「COP25」は当初、チリのサンティアゴで開催される予定だったことからチリが議長国を務めていて、日本時間の3日夜、議長国主催のシンポジウムが開かれました。
このなかで、チリのシュミット環境相は、「地球の3分の2は海だ。温暖化対策を進めるうえで海の役割は大きく、各国の温室効果ガスの削減目標にしっかりと位置づけるべきだ」と呼びかけました。
そして、研究者たちが、陸上よりも海のほうが二酸化炭素を多く吸収していると指摘し、海の中で海草などの生物が吸収する二酸化炭素を「ブルーカーボン」と呼び、ブルーカーボンを増やしていくことが温暖化対策の有効な選択肢になると訴えていました。
議長国は今回の会議を「Blue COP」と位置づけていて、会期中、温暖化対策を進めるうえでの海の重要性などについて訴えていくことにしています。
「ブルーカーボン」活用 国も検討
海草や藻場などを活用した温暖化対策は、四方を海に囲まれた日本でも効果が期待できるとして、国が検討を始めています。
国土交通省は、ことし6月から関係省庁や有識者による検討会を立ち上げて、どのくらいの二酸化炭素を吸収する見込みがあるのかや、海草や藻場などを保護する対策について議論を進めています。
有識者や関係団体などが参加して活動してきた「ブルーカーボン研究会」は、国内の海草などが吸収する二酸化炭素の量は2013年の時点で最大、年間およそ680万トンにのぼると試算しています。
国の検討会ではこの試算をもとに、藻場を新たにつくったり面積を広げたりすれば2030年には二酸化炭素の吸収量は34%増えて、910万トンになると見込んでいます。
これは、同じ年の森林による吸収量の推計、2780万トンのおよそ30%にあたります。
海草などの海の生物による二酸化炭素の吸収量について、オーストラリアやアメリカなどは温室効果ガス排出量の削減目標に組み込もうと算定を始めています。
「磯焼け」対策が温暖化対策に
日本では、海草などが減って魚などが生息しなくなる「磯焼け」の対策として、海草や藻場を増やそうという取り組みが各地で行われていて、国や専門家はこうした取り組みも温暖化対策につながるとみています。
このうち、北海道泊村では、ことし10月から、地元の漁業組合が日本製鉄とともに、コンブを増やす取り組みを始めています。
鉄鋼スラグと腐葉土が入った、およそ20キロの袋を海に埋め立てます。
コンブが好む浅場の土台をつくるとともに、鉄分が栄養となり生育を促すことができるということです。
地元の漁業者によりますと、沿岸では磯焼けが進んで30年ほど前にコンブがなくなり魚も見られなくなったということです。
漁業者の1人は「磯焼けは温暖化で水温が高くなるために起きるとも言われている。アワビもウニもニシンも、産卵する場所ができて昔のようになればいいなと思う」と話していました。
また、福岡市では、平成17年から博多湾でアマモを植えてきました。
当初は、イカが卵を産みつけたり、魚のすみかとなったりすることから始めた取り組みでしたが、温暖化対策にもなることに注目し今後、専門家とともに二酸化炭素の吸収量を算出することにしています。
このほか、横浜市や和歌山県串本町などでも海草や藻場を増やす取り組みが行われています。