「線せん虫ちゅう」でがん早期そうき発見はっけん 検査けんさ技術ぎじゅつ実用じつよう化か 東京とうきょうのベンチャー企業きぎょう

全国ぜんこくの大学だいがくや医療いりょう機関きかんで臨床りんしょう試験しけんを行おこなった結果けっか、１いち滴てきの尿にょうから、極きわめて早期そうきのがんでもおよそ85％の確率かくりつで発見はっけんできたということで、17日にち、会社かいしゃの代表だいひょうが技術ぎじゅつ開発かいはつに対にたいする助成じょせい金きんを出だした福岡ふくおか県けんを訪おとずれて実用じつよう化かに成功せいこうしたと報告ほうこくしました。

早はやければ来年らいねん１月いちがつから各地かくちの医療いりょう機関きかんで１いち万まん円えんほどを負担ふたんすれば検査けんさを受うけられるようにするということで、どこで受うけられるかは今後こんご、会社かいしゃのウェブサイトで公開こうかいするとしています。

この検査けんさでは、がんかどうかは分わかるとしていますが、がんの種類しゅるいまでは分わからないということで、別べつの検診けんしんや検査けんさで確認かくにんすることが必要ひつようだということです。

広津ひろつ崇たかし亮あきら代表だいひょう取締役とりしまりやくは「がん検診けんしんの受診じゅしん率りつの向上こうじょうにこの新しん技術ぎじゅつが役立やくだつことを期待きたいしています」と話はなしています。

線せん虫ちゅうを使つかうがん検査けんさとは

「線せん虫ちゅう」は、土どの中なかや海うみの中なかに生息せいそくするものや、人ひとに寄生きせいするものなどさまざまな種類しゅるいが自然しぜん界かいに存在そんざいします。

今回こんかい、がんを早期そうき発見はっけんする技術ぎじゅつに使つかわれたのは、主おもに土どの中なかに生息せいそくし、生物せいぶつ学がくの研究けんきゅうでも広ひろく使つかわれる「シー・エレガンス」という線せん虫ちゅうを利用りようしました。

この線せん虫ちゅうは、目めがない代かわりに嗅覚きゅうかくが発達はったつしていて、この嗅覚きゅうかくで餌えさを見みつけたり、天敵てんてきを避さけたりします。

線せん虫ちゅうががん患者かんじゃの尿にょうに集あつまる詳くわしいメカニズムは分わかっていませんが、大腸菌だいちょうきんやバクテリアといった「線せん虫ちゅうが好このむ餌えさのにおい」と、「がん細胞さいぼうから出でる特有とくゆうのにおい」が似にているためとみられています。

検査けんさでは、プレートに置おいた１いち滴てきの尿にょうに線せん虫ちゅうがどれぐらい集あつまったかを数かぞえて、がんがあるかどうかを判定はんていします。

胃いがんや大腸だいちょうがん、それに乳にゅうがんなど合あわせて15種類しゅるいのがんがあるかどうかが分わかるということですが、どの種類しゅるいのがんなのかは判別はんべつできないためさらに詳くわしい検査けんさが必要ひつようです。

会社かいしゃによりますと、がんが臓器ぞうきの一部いちぶにとどまっているステージ１いちまでの早期そうきのがんの場合ばあい、「腫瘍しゅようマーカー」と呼よばれる血液けつえきを使つかった検査けんさ方法ほうほうだと発見はっけんされる確率かくりつは10％程度ていどですが、線せん虫ちゅうを使つかった検査けんさではおよそ85％の確率かくりつで発見はっけんできたということです。

会社かいしゃでは、がんの種類しゅるいを判定はんていする特殊とくしゅな線せん虫ちゅうを開発かいはつするなど、さらに研究けんきゅうを進すすめるということです。

がん早期そうき発見はっけんのメリットと課題かだい

がんを早期そうきに発見はっけんする最大さいだいのメリットは、治療ちりょうできる可能かのう性せいが高たかまることです。

がんが１ひとつの臓器ぞうきにとどまっている早期そうきに見みつけることができれば、手術しゅじゅつや放射線ほうしゃせんでがんを取り除とりのぞくなどして、患者かんじゃが亡なくなるリスクを下さげることができます。

国立こくりつがん研究けんきゅうセンターがまとめた全国ぜんこくのがん拠点きょてん病院びょういんなどのデータでは、がんと診断しんだんされてから５ご年ねん後ごの生存せいぞん率りつは、たとえば胃いがんの場合ばあい、がんがほかの臓器ぞうきにも転移てんいするなどしているステージ４よんでは8.9％、がんが胃いの一部いちぶにとどまっているステージ１いちでは94.7％となっています。

その一方いっぽうで、がんの早期そうき発見はっけんが「過剰かじょう診断しんだん」につながるケースもあります。

たとえば、進行しんこうが遅おそいがんだったり、患者かんじゃが高齢こうれいだったりした場合ばあい、がんそのものは患者かんじゃの命いのちに関かかわらない可能かのう性せいがありますが、がんが見みつかれば治療ちりょうが行おこなわれることが多おおく、その際さい、手術しゅじゅつや抗こうがん剤ざいなどの治療ちりょうで副作用ふくさようが出でるなど、患者かんじゃが不ふ利益りえきを被こうむることもあると指摘してきされています。

また、検診けんしんや検査けんさでがんの可能かのう性せいがあるとされた後のち、精密せいみつ検査けんさで本当ほんとうにがんであると診断しんだんされるのは、がんの種類しゅるいによって差さはあるものの、一部いちぶにとどまる場合ばあいが多おおいとされ、精密せいみつ検査けんさの結果けっかを受け取うけとるまで精神せいしん的てきな負担ふたんを強しいられることになります。

これは、本当ほんとうはがんではないのにがんの可能かのう性せいがあるとされる「偽にせ陽性ようせい」と呼よばれ、がん検診けんしんの精度せいどを高たかめる上うえでの課題かだいとなっています。

国立こくりつがん研究けんきゅうセンターの中山なかやま富雄とみお検診けんしん研究けんきゅう部長ぶちょうは「がんによっては、早期そうきに見みつけても治療ちりょうが必要ひつような大おおきさになるまで数すう年ねんかかるものもある。その場合ばあい、治療ちりょうまでの期間きかん患者かんじゃさんの精神せいしん的てきな負担ふたんは非常ひじょうに大おおきく、うつ状態じょうたいになる人ひともいる。とにかく早はやく見みつければよいというものではなく、患者かんじゃさんの生活せいかつの質しつをより高たかめるためにどのように結果けっかを生いかすのか、合あわせて考かんがえる必要ひつようがある」と話はなしています。