SNS上のひぼうや中傷に対しては、誰が投稿したかを特定できる情報を開示するよう被害者が訴えを起こすことができます。
ただ、SNSの運営会社と、投稿した人が利用している接続業者、それぞれに裁判手続きをとる必要があり、時間がかかることが課題となっていました。
対策を検討してきた総務省の有識者会議では、26日、迅速に情報を開示する新たな裁判手続きの骨子案が示されました。
新たな手続きは、被害者の申し立てを受け裁判所が1回の手続きで投稿した人の情報を開示するかどうか判断し、SNSの運営会社や接続業者に命令を出すということです。
裁判所の判断に不服がある場合には、今の手続きをとることができます。会議ではこの案に基づいて新たな制度を設ける方針を確認しました。
SNS上のひぼうや中傷は、ことし5月に民放の番組に出演していた女性がひぼうや中傷の投稿が相次ぐ中亡くなったことをきっかけに対策の議論が加速しました。
総務省はことし8月、省令を改正しひぼうや中傷を投稿した人を特定しやすくするため、氏名やIPアドレスといった情報に加えて電話番号も開示の対象にする対応を取っています。
賛成する意見 一方で“表現の萎縮につながるおそれも”
新たな裁判手続きについて、有識者会議の出席者からは、▽迅速な情報開示は、被害者のすみやかな救済につながるとして賛成する意見が出されました。
その一方で、▽新たな制度が乱用されると表現の萎縮につながるおそれがあり、発信者側の権利を損なうことがないよう慎重に考えるべきだという懸念も出ました。
SNSの普及でひぼうや中傷などが相次ぐ
SNSの普及とともに匿名によるひぼうや中傷などが相次いでいて、中には追い詰められて自殺するケースも起きています。
ことし5月、シェアハウスで共同生活する様子を記録するテレビ番組に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(22)が亡くなりましたが、SNS上では木村さんの言動を非難する投稿が相次いでいたことが分かっています。
また、あおり運転の事件で、現場にいたなどとして関係がない人の顔写真や名前がネット上に投稿されて拡散し、大きな問題になったこともありました。
専門家によりますと海外では厳しい対応をとる国が多く、ドイツやフランスでは中傷などが書き込まれた場合、通報から24時間以内に削除することがSNSの運営会社に義務づけられ、違反した場合は多額の罰金が科せられるということです。
一方、日本では投稿した人の情報を開示する手続きに時間がかかり、書き込みもすぐに削除されない場合があるため、ネット上で中傷などの被害を受けても泣き寝入りする人が多いのが実態でした。
悪質なひぼうや中傷は102件
ひぼうや中傷による被害が相次ぐ中、ヤフーなどのIT企業で作る「セーファーインターネット協会」は、相談窓口をことし6月に設置しました。
協会によりますと、ことし8月までに寄せられた相談のうち、特定の個人を対象にした悪質なひぼう、中傷にあたると判断された件数は102件にのぼったということです。