ヒト受精じゅせい卵たまごのゲノム編集へんしゅう「基礎きそ研究けんきゅうのみ容認ようにん」指針案ししんあんを了承りょうしょう

日本にっぽんでは28日にち、国内こくないでヒトの受精卵じゅせいらんに対にたいして「ゲノム編集へんしゅう」で遺伝子いでんしを改変かいへんする際さいの指針ししんについて議論ぎろんする国くにの専門せんもん家か会議かいぎが開ひらかれました。

この中なかで、生殖せいしょく医療いりょうの向上こうじょうのための基礎きそ研究けんきゅうに限かぎって認みとめ、操作そうさした受精卵じゅせいらんを母体ぼたいに戻もどすことは禁止きんしし、子こどもを誕生たんじょうさせることは認みとめないという最終さいしゅうの指針ししんの案あんを了承りょうしょうしました。ただ、指針ししんのため、違反いはんしたときの罰則ばっそくなどは設もうけられていません。国くには手続てつづきを進すすめ来年らいねん４月しがつにも運用うんようを始はじめたいとしています。

専門せんもん家か会議かいぎの座長ざちょうで、埼玉さいたま医科いか大学だいがくの石原いしはら理さとし教授きょうじゅは「中国ちゅうごくでの出来事できごとには関心かんしんをもって情報じょうほうを集あつめている。日本にっぽんでは指針ししんをしっかりと守まもる土壌どじょうがあるので指針ししんで規制きせいすれば同おなじような問題もんだいは起おきないはずだ」と話はなしています。

各国かっこくと日本にっぽんの規制きせい

ヒトの受精卵じゅせいらんに対にたいしてゲノム編集へんしゅうすることの規制きせいは、各国かっこくで異ことなっています。

ドイツとフランスでは、ヒトの受精卵じゅせいらんに対にたいしてゲノム編集へんしゅうすることが法律ほうりつにより禁止きんしされています。

もちろん、ゲノム編集へんしゅうをした子こどもを誕生たんじょうさせることも禁きんじられています。

イギリスは、受精卵じゅせいらんをゲノム編集へんしゅうする基礎きそ研究けんきゅうは認みとめる一方いっぽうで、母体ぼたいに戻もどして子こどもを誕生たんじょうさせることは制限せいげんしています。

アメリカは、受精卵じゅせいらんに対にたいしてゲノム編集へんしゅうする研究けんきゅうには連邦れんぽう政府せいふの資金しきんを投入とうにゅうすることを禁止きんしして規制きせいはしているのですが、アメリカには寄付きふなどの連邦れんぽう政府せいふの資金しきん以外いがいの研究けんきゅう資金しきんもあり、その部分ぶぶんでは研究けんきゅうが可能かのうです。

中国ちゅうごくでも国くにの指針ししんでゲノム編集へんしゅうをした受精卵じゅせいらんで子こどもを誕生たんじょうさせることは禁止きんしされています。

また、各国かっこくに対にたいして強制きょうせい力りょくはありませんが、ゲノム編集へんしゅうに関係かんけいする各国かっこくの主要しゅような研究けんきゅう者しゃが集あつまって開ひらいた国際こくさい会議かいぎでは、現時点げんじてんで受精じゅせい卵たまごにゲノム編集へんしゅうをして子こどもを誕生たんじょうさせることは無む責任せきにんだとして行おこなうべきではないという考かんがえを表明ひょうめいしています。

日本にっぽんでは、国くにの専門せんもん家か会議かいぎで最終さいしゅうの指針ししんの案あんが了承りょうしょうされ、来年らいねん４月しがつにも運用うんようを始はじめたいとしています。

この中なかでは、生殖せいしょく医療いりょうの向上こうじょうのための基礎きそ的てきな研究けんきゅうに限かぎり認みとめること、操作そうさした受精卵じゅせいらんを母体ぼたいに戻もどすことは禁止きんしすること、研究けんきゅう計画けいかくごとに国くにに申請しんせいして審議しんぎされたうえで大臣だいじんの確認かくにんを受うけること、受精卵じゅせいらんの提供ていきょう者しゃに対にたいして研究けんきゅうの目的もくてきや受精卵じゅせいらんの取り扱とりあつかいについて適切てきせつに説明せつめいすることなどを定さだめています。

しかし、指針ししんのため、違反いはんしたときの罰則ばっそくは設もうけられていません。

何なにが問題もんだい点てん？

ゲノム編集へんしゅうはおよそ５ご年ねん前まえに、簡単かんたんでしかもそれまでの遺伝子いでんし組ぐみ換かえ技術ぎじゅつよりも大幅おおはばに精度せいどが高たかく遺伝子いでんしを操作そうさできるようになり、急速きゅうそくに広ひろがっている技術ぎじゅつです。

基礎きそ研究けんきゅうから応用おうよう研究けんきゅうまで幅広はばひろく使つかわれるようになり、今いまも技術ぎじゅつの改良かいりょうが続つづいています。

大おおきくなるマダイや、収量しゅうりょうが多おおくなるイネ、それに食中毒しょくちゅうどくを起おこさないジャガイモなどの品種ひんしゅ改良かいりょうに応用おうようする研究けんきゅうが急速きゅうそくに進すすむほか、人ひとの病気びょうきを治なおすための研究けんきゅうも進すすんでいます。

その中なかで、多おおくの関係かんけい者しゃが最もっとも懸念けねんしていたのはゲノム編集へんしゅうをした受精卵じゅせいらんから子こどもを誕生たんじょうさせることでした。

将来しょうらい的てきには親おやから子こどもに引き継ひきつがれる、遺伝子いでんしが原因げんいんとなる先天せんてん性せいの病気びょうきを根本こんぽんから治なおす可能かのう性せいを秘ひめていますが、ほとんどの関係かんけい者しゃは実施じっしするにはまだ早はやいとしています。

その理由りゆうは技術ぎじゅつ的てきな課題かだいと倫理りんり的てきな問題もんだいの二ふたつがあります。

技術ぎじゅつ的てきな課題かだいは、ヒトの受精卵じゅせいらんに応用おうようするためには、極きわめて高たかい精度せいどが必要ひつようで、現時点げんじてんでは意図いとしない遺伝子いでんしの改変かいへんが起おきてしまうおそれがあるのです。

そのため、生うまれてくる子こどもの健康けんこうに悪わるい影響えいきょうが及およぶ懸念けねんがあります。

倫理りんり面めんでは、受精卵じゅせいらんの遺伝子いでんしを改変かいへんすると、その改変かいへんは次つぎの子こどもにも受け継うけつがれ、世代せだいを超こえて影響えいきょうし続つづけることが問題もんだいとされています。

何なに世代せだいも後ごに環境かんきょうや社会しゃかい情勢じょうせいが変化へんかする中なかで遺伝子いでんしの改変かいへんがどのように影響えいきょうするのか予測よそくすることはできないのが現状げんじょうです。

そうした中なかで、いわば人為じんい的てきに人類じんるいの進化しんかに影響えいきょうを及およぼすことが許ゆるされるのかという問題もんだいです。

その先さきには、親おやの望のぞむ外見がいけんや能力のうりょくなどの特徴とくちょうを持もつように遺伝子いでんしを改変かいへんする「デザイナー・ベビー」を誕生たんじょうさせることが許ゆるされるのかという問題もんだいもあります。

まずは実施じっしする前まえにこうした課題かだいや問題もんだいを解決かいけつする必要ひつようがあるのです。

これまでの研究けんきゅうの状況じょうきょう

ヒトの受精卵じゅせいらんの遺伝子いでんしをゲノム編集へんしゅうで改変かいへんする基礎きそ的てきな研究けんきゅうは、中国ちゅうごくやアメリカなどで行おこなわれたと公表こうひょうされています。

最初さいしょに公表こうひょうされたのは３さん年ねん前まえの平成へいせい27年ねん４月しがつに、中国ちゅうごくの大学だいがくの研究けんきゅうグループが遺伝いでん性せいの血液けつえきの難病なんびょうを予防よぼうするための研究けんきゅうの一環いっかんとしてヒトの受精卵じゅせいらんに対にたいしてゲノム編集へんしゅうを行おこなったと発表はっぴょうし、母体ぼたいに戻もどすことはしていませんが、この時ときも大おおきな議論ぎろんとなりました。

その１いち年ねん後ごには、中国ちゅうごくの別べつの研究けんきゅうグループが受精卵じゅせいらんへのゲノム編集へんしゅうを行おこなったと発表はっぴょうするなど中国ちゅうごくでは今回こんかいのケースを除のぞいて少すくなくとも４よん例れいあるとされています。

そのほか、アメリカやイギリスなどの研究けんきゅうグループから遺伝いでん性せいの難病なんびょうの予防よぼうや不妊ふにんの原因げんいんを突き止つきとめるための基礎きそ研究けんきゅうとして、ゲノム編集へんしゅうでヒトの受精卵じゅせいらんの遺伝子いでんしを改変かいへんしたという発表はっぴょうが相次あいつぎました。

いずれも、病気びょうきを治療ちりょうするために応用おうようできるか検討けんとうするための基礎きそ的てきな研究けんきゅうにとどまっていて、受精卵じゅせいらんを母体ぼたいに戻もどして子こどもを誕生たんじょうさせる試こころみはしていないとされていました。