警視庁によりますと、去年1月、オークションサイトに出品されていた核燃料物質のウランを購入したとして原子炉等規制法違反の疑いが持たれています。
ウランは長野県の24歳の男性が海外のサイトを通じて入手し、出品したもので、高校生のほかに茨城県の61歳の男性も購入していたということです。警視庁はこの男性2人についても併せて書類送検しました。
また、高校生はほかにも、海外のサイトで入手した別のウラン鉱石から、黄色い粉末を精製し、オークションサイトを通じて販売したなどとして毒劇物取締法違反の疑いも持たれています。
原子力規制庁がおととし11月、オークションサイトにウランとされる物質が出品されているのを発見し、その後、情報提供を受けた警視庁が捜査を進めてきました。書類送検された3人の自宅などから押収されたウランは微量の放射線を発していましたが、人体にはほとんど影響がないレベルだったということです。
3人は化学愛好家で、調べに対していずれも容疑を認めていて、高校生は「めったに手に入らないものでコレクションとしてほしかった」などと供述しているということです。
規制委員会の許可や届け出なく所持や販売は禁止
ウランは核兵器の原料にもなる放射性物質で、核燃料などに利用するには天然の鉱物のウランを濃縮する必要があります。
濃縮のために天然のウランから不純物を取り除いて精製したものは「イエローケーキ」と呼ばれていますが、今回書類送検された高校生が精製し販売していたものは、そこまでの純度はなかったということです。
ウランは原子炉等規制法によって原子力規制委員会の許可や届け出なく、所持したり販売したりすることが禁止されています。
違反した場合は1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金が科されます。
専門家「ネット上の監視強化が必要」
テロ対策に詳しい日本大学危機管理学部の河本志朗教授は「インターネット上でウランという放射性物質が売り買いされることに非常に驚きを感じました。誰でも簡単にウランが入手できてしまうということがいちばんの問題で、爆弾に放射性物質を仕込んで飛び散らせるという手口にも悪用されてしまいます。放射能そのものは微量で、直ちに害はなくても社会に非常に大きな不安と混乱を与えます」と指摘しました。
そのうえで、「ネット上の売買を見つけ出すのは難しいですが、放置しておけば今回のような事件がまた起こりかねません。ネット上の監視をどう強化していくのか検討していくことが必要だと思います」と話していました。