中村なかむら哲あきら医師いしのお別わかれ会かい 5000人にんが参列さんれつ 福岡ふくおか

25日にちは、「お別わかれ会かい」が福岡ふくおか市し早良さわら区くの西南せいなん学院がくいん大学だいがくのチャペルで開ひらかれ、遺族いぞくや全国ぜんこく各地かくちの支援しえん者しゃなど合あわせておよそ5000人にんが参列さんれつしました。

黙もくとうのあと、ペシャワール会かいの村上むらかみ優ゆう会長かいちょうがあいさつし、「中村なかむら先生せんせいの精神せいしん・魂たましいは今いまでも私わたしたちの心こころの中なかに強つよく大おおきく存在そんざいしています。先生せんせいの意志いしを共有きょうゆうし、継続けいぞくしてご支援しえんいただけるようお願おねがいいたします」と時折ときおり、声こえを震ふるわせながら呼よびかけました。

また、中村なかむらさんの長男ちょうなんの健けんさんは「『口くちだけでなく行動こうどうで示しめせ』という父ちちのことばを心こころに刻きざみ、一いち歩ほ一いち歩ほ、前まえに進すすんでいきたい」と述のべました。

このあと、献花けんかが行おこなわれ、参列さんれつした人ひとたちが中村なかむらさんや中村なかむらさんとともに亡なくなった運転うんてん手しゅなどの遺影いえいに静しずかに花はなを手向たむけていました。

10年ねん余あまり前まえ、中村なかむらさんと一緒いっしょに現地げんちで働はたらいたという滋賀しが県けんの70代だいの男性だんせいは「安やすらかにと、祈いのりました。ペシャワール会かいの活動かつどうは今後こんごも変かわらず支援しえんしていきたい」と話はなしていました。

事件じけん後ごの「ペシャワール会かい」の対応たいおう

中村なかむらさんが現地げんち代表だいひょうを務つとめた福岡ふくおか市しのＮＧＯ「ペシャワール会かい」では、事件じけんで中断ちゅうだんしたかんがい事業じぎょうの本格ほんかく的てきな再開さいかいを目指めざして事務じむ局きょくの担当たんとう者しゃがほぼ毎日まいにち、電話でんわかメールで現地げんちスタッフの責任せきにん者しゃと連絡れんらくを取り合とりあい、治安ちあんの状況じょうきょうなどを確認かくにんしています。

情報じょうほう収集しゅうしゅうとともに安全あんぜん確保かくほに向むけた取り組とりくみも進すすめていて、先月せんげつ下旬げじゅん、現地げんちの州しゅう政府せいふに対にたいして用水路ようすいろの建設けんせつ現場げんばなどでの警備けいびの強化きょうかを要請ようせいしたほか、今月こんげつ22日にちには治安ちあん当局とうきょくから事務所じむしょの警備けいび態勢たいせいについて助言じょげんを受うけたということです。

ただ、中村なかむらさんたちが活動かつどうしてきた地域ちいきには反はん政府せいふ武装ぶそう勢力せいりょくなどの影響えいきょう力りょくが強つよいところもあることなどから、ペシャワール会かいはしばらく様子ようすを見みたいとしていて、村上むらかみ優ゆう会長かいちょうは「州しゅう政府せいふの協力きょうりょくがあるから100％安全あんぜんと言いえるわけではないので、安全あんぜんを確認かくにんしながら一いち歩ほ一いち歩ほ、前まえに進すすめていく」と話はなしています。

犯人はんにんの特定とくていには至いたらず

銃撃じゅうげき事件じけんの背景はいけいについて、地元じもと当局とうきょくの複数ふくすうの関係かんけい者しゃは、中村なかむらさんが建設けんせつを進すすめていた農業のうぎょう用水路ようすいろの水みずの利権りけんをめぐるトラブルが関係かんけいしたのではないかという見方みかたや、武装ぶそうグループが中村なかむらさんをアフガニスタン政府せいふの協力きょうりょく者しゃとみなして犯行はんこうに及およんだのではないかという見方みかたを示しめしていますが、依然いぜん、不透明ふとうめいなままです。

ナンガルハル州しゅうの警察けいさつは、地元じもとの男おとこ２に人にんから事情じじょうを聴きくとともに、自宅じたくから押収おうしゅうした武器ぶきや弾薬だんやくなどを分析ぶんせきして調しらべを進すすめています。だだ、男おとこらはこれまでのところ、事件じけんとの関連かんれんについて一切いっさい、話はなしていないということです。

また、この２に人にんとは別べつに、政府せいふの情報じょうほう機関きかん「国家こっか保安ほあん局きょく」も複数ふくすうの男おとこから事情じじょうを聴きいていますが、事件じけんとの関連かんれんについては話はなしておらず、犯人はんにんの特定とくていには至いたっていないということです。

アフガニスタン 治安ちあんの悪化あっかに歯止はどめかからず

アフガニスタンでは2001年ねん、同時どうじ多発たはつテロ事件じけんの首謀しゅぼう者しゃ、オサマ・ビンラディン容疑ようぎ者しゃをかくまっていたとして、アメリカが軍事ぐんじ作戦さくせんに踏み切ふみきり、当時とうじのタリバン政権せいけんを崩壊ほうかいさせました。

その後そのご、治安ちあんは一時いちじ、回復かいふく傾向けいこうにありましたが、2014年ねんにアメリカ軍ぐんを中心ちゅうしんとする国際こくさい部隊ぶたいの大だい部分ぶぶんが撤退てったいして以降いこう、タリバンが反はん政府せいふ武装ぶそう勢力せいりょくとして盛り返もりかえしているほか、過激かげき派は組織そしきＩＳ＝イスラミックステートの地域ちいき組織そしきも台頭たいとうしています。

タリバンやＩＳが軍ぐんの施設しせつや政府せいふ機関きかんなどをねらったテロや襲撃しゅうげきを繰り返くりかえす中なか、多おおくの民間みんかん人じんが犠牲ぎせいとなっていて、国連こくれんによりますと、おととし、テロや襲撃しゅうげきに巻き込まきこまれて死亡しぼうした民間みんかん人じんは3800人にん余あまりに上のぼり、調査ちょうさを始はじめた2009年ねん以降いこう、最悪さいあくとなっています。

また、死者ししゃとけが人けがにんをあわせた数かずは、５ご年ねん連続れんぞくで１いち万まん人にんを超こえています。

このうち、中村なかむらさんが銃撃じゅうげきされた東部とうぶナンガルハル州しゅうは、伝統でんとう的てきにタリバンの影響えいきょう力りょくの強つよい地域ちいきの１ひとつでしたが、ここ数すう年ねんは、パキスタンとの国境こっきょうの山岳さんがく地帯ちたいにＩＳが拠点きょてんを設もうけています。

こうした中なか、ナンガルハル州しゅうでは、外国がいこく人じんなどの援助えんじょ関係かんけい者しゃが、武装ぶそうグループから襲撃しゅうげきされたり、誘拐ゆうかいされたりするケースが後ごを絶たちません。

ジャララバードでは、おととし１月いちがつに国際こくさい的てきなＮＧＯ「セーブ・ザ・チルドレン」の事務所じむしょが襲撃しゅうげきされ６ろく人にんが死亡しぼうしたほか、首都しゅとカブールでも去年きょねん11月つきにＵＮＤＰ＝国連こくれん開発かいはつ計画けいかくの車両しゃりょうが襲撃しゅうげきされ、援助えんじょ関係かんけい者しゃ１いち人にんが死亡しぼうするなど、治安ちあんの悪化あっかに歯止はどめがかからない状態じょうたいが続つづいています。

生うまれた子この名なは“ナカムラ”

アフガニスタンでは、中村なかむらさんの功績こうせきを忘わすれてはならないとして、生うまれた子こどもに「ナカムラ」と名付なづけた人ひとがいます。首都しゅとカブールに住すむサミウラ・マランさん（39）です。

サミウラさんは、中村なかむらさんが農業のうぎょう用水路ようすいろの建設けんせつなどかんがい事業じぎょうを手てがけた東部とうぶクナール州しゅうの出身しゅっしんで、以前いぜんから中村なかむらさんたちの活動かつどうに感謝かんしゃの気持きもちを抱だいていたということです。

中村なかむらさんの銃撃じゅうげき事件じけんを知しり、「国くにの復興ふっこうに力ちからを尽つくした中村なかむらさんの功績こうせきを忘わすれてはならない」として、事件じけん２に日にち後ごの先月せんげつ６ろく日にちに生うまれた男の子おとこのこを「ナカムラ・ムスリムヤール」と名付なづけました。

４よん人にんきょうだいの三男さんなんとして生うまれたナカムラちゃんには、「中村なかむらさんのように、アフガニスタンのために一生懸命いっしょうけんめいに働はたらく人物じんぶつになってほしい」と願ねがいを込こめたといいます。

医療いりょうや農業のうぎょう支援しえんは再開さいかい 灌漑事業じぎょうは中断ちゅうだん

中村なかむらさんは、現地げんちに診療しんりょう所しょを設立せつりつし、地元じもとの人ひとたちに医療いりょう支援しえんを行おこなってきました。

こうした医療いりょう支援しえんは、事件じけんを受うけて中断ちゅうだんしていましたが、先月せんげつ中旬ちゅうじゅんから少すこしずつ再開さいかいしています。

東部とうぶナンガルハル州しゅうのダラエヌールに設もうけられた診療しんりょう所しょでは、アフガニスタン人じんの医師いしと看護かんご師しなどが、ほぼ毎日まいにち24時間じかん態勢たいせいで診療しんりょうを行おこなっています。

冬場ふゆばのこの時期じきには、かぜの症状しょうじょうを訴うったえる子こどもや女性じょせいが後ごを絶たたないほか、出産しゅっさんのため診療しんりょう所しょを訪おとずれる女性じょせいも多おおいということです。子こどもを連つれて訪おとずれた20代だいの女性じょせいは、「診療しんりょう所しょが再開さいかいして本当ほんとうにうれしいです。これまで薬くすりがもらえず、苦労くろうしたので、大変たいへん、助たすかります」と話はなしていました。

さらに、中村なかむらさんは、地元じもとの人ひとたちの収入しゅうにゅうを安定あんていさせようと、農業のうぎょう支援しえんも行おこなってきました。

こうした中村なかむらさんの遺志いしを受け継うけついだ人ひとがいます。アジマル・スタネクザイさん（40）です。

18年ねん前まえ、中村なかむらさんと出会であったのをきっかけに、ペシャワール会かいが支援しえんする現地げんちのＮＧＯの中心ちゅうしんメンバーとして、数々かずかずのプロジェクトに関かかわってきました。

「途絶とだえかけた活動かつどうを再ふたたび軌道きどうに乗のせたい」として、今月こんげつに入はいってから農作物のうさくもつの手入ていれや植林しょくりんの現場げんばなどでの指導しどうを再開さいかいしました。

アジマルさんが今いま、力ちからをいれているのが、オレンジなどかんきつ類かんきつるいの栽培さいばいです。

従来じゅうらいの小麦こむぎや野菜やさいのほかに栽培さいばいする作物さくもつを増ふやせば、地元じもとの人ひとたちの収入しゅうにゅうの増加ぞうかにつながるとして、生前せいぜん、中村なかむらさんが重視じゅうししていたといいます。

アジマルさんは、「中村なかむらさんの夢ゆめは、乾かわいた大地だいちに水みずを引ひき、雇用こようをつくり、貧困ひんこんをなくすことでした。彼かれの遺志いしをついで支援しえんを続つづけていきます」と固かたい決意けついを話はなしていました。

ただ、中村なかむらさんが活動かつどうの最大さいだいの柱はしらとしていた農業のうぎょう用水路ようすいろの建設けんせつなど、かんがい事業じぎょうの再開さいかいは本格ほんかく化かしていません。

中村なかむらさんは、用水ようすい路ろによって水みずを安定あんてい的てきに供給きょうきゅうし、農業のうぎょうの生産せいさん性せいを高たかめてもらおうという目標もくひょうを掲かかげていました。

しかし、銃撃じゅうげき事件じけんをきっかけに事業じぎょうは中断ちゅうだん。用水路ようすいろの建設けんせつ現場げんばなどには、大型おおがた機械きかいやトラックが残のこされたままとなっています。

今月こんげつに入はいり、護岸ごがん工事こうじなど比較的ひかくてき小規模しょうきぼな工事こうじは一部いちぶで再開さいかいされたものの、用水路ようすいろの建設けんせつなど大おおがかりな工事こうじには着手ちゃくしゅできていません。

最大さいだいの懸案けんあんは現地げんちの治安ちあんです。中村なかむらさんたちが活動かつどうしてきた地域ちいきには、タリバンやＩＳなどの影響えいきょう力りょくが強つよいところもあり、安全あんぜんを見極みきわめるのが難むずかしいのです。

現場げんばの近ちかくに住すむ50代だいの男性だんせいは、「事業じぎょうが中断ちゅうだんしてとても残念ざんねんです。プロジェクトが再開さいかいされることを期待きたいしています」と話はなしていました。

また、アジマルさんは、「私わたしたちの最大さいだいの心配しんぱいは、治安ちあん状況じょうきょうです。ナンガルハル州しゅうでは特とくに悪わるくなっています。状況じょうきょうを見みながら、慎重しんちょうに事業じぎょうを進すすめていきます」と話はなしていました。