“懲こらしめ”から“立ち直たちなおり”へ 115年ねんぶりに変かわる刑けい

「懲役ちょうえき刑けい」では、こうした刑務けいむ作業さぎょうが義務ぎむづけられていて1日にちに最大さいだいで8時間じかん行おこないます。

規則正きそくただしい生活せいかつを送おくることや就労しゅうろう意欲いよくを養やしなうことなどがその目的もくてきです。

しかし、犯おかした罪つみの反省はんせいにはつながらないという元もと受刑じゅけい者しゃもいます。

傷害しょうがい致死ちしの罪つみで別べつの刑務所けいむしょで10年ねん以上いじょうを過すごした男性だんせいは、刑務けいむ作業さぎょうだけでは自分じぶんの罪つみに向き合むきあうことができなかったといいます。

「僕ぼくは作業さぎょうをやっているときに内省ないせいが深ふかまることはなかったですね。やはり“やらされている感かん”というか、どうしてもそういう気持きもちになる」

今回こんかいの改正かいせいでは、刑法けいほうの条文じょうぶんに「改善かいぜん更生こうせいを図はかるため、必要ひつような作業さぎょう、または指導しどうを行おこなうことができる」と明記めいきしました。

期待きたいされている1つが、グループで行おこなう教育きょういくプログラムです。

府中ふちゅう刑務所けいむしょでは、薬物やくぶつ依存いぞんの6人にんの受刑じゅけい者しゃと専門せんもんの職員しょくいんが週しゅうに1回かい集あつまり、3か月かげつかけて教育きょういくプログラムを行おこなっています。

この日ひのテーマは、薬物やくぶつを使つかうデメリットと使つかってしまう「引き金ひきがね」についてでした。

「デメリットはどうだったのですか？」

受刑じゅけい者しゃ

「時間じかんにルーズになったり、信用しんようを失うしなったり。それでまた刑務所けいむしょ生活せいかつになることです」

対話たいわを重かさねて自分じぶん自身じしんで気きづくことで、薬物やくぶつを断たつことを目指めざしていて、ある受刑じゅけい者しゃは「いろいろ話はなすことが自分じぶんを見みつめ直なおすいいきっかけになる」と話はなしていました。

●府中ふちゅう刑務所けいむしょ 片山かたやま裕久ひろひさ教育きょういく専門せんもん官かん

「グループに参加さんかすることは、落ち着おちついて自分じぶんの本当ほんとうの気持きもちをよく見みつめるだけでなく、それを話はなすことで自分じぶん自身じしんの中なかに生うまれてくる気持きもちを感かんじられる、そういう貴重きちょうな機会きかいです」

拘禁こうきん刑けいの導入どうにゅうで、刑務けいむ作業さぎょうだけでなく、こうした教育きょういく的てきな処遇しょぐうを受刑じゅけい者しゃの状況じょうきょうにあわせて増ふやしていくことが可能かのうになります。

傷害しょうがい致死ちしの罪つみを犯おかした元もと受刑じゅけい者しゃも「怒いかり」をいかにコントロールするかについて1年ねん半はんグループで学まなんだことで、自みずからの罪つみと向き合むきあい、反省はんせいすることができたといいます。

●元もと受刑じゅけい者しゃ

「自分じぶんで事件じけんを起おこしたにもかかわらず、自分じぶんも巻き込まきこまれたように感かんじていたんですけど、『それは違ちがうんじゃないか』と思おもわせてくれたのが教育きょういくの内容ないようでした。生い立おいたちから事件じけんの内容ないように至いたるまで、言いいたくないこともさらけ出さらけだすグループワークがあったので、勉強べんきょうになったというか、参加さんかしてよかったです」

身体しんたい的てきな衰おとろえで出所しゅっしょ後ごの社会しゃかい生活せいかつがままならず、犯罪はんざいを繰り返くりかえしてしまう人ひとが少すくなくないためです。

高齢こうれい受刑じゅけい者しゃにどんな処遇しょぐうをすべきか。

府中ふちゅう刑務所けいむしょでは認知にんち機能きのうや体力たいりょくを回復かいふくさせるリハビリのような取り組とりくみをおととしから行おこなっています。

「特とくに高齢こうれい受刑じゅけい者しゃは出所しゅっしょ後ごの就職しゅうしょくがとても難むずかしいと思おもいます。いま受刑じゅけい者しゃが抱かかえている身体しんたい能力のうりょくや認知にんち機能きのうの特性とくせいからみえる課題かだいを1つでも解消かいしょうしたうえで出所しゅっしょして、地域ちいき生活せいかつに定着ていちゃくすることが、再犯さいはん防止ぼうしにつながると思おもいます」

●法務省ほうむしょう成人せいじん矯正きょうせい課か 細川ほそかわ隆夫たかお課長かちょう

「刑務けいむ作業さぎょうだけをさせて刑期けいきが終了しゅうりょうしたら社会しゃかいに出でるのでは、再犯さいはんを防ふせぐことは難むずかしい。個々ここの特性とくせい・問題もんだいをよく見極みきわめて、作業さぎょうのほかにも必要ひつような処遇しょぐうがあれば、それを時間じかんにとらわれずに実施じっししていきたい」

受刑じゅけい者しゃの数かずは、ことし3月末げつまつ時点じてんで約やく3万まん8000人にん。

罪つみの内容ないようや犯罪はんざいに至いたった背景はいけい、刑期けいきもさまざまです。

受刑じゅけい者しゃが犯おかした罪つみに向き合むきあい、更生こうせいするには、本人ほんにんの自発じはつ的てきな姿勢しせいが不可欠ふかけつです。

1人にん1人にんにそうした処遇しょぐうを行おこなうには、携たずさわる刑務けいむ官かんの意識いしき改革かいかくや、専門せんもん的てきな知識ちしきがある人材じんざいを確保かくほできるかという課題かだいがあります。

そして、課題かだいは刑務所けいむしょ内ないの処遇しょぐうだけではありません。

受刑じゅけい者しゃは刑期けいきを終おえれば社会しゃかいに戻もどります。

仕事しごとや住すまいを確保かくほできずに安定あんていした生活せいかつを送おくれない人ひとも少すくなくありません。

「最終さいしゅう的てきに立ち直たちなおる場所ばしょは刑務所けいむしょではなく地域ちいき社会しゃかいの中なかです。『ここで生いきていきたい』と思おもえないと再犯さいはんにつながってしまうので、社会しゃかいで支ささえていくことが大切たいせつです。そういった意味いみでも刑務所けいむしょの中なかの環境かんきょうをより自律じりつ性せいや自発じはつ性せいを重視じゅうしした社会しゃかいでの生活せいかつに近ちかいものにして、社会しゃかい復帰ふっきのための準備じゅんび期間きかんとなるようにしていくことが必要ひつようです」

受刑じゅけい者しゃたちが自みずからの罪つみに真剣しんけんに向き合むきあうことは被害ひがい者しゃのためでもあり、再犯さいはんが起おきないことは、新あらたな被害ひがいを生うまないことにつながります。

改正かいせいされた刑法けいほうは、公布こうふから3年ねん以内いないに施行しこうされることになっています。

施行しこうまでにどのような準備じゅんびができるのか。

また、実際じっさいどのように運用うんようがされるのかが、今後こんごの課題かだいだと言いえます。