韓国の
首都ソウルのパク・ウォンスン(
朴元淳)
市長が
先週自殺したことをめぐり、
韓国の
主要な
メディアは、
行方が
分からなく
なる前日、
元秘書の
女性が
市長からセクハラ
被害を
受けたとする
告訴状を
警察に
提出した
事実が、
市長側に
漏れていた
可能性があると
一斉に
伝えました。
韓国国内では
真相究明を
求める声が
高まっていて、
警察は、
側近から
事情を
聴くとともに、
市長の
携帯電話の
データの
解析を
進めています。ソウルのパク・ウォンスン
市長は
今月9
日、
体調が
悪いとして
登庁せず、
行方が
分からなくなったあと、
翌日未明に
遺体で
発見され、
遺書が
見つかったこと
などから、
警察は
自殺と
判断しました。
これをめぐって韓国の主要なメディアは、行方が分からなくなる前日の8日午後、元秘書の女性が4年間にわたってパク市長から体を触られたり、わいせつな画像を携帯電話に送りつけられたりするなどのセクハラ被害を受けたとする告訴状を警察に提出した事実が、警察から大統領府に逐一報告される過程で、市長側に漏れていた可能性があると一斉に伝えました。
韓国ではセクハラ被害の場合、告訴の事実などの秘匿が徹底され、被害者への脅迫や証拠隠滅などを防ぐため、加害者には、捜査機関からの出頭要請があるまで知らされないのが一般的です。
ソウル市は15日記者会見し、外部の専門家とともに詳しい経緯を調査する方針を示しましたが、複数の市民団体が公務上の秘密漏えいなどの疑いで大統領府や警察を告発するなど、真相究明を求める声が高まっています。
このため警察は、側近から事情を聴くとともに、市長の携帯電話のデータの解析を進めています。
女性側が被害の内容説明
パク・ウォンスン市長からセクハラ被害を受けたとする告訴状を提出した元秘書の女性の弁護士は、パク市長が自殺したあと記者会見を開きました。13日の記者会見には、女性を支援する市民団体も出席し、被害の内容について説明しました。
それによりますと、セクハラは4年間にわたって続き、市長の執務室で体を触られたとしたほか、携帯電話にわいせつな画像やメッセージを送りつけられたと主張しました。
そして「人口1000万のソウルの市長が持つ権力のため、拒否することも問題提起することもできなかった」としたうえで、「周囲に助けを求めても『市長はそんな人ではない』などと取り合ってもらえなかった」としています。
女性は、ことし5月に弁護士に相談し、今月8日に警察に告訴しましたが、市民団体は、告訴したことが何らかの形で市長側にすぐに伝わった疑いがあると主張し「証拠隠滅のおそれがあった」と指摘しました。
そのうえで、女性の人権を回復するために、真相究明を進めるよう求めました。
会見の最後には女性のコメントが読み上げられ、「巨大な権力の前で、無力な自分を守るために、公正で平等な法の保護を受けたかった。市長には法の裁きを受け、謝罪をしてほしかった」と訴えました。
セクハラ疑惑相次ぐ
韓国では、与党に所属する2大都市の市長にセクハラ疑惑が相次ぎました。自殺したソウルのパク・ウォンスン市長をめぐっては、元秘書の女性が市長からセクハラ被害を受けたとする告訴状を警察に提出していました。
また、第2の都市プサン(釜山)でもことし4月、当時のオ・ゴドン(呉巨敦)市長が女性職員にセクハラを行ったとして警察が捜査に乗り出し、オ市長は不適切な行為があったと認め辞任しました。
2人はいずれも与党「共に民主党」に所属していました。
このうちソウルのパク市長は、就任前は弁護士として活動し、1993年には韓国で初めてのセクハラ訴訟で、被害者側の弁護を担当して有罪判決に導き、セクハラは違法行為だという認識を韓国社会に広めたとされています。
市長就任後も、女性に配慮した政策を進めるため、特別補佐官のポストを設けるなど、女性の権利向上に取り組む姿勢をアピールしていました。
ムン・ジェイン(文在寅)政権は、「被害者中心主義」を掲げてきましたが、今回のパク市長のセクハラ疑惑をめぐっては、真相究明に消極的だと韓国メディアが批判しています。
韓国の2大都市、ソウルとプサンの市長選挙は、来年4月に行われる予定ですが、その結果は、再来年の3月に控える次の大統領選挙にも影響を及ぼすのではないかという見方も出ています。