福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ トリチウム含ふくむ水みずの処分しょぶん ”海うみか大気たいき中ちゅうが現実げんじつ的てき”

福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつでは、汚染おせん水すいを処理しょりしたあとのトリチウムなどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを含ふくんだ水みずが毎日まいにち発生はっせいしていて、現在げんざい1000近ちかくのタンクに約やく120万まんトンが保管ほかんされています。

この水みずの処分しょぶん方法ほうほうについて、31日にちに開ひらかれた有識ゆうしき者しゃでつくる経済けいざい産業さんぎょう省しょうの小しょう委員いいん会かいでは、基準きじゅんを下回したまわる形かたちで海うみに放出ほうしゅつする方法ほうほうと蒸発じょうはつさせて大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつする方法ほうほうが前例ぜんれいもあって、環境かんきょうや健康けんこうへの影響えいきょうもほとんどなく現実げんじつ的てきな選択せんたく肢しだとする案あんが示しめされました。

２ふたつの方法ほうほうのうち海洋かいよう放出ほうしゅつは、設備せつびが簡易かんいで放出ほうしゅつ後ごの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつの拡散かくさんの監視かんしもしやすく実施じっしが確実かくじつとした一方いっぽう、風評ふうひょう被害ひがいの社会しゃかい的てき影響えいきょうは「特とくに大おおきい」と分析ぶんせきしました。

これについて小しょう委員いいん会かいでは大おおきな反論はんろんは出でずおおむね了承りょうしょうされ、今後こんご文言もんごんの修正しゅうせいなどを行おこなって、報告ほうこく書しょとしてまとめられる見通みとおしです。

国くには今後こんご、地元じもとなどの関係かんけい者しゃからも意見いけんを聞きいたうえで政府せいふが最終さいしゅう決定けっていをする方針ほうしんですが、まだ地元じもと意見いけんをどう聞きくかは決きまっておらず、今後こんごの対応たいおうが注目ちゅうもくされます。

委員いいん長ちょう「復興ふっこうのためには廃はい炉ろ進すすめることが重要じゅうよう」

報告ほうこく書しょの案あんがおおむね了承りょうしょうされたことを受うけて、小しょう委員いいん会かいの委員いいん長ちょうを務つとめる名古屋なごや学芸がくげい大学だいがくの山本やまもと一良かずよし副ふく学長がくちょうは「福島ふくしまの復興ふっこうと廃はい炉ろを両立りょうりつさせていくことを念頭ねんとうに、処分しょぶんに伴ともなう風評ふうひょうなど社会しゃかい的てきな影響えいきょうを考慮こうりょして検討けんとうを行おこなってきた。福島ふくしまの復興ふっこうのためには廃はい炉ろを進すすめていくことが重要じゅうようで、原発げんぱつの敷地しきちの制約せいやくから、本丸ほんまるである燃料ねんりょうデブリの取り出とりだしが遅おくれるようなことがあってはならない」と述のべました。

一方いっぽうで、廃はい炉ろを急いそぐことで風評ふうひょうを拡大かくだいさせてもいけないとし「今後こんご政府せいふには提言ていげんを踏ふまえて、地元じもとをはじめとした関係かんけい者しゃの意見いけんを伺うかがい、復興ふっこうと廃はい炉ろを両立りょうりつさせるための最適さいてき点てんを見みいだし、方針ほうしんを示しめしてほしい」と述のべました。

これまでの検討けんとう経緯けいいと今後こんご

福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの汚染おせん水すいを処理しょりしたあとには、除去じょきょしきれないトリチウムなどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを含ふくんだ水みずが残のこり、これをどう処分しょぶんするかについて国くには検討けんとうを続つづけています。

まず、専門せんもん家かチームによる処分しょぶん方法ほうほうの技術ぎじゅつ的てきな検討けんとうを３さん年間ねんかん行おこなったあと、社会しゃかい学者がくしゃや風評ふうひょうの専門せんもん家かなどを交まじえた経済けいざい産業さんぎょう省しょうの小しょう委員いいん会かいが総合そうごう的てきな検討けんとうを３さん年ねんかけて行おこない、おおむね６むっつの方法ほうほうについて議論ぎろんを交かわしてきました。

そして、このほど、基準きじゅんを下回したまわる形かたちで海うみに放出ほうしゅつする方法ほうほうと蒸発じょうはつさせて大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつする方法ほうほうの２ふたつが前例ぜんれいもあり現実げんじつ的てきな選択せんたく肢しだとする案あんでおおむね了承りょうしょうしました。

今後こんご、経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、地元じもと自治体じちたいや農林のうりん水産すいさん業者ぎょうしゃをはじめ、幅広はばひろい関係かんけい者しゃから意見いけんを聞きく方針ほうしんでそのうえで、政府せいふが最終さいしゅう的てきに処分しょぶん方法ほうほうを決定けっていすることになります。

しかし、現げん段階だんかいで、国くにはどんな形かたちで、誰だれの意見いけんを集あつめるか、具体ぐたい的てきなことは示しめしておらず、どれだけの時間じかんがかかるかも見通みとおせていない状況じょうきょうです。

小しょう委員いいん会かいの委員いいんのひとり、福島ふくしま大学だいがくの小山こやま良太りょうた教授きょうじゅは「地元じもとの漁業ぎょぎょう者しゃや観光かんこう、飲食いんしょくなど、どのタイミングでどんな処分しょぶんをするか非常ひじょうに関心かんしんが高たかく、事業じぎょう自体じたいが成り立なりたつかどうかにも関かかわってくる。水産物すいさんぶつに関にかんしては流通りゅうつうや小売こうり、諸しょ外国がいこくも関心かんしんを持もっている。国くには説明せつめいをするだけでなく、関係かんけい者しゃが何なにを懸念けねんしているのか、対話たいわをする場ばを持もつことが重要じゅうようだ」と指摘してきしています。

海うみに放出ほうしゅつする方法ほうほうと大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつする方法ほうほうの比較ひかく

福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつにたまり続つづけるトリチウムなどを含ふくむ水みずの処分しょぶん方法ほうほうをめぐって、国くにの小しょう委員いいん会かいで示しめされた報告ほうこく書しょの案あんは、基準きじゅんを下回したまわる形かたちで海うみに放出ほうしゅつする方法ほうほうと加熱かねつして蒸発じょうはつさせ大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつする方法ほうほうが前例ぜんれいもあり、現実げんじつ的てきな選択せんたく肢しだとしたうえで、メリットとデメリットを比較ひかくしています。

このうち、大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつする案あんは1000度どほどの高温こうおんで蒸発じょうはつさせ排気はいき筒とうから大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつするものです。

41年ねん前まえにメルトダウンを起おこしたアメリカ・スリーマイル島とうの原子力げんしりょく発電はつでん所しょで実績じっせきがあります。

一方いっぽうで、蒸発じょうはつさせたあとに、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを含ふくんだ塩しおなどが放射ほうしゃ性せい廃棄はいき物ぶつとして残のこるほか大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつした場合ばあい、拡散かくさんの状況じょうきょうを予測よそくすることが難むずかしく、監視かんしする上うえで課題かだいがあるとしています。

また、海洋かいよう放出ほうしゅつはポンプで吸い上すいあげた海水かいすいを混まぜて基準きじゅん以下いかに薄うすめ、海洋かいように放出ほうしゅつするものです。

原子力げんしりょく発電はつでん所しょでは日本にっぽんを含ふくめ各国かっこくで基準きじゅんを決きめて海洋かいよう放出ほうしゅつをしているなど実績じっせきがあるほか、海中かいちゅうでの拡散かくさんの状況じょうきょうを予測よそくしやすいため監視かんしが比較的ひかくてき容易よういだとしています。

そのうえで、報告ほうこく書しょでは、大気たいき放出ほうしゅつに比くらべて確実かくじつに実施じっしできると結論けつろんづけています。

一方いっぽう、風評ふうひょうを含ふくめた社会しゃかい的てきな影響えいきょうの観点かんてんでも比較ひかくしています。

２ふたつの方法ほうほうについて、国くにと東京とうきょう電力でんりょくが国連こくれん科学かがく委員いいん会かいのモデルに基もとづいて行いった被ひばく量りょうの試算しさんでは一般いっぱんの人ひとが自然しぜん界かいでうける被ひばく量りょうと比較ひかくしても十分じゅうぶんに小ちいさいとの評価ひょうかが出でています。

しかし、いずれも風評ふうひょう被害ひがいは起おこるとしていて大気たいき放出ほうしゅつの場合ばあい、海洋かいよう放出ほうしゅつよりも幅広はばひろい地域ちいきや産業さんぎょうが影響えいきょうを受うけるとしています。

海洋かいよう放出ほうしゅつの場合ばあいはこれまで実施じっしした公聴こうちょう会かいなどで出だされた一般いっぱんの意見いけんや海外かいがいの反応はんのうなどを見みると、特とくに社会しゃかい的てきな影響えいきょうが大おおきくなると考かんがえられると分析ぶんせきしています。