NPO法人「若者メンタルサポート協会」では、ボランティアスタッフ40人余りが、24時間365日の態勢で、全国の10代からSNSで寄せられる相談に対応しています。
先月の相談件数は3万件余りと、コロナ禍で増えていた去年の同じ時期よりも6000件近く多くなり、今月に入ってからは、さらに増えているということです。
最近の特徴としては、コロナ禍が長期化する中で、これまで問題を抱えていなかった子どもが、生活や家庭環境の変化で生きづらさを感じて相談を寄せるケースが多くなっているほか、疲労や先の見えない不安がストレスとして蓄積され「死にたい」と訴える子どもの数も、増加しているということです。
実際に寄せられた相談では「コロナのせいで家族関係が最悪になった。居場所が完全になくなった」とか「生きづらい。死にたい」など、子どもたちの悲痛な叫びがつづられていました。
団体では、こうした子どもたちを孤立させないよう週に3日、夜の2時間「オンライン居場所」と名付けた取り組みを行っています。
オンライン上に専門のスタッフが常駐し、参加した子どもたちが互いに顔をみながら会話できる場で、日頃の出来事やコロナ禍で感じる疲れや負担を互いに伝えあっていました。
理事長の岡田沙織さんは「コロナになって初めて死にたいと思うようになった子どもも増えているし、潜在的にそう思っていた子が、より深く死にたいという思いを抱くケースもある。コロナ禍で逃げ場所もなくなり追い詰められている子どもが多い。画面上でも、夜のつらくなる時間帯に集まれる場所があることが、こんなにも子どもの励みや支えになるのかと手応えを感じており、つながれる安心感が重要だ」と話していました。
東京 調布市のNPO法人「青少年の居場所Kiitos」は、家庭にいづらい10代や20代の若者を支援しようと、11年前から居場所を提供する取り組みを続けています。 60人を超えるボランティアの協力で運営され、手作りの昼食と夕食を無償で提供しています。 中には、学校や部活、バイト帰りに毎日立ち寄る利用者もいるということで、仲間と思い思いの時間を過ごしたり、スタッフに家ではできない進路の相談をしたりする姿が見られました。 一方、感染が拡大する中で居場所を開設し続けることについて、はじめて緊急事態宣言が出された去年の4月ごろは、ボランティアからも批判の声があがったということですが、家庭の事情で家で食事をとれない子どもや、安心して過ごせる場がない子どもも多いため、感染対策を徹底しながら受け入れを続けています。 高校3年生の女子生徒は「家では、ごはんが出ないけど、ここに来ると夜遅くに帰ってきても手作りのごはんを食べられるし、会話ができる相手がいるので全然違います。閉まってしまうと困ります」と話していました。 NPO法人の白旗眞生代表は「もともと居場所がない子どもたちがここに来ているので、閉めることはできません。感染対策に気をつけながら活動を、これまでと同様に継続していくことが、子どもたちの命を支えるうえで大切だと考えています」と話していました。
東京 足立区の渕江中学校では、コロナ禍で夏休み中の部活が原則中止となるなど、例年以上に長期間、生徒の様子が見えにくくなっていることから、夏休み終盤の26日、独自に登校日を設けました。 朝の会議で伊東一校長が「生徒の状況把握が第1なので、表情などの確認のほか、欠席している生徒には連絡して、不安を取り除く声かけを行ってほしい」と呼びかけました。 教員たちは各クラスで、生徒の出欠をとったり提出物の回収をしたりしながら、声のトーンや表情に気を配り、欠席した生徒には電話をかけて、変わったことや心配なことがないか確認していました。 伊東校長は「今の感染状況で生徒を集めることに迷いもありましたが、対面でしかわからない生徒の様子を把握することが大切だと考え、登校してもらいました。コロナ禍でコミュニケーションがとりづらくなっている中、教員もアンテナを高く張って、生徒の変化をキャッチしていきたい」と話していました。 また、足立区では、子どもたち自身にも、つらい気持ちや悩みを発信できる力を身につけてもらおうと、7年前から区全体で「SOSの出し方に関する教育」に取り組んでいます。 この教育では「消えたい」という気持ちを抱えたり、自分に自信が持てなかったりと、心が苦しくつらい時に、ストレスを和らげる対処方法として、深呼吸をする、いらない紙を破る、大声で叫んだり歌ったりする、気持ちを文章に表すなどと具体的に紹介しています。 そして「勇気を出して信頼できる人に自分の悩みを話すことは、恥ずかしいことではない」というメッセージを継続して伝えているといいます。 取り組みを重ねる中、ことし区内の小中学生に行ったアンケート調査では「相談できる人がいる」と回答した子どもが98%に上っているということです。 足立区教育委員会教育指導課の八尋崇課長は「教員を含め、周囲の大人が変化を見ていかなければならないが、大人が察知して手を差し伸べられるケースばかりではないので、子どもたちからも話ができる環境を作っていかなければいけないと感じています」と話していました。
そのうえで「しんどい子どもたちがSOSを出せる最後の砦として、友達の存在があるが、コロナ禍で友達とのつながりが分断され、薄くなっていることも、関係している可能性がある」として、感染拡大が長期化する現状への懸念を示しました。 松本さんは、周囲の大人たちに求められる対応として、子どもの様子に異変を感じた時には積極的に声をかけ、話を聞く用意があることを伝えるとともに、子どもから悩み事を打ち明けられた時や「死にたい」とSOSを出された時に、否定せずに受け止め、寄り添うことができる力を高める必要があると指摘しています。 感染拡大が続く中で、子どもの自殺が増える傾向にある夏休み明けの時期を迎えることから「家庭も学校も、つらいという子どもたちがたくさんいる。学校でも家庭でもない第3の場所を持っているか持っていないかが、その子の生きづらさを変えていくと思う。感染拡大防止は重要だが、子どもの心を生きながらえさせるために、多様な居場所づくりを工夫していく必要がある。子どもたちの相談場所や社会資源についても、いろいろな形で情報発信し、子どもの目に入るようにしておくことが大事だ」と指摘しています。
1人で苦しまず、ぜひ話をしてみてください。 厚生労働省がまとめているSNSやチャットなどで相談を行っている団体の一覧です。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sns.html また、電話などで相談を受け付けているのは、以下の連絡先です。 「24時間子供SOSダイヤル」 0120‐0‐78310 https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm 「子どもの人権110番」 0120‐007‐110 http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html 「チャイルドライン」 0120-99-7777 https://childline.or.jp/ 「いのちの電話の相談」 0120‐783‐556 https://www.inochinodenwa.org/ 一般社団法人日本臨床心理士会、 一般社団法人日本公認心理師協会 「新型コロナこころの健康相談電話」 050-3628-5672
居場所の確保が命を支える
“表情に気を配り 声かけを” 学校現場で模索
専門家「周囲の大人たち 寄り添う力を高める必要」
“1人で苦しまず ぜひ話をしてみて” 相談できる窓口一覧