめされておらず、どう受け止うけとめればいいかわからない」といった戸惑とまどいの声こえもありました。

また、36の火山かざんでは、周知しゅうち方法ほうほうが決きめられているとしているものの、このうち14の火山かざんでは、自治体じちたいの防災ぼうさい対応たいおうを示しめした「避難ひなん計画けいかく」などに周知しゅうち方法ほうほうが記載きさいされておらず、継続けいぞく的てきに運用うんようできるのか疑問ぎもんが残のこりました。

火山かざん防災ぼうさいに詳くわしい山梨やまなし大学だいがくの秦はた康範やすのり准じゅん教授きょうじゅは「臨時りんじの情報じょうほうには、噴火ふんか警戒けいかいレベルのような画一かくいつ的てきな防災ぼうさい対応たいおうは示しめされていないので、自治体じちたいがケースバイケースで判断はんだんしなければいけない。しかし自治体じちたいは専門せんもん的てきな知識ちしきやノウハウが不足ふそくしているのが現状げんじょうで、負担ふたんは大おおきく、対応たいおうの遅おくれにつながっている。国くには、こうした実情じつじょうを十分じゅうぶん理解りかいしたうえで、支援しえんを考かんがえる必要ひつようがある」と指摘してきしています。

周知しゅうち方法ほうほうが具体ぐたい的てきに決きめられていない 11火山かざん

ＮＨＫえぬえいちけいが、火山かざん防災ぼうさい協議きょうぎ会かいなどに取材しゅざいしたところ、「臨時りんじ」の解説かいせつ情報じょうほうの周知しゅうち方法ほうほうが具体ぐたい的てきに決きめられていなかったのは、以下いかの11の火山かざんです。

北海道ほっかいどうの樽前たるまえ山さん、倶多た楽らく、

長野ながのと群馬ぐんまの県境けんきょうにある浅間あさま山さん、

富山とやま県けんの弥陀ヶ原みだがはら、

静岡しずおか県けんの伊豆いずにある伊豆いず東部とうぶ火山かざん群ぐん、

伊豆いず諸島しょとうの新島にいじま、神津島こうづしま、三宅みやけ島とう、八丈はちじょう島とう、青ヶ島あおがしま、

鹿児島かごしま県けんの薩摩さつま硫黄いおう島とうです。

周知しゅうち方法ほうほう決きめるも避難ひなん計画けいかくなど未み記載きさい 14火山かざん

一方いっぽう、周知しゅうちの方法ほうほうは決きめられているとしたものの、自治体じちたいの防災ぼうさい対応たいおうを示しめす「避難ひなん計画けいかく」などに記載きさいされていないのは、以下いかの14の火山かざんです。

北海道ほっかいどうのアトサヌプリと雌阿寒岳めあかんだけ、大だい雪山ゆきやま、有珠うす山さん、恵山えさん、

青森あおもりと秋田あきたの県境けんきょうにある十じゅう和田わだ、

秋田あきたと岩手いわての県境けんきょうにある秋田あきた駒ヶ岳こまがだけ、

秋田あきた県けんの秋田あきた焼山やけやま、

宮城みやぎと山形やまがたの県境けんきょうにある蔵王ざおう山さん、

群馬ぐんま県けんの草津くさつ白根しらね山さん、

新潟にいがたと長野ながのの県境けんきょうにある新潟にいがた焼山やけやま、

伊豆いず大島おおしま、

鹿児島かごしまと宮崎みやざきの県境けんきょうにある霧島きりしま山さん、

鹿児島かごしま県けんの口永良部島くちえらぶじま。

周知しゅうち方法ほうほう決きめ避難ひなん計画けいかくなど記載きさい 22火山かざん

「避難ひなん計画けいかく」などに臨時りんじの解説かいせつ情報じょうほうの周知しゅうち方法ほうほうを明記めいきしていたのは、以下いかの22の火山かざんです。

北海道ほっかいどうの十勝とかち岳だけ、北海道ほっかいどう駒ヶ岳こまがだけ、

青森あおもり県けんの八甲田山はっこうださん、岩木いわき山さん、

岩手いわて県けんの岩手いわて山さん、

宮城みやぎと岩手いわて、それに秋田あきたの県境けんきょうにある栗駒くりごま山さん、

山形やまがたと秋田あきたの県境けんきょうにある鳥海とりうみ山さん、

福島ふくしまと山形やまがたの県境けんきょうにある吾妻あづま山さん、

福島ふくしま県けんの安達あだち太良たら山さん、磐梯ばんだい山さん、

栃木とちぎと福島ふくしまの県境けんきょうにある那須なす岳たけし、

栃木とちぎと群馬ぐんまの県境けんきょうにある日光にっこう白根しらね山さん、

長野ながのと岐阜ぎふの県境けんきょうにある御嶽山みたけさん、焼岳やけだけ、乗鞍のりくら岳たけし、

石川いしかわと岐阜ぎふの県境けんきょうにある白山はくさん、

静岡しずおかと山梨やまなしの県境けんきょうにある富士ふじ山さん、

神奈川かながわ県けんの箱根はこね山さん、

大分おおいた県けんの鶴見つるみ岳たけし・伽藍がらん岳だけ、九重山くじゅうさん、

熊本くまもと県けんの阿蘇あそ山さん、

長崎ながさき県けんの雲仙うんぜん岳だけです。

鹿児島かごしま県けんの桜さくら島とうと諏訪之瀬島すわのせじまは、12年ねん前まえに噴火ふんか警戒けいかいレベルが導入どうにゅうされて以降いこう、レベルが１いちになったことがないため、取材しゅざいの対象たいしょうから外はずしています。

「臨時りんじ」解説かいせつ情報じょうほう とは

火山かざん活動かつどうの変化へんかを示しめす「臨時りんじ」の解説かいせつ情報じょうほうは、御嶽山みたけさんの噴火ふんかのよくとしから発表はっぴょうされるようになりました。

５ご年ねん前まえ、御嶽山みたけさんでは、噴火ふんか警戒けいかいレベルが最もっとも低ひくい１いちだったものの、火山かざん性せい地震じしんが増加ぞうかしていたため、気象庁きしょうちょうは、噴火ふんかの16日にち前まえと15日にち前まえ、そして11日にち前まえの、合あわせて３さん回かいにわたって、「解説かいせつ情報じょうほう」という火山かざんの活動かつどう状況じょうきょうを示しめす情報じょうほうを発表はっぴょうしていました。

しかし、この情報じょうほうは、登山とざん者しゃなどに十分じゅうぶんに伝つたわっていませんでした。

このため気象庁きしょうちょうは、噴火ふんか警戒けいかいレベルの引き上ひきあげには至いたらないものの、「火山かざん性せい地震じしんの増加ぞうか」や「火山かざんガスの増加ぞうか」、「地殻ちかく変動へんどう」など火山かざん活動かつどうに通常つうじょうと異ことなる変化へんかがあった場合ばあい、「臨時りんじ」と明記めいきした解説かいせつ情報じょうほうを発表はっぴょうすることになりました。

「臨時りんじ」の解説かいせつ情報じょうほうは、噴火ふんかのよくとしの平成へいせい27年ねん５月ごがつから運用うんようが始はじまり、26日にちまでに全国ぜんこく16の火山かざんで合あわせて268回かい、発表はっぴょうされています。

ことしも、九州きゅうしゅうの阿蘇山あそさんや霧島きりしま連山れんざんの新燃岳しんもえだけ、九重山くじゅうさん、神奈川かながわ県けんの箱根はこね山さん、それに、東北とうほくの吾妻あづま山さんに発表はっぴょうされています。

「臨時りんじ」解説かいせつ情報じょうほう発表はっぴょうで対応たいおうに苦慮くりょした自治体じちたい

実際じっさいに地元じもとの火山かざんで「臨時りんじ」の解説かいせつ情報じょうほうが発表はっぴょうされ、対応たいおうに苦慮くりょした自治体じちたいがあります。北海道ほっかいどうの中央ちゅうおうに位置いちする「十勝とかち岳だけ」のふもと・上富良野かみふらの町まちです。

十勝とかち岳だけでは、去年きょねん６月ろくがつ11日にち、「62－２に火口かこう」付近ふきんの浅あさいところで火山かざん性せい地震じしんが増加ぞうかし、火山かざん性せい微動びどうも観測かんそくされたとして、気象庁きしょうちょうから「臨時りんじ」の解説かいせつ情報じょうほうが発表はっぴょうされました。

十勝とかち岳だけ周辺しゅうへんの自治体じちたいなどで作つくる火山かざん防災ぼうさい協議きょうぎ会かいは、臨時りんじの情報じょうほうが発表はっぴょうされた時ときには、観光かんこう客きゃくや登山とざん者しゃに対にたいし周知しゅうちすることを「避難ひなん計画けいかく」の中なかで位置いちづけています。

このため上富良野かみふらの町まちも、ホームページで注意ちゅういを呼よびかけたほか、チラシを作成さくせいして、観光かんこう施設しせつやコンビニエンスストアなどに配布はいふしました。

山開やまびらき前まえ 安全あんぜんと観光かんこうに苦慮くりょ

しかし、上富良野かみふらの町まちは、このとき別べつの問題もんだいに直面ちょくめんしていました。

夏なつの登山とざんシーズンの到来とうらいを告つげる観光かんこうイベントの「山開やまびらき」を６ろく日にち後ごに控ひかえていたのです。

上富良野かみふらの町まちにとって十勝とかち岳だけの観光かんこうは大おおきな産業さんぎょうの１ひとつで、「山開やまびらき」では、各地かくちから訪おとずれる大勢たいせいの登山とざん客きゃくが火口かこう周辺しゅうへんを歩あるいて山頂さんちょうを目指めざすことになっていました。

「臨時りんじ」の解説かいせつ情報じょうほうが発表はっぴょうされたものの、気象庁きしょうちょうの「噴火ふんか警戒けいかいレベル」は最もっとも低ひくい１いちのままで、警戒けいかいが必要ひつような範囲はんいは示しめされていません。

「安全あんぜん」と「観光かんこう」のバランスをどうとればいいのか。

町まちの防災ぼうさい担当たんとう者しゃや観光かんこう協会きょうかいは、自分じぶんたちで判断はんだんしなければなりませんでした。

協議きょうぎを重かさねた結果けっか、山開やまびらきの登山とざんコースを、火口かこう付近ふきんを通とおらないコースに大おおきく変更へんこうし、参加さんか者しゃにヘルメットを貸し出かしだしたうえで、実施じっしすることにしました。

新あたらしいコースは、火口かこう付近ふきんとは反対はんたい側がわの登山とざん道どうを使つかい、噴火ふんか警戒けいかいレベル２にで必要ひつようとされる規制きせい範囲はんいより遠とおい、火口かこうから２にキロ以上いじょうの距離きょりを保たもった登山とざん道どうを歩あるくようにしたということです。

上富良野かみふらの町まち総務そうむ課かの防災ぼうさい担当たんとう、櫻井さくらい友幸ともゆきさんは「噴火ふんか警戒けいかいレベルは１いちなので、火口かこう付近ふきんを歩あるくコースに行いくなとは言いえない状況じょうきょうだったが、『山開やまびらき』のさなかにレベルが上あがる可能かのう性せいもあり、判断はんだんは難むずかしいものだった」と振り返ふりかえっていました。

かみふらの十勝とかち岳だけ観光かんこう協会きょうかいの長田ながた公一こういち事務じむ局長きょくちょうは「できることなら山頂さんちょうを目指めざすコースで実施じっししたいと思おもっていたが、御嶽山みたけさんの噴火ふんかを振り返ふりかえると、大だい惨事さんじにつながるおそれも否定ひていできないので、登山とざん者しゃの安全あんぜんを第だい一いちに考かんがえてコースを変更へんこうした」と話はなしていました。

具体ぐたい的てきな防災ぼうさい対応たいおうは自治体じちたい判断はんだんだけれども

「臨時りんじ」の解説かいせつ情報じょうほうが発表はっぴょうされた場合ばあい、具体ぐたい的てきな防災ぼうさい対応たいおうは自治体じちたいの判断はんだんに委ゆだねられます。

今回こんかい、取材しゅざいした自治体じちたいの中なかには、当初とうしょは、火口かこう周辺しゅうへんの立ち入たちいりを規制きせいすることにしていましたが、観光かんこうへの配慮はいりょから、火山かざん活動かつどうの状況じょうきょうによっては規制きせいを取とりやめたところもありました。

この自治体じちたいの担当たんとう者しゃは「噴火ふんか警戒けいかいレベルが上あがっていないのに、臨時りんじの解説かいせつ情報じょうほうだけで規制きせいを行おこなうことに対にたいし、観光かんこうへの影響えいきょうから地元じもとの理解りかいを得えることができず運用うんようを変かえた。『臨時りんじ』の解説かいせつ情報じょうほうで防災ぼうさい対応たいおうを決きめるのは難むずかしく戸惑とまどいがある」と話はなしていました。

火山かざん防災ぼうさいに詳くわしい山梨やまなし大学だいがくの秦はた康範やすのり准じゅん教授きょうじゅは「臨時りんじの解説かいせつ情報じょうほうは、噴火ふんか警戒けいかいレベルとは違ちがって、あらかじめ対応たいおう方法ほうほうが決きめられているわけではない。地元じもとにとって重要じゅうような観光かんこうへの影響えいきょうを無視むしして、自治体じちたいみずからが規制きせいの判断はんだんをするのは難むずかしく、国くには情報じょうほうの見直みなおしを含ふくめて検討けんとうする必要ひつようがある」と話はなしています。