平裕介弁護士は「裁判所は不健全な判決を出した。事業の内容と性質に着目して憲法違反ではないとしているが、おかしい判断だと思うので、ただちに控訴したい」と述べました。
また、亀石倫子弁護士は判決について「裁判所が国による職業差別にお墨付きを与え『性風俗を差別していい』というメッセージを社会に発信した。司法が少数者の権利を守らずむしろ権力と一体化している。到底容認できない」と批判し、控訴したことを明らかにしました。
女性によりますと、おととし4月、1回目の緊急事態宣言が全国に出されたころには、すでに売り上げに影響が出ていて厳しい状況だったといいます。 店で働く女性たちからは、仕事がなくなるので営業を続けてほしいと言われましたが、国が持続化給付金などの支援策を設けると知り、休業要請に従うことを決断しました。 ところが、性風俗の事業者は対象外で、女性は「裏切られた気持ちで、納得できず訴訟に踏みきった」と話します。 自治体から休業に伴う協力金は出ましたが、コロナ禍の前に比べて売り上げは、8割から9割ほど落ち込んだということです。 裁判で女性は「きちんと税金も納め反社会的勢力とのつながりもない」として、ほかの業種と同じように給付金を支給して欲しいと訴えましたが、国は「性風俗業への支給は国民の理解を得られにくい」とか、「性を売り物にする業種で本質的には不健全だ」などと主張しました。 これについて女性は「性風俗業を営むことは認められていて、合法的に営業しているのに不健全と言われるのは悲しい。『国民の理解が得られない』というのも、国が偏見や差別心を増幅させているのではないか」と訴えていました。 また「事業者を守ることは店で働く女性を守ることにつながる。裁判所が国の主張を認めてしまえば差別が助長されてしまう」と話していました。 30日の判決を受けて女性は、弁護士を通じ「私たちの未来を閉ざし、性風俗の職業をおとしめる心のない判決で、とても残念です。判決に心折れることなく闘っていきます」とするコメントを出しました。
風俗業界で働く女性たちを支援するNPO法人「風テラス」は、弁護士や社会福祉士などによるオンラインでの相談会を定期的に行っています。 団体によりますと、相談はおととし、新型コロナの感染が拡大してから急増し、ことし1月から5月末までだけでも、延べ950人から相談が寄せられたということです。 最も多いのは生活の困窮に関する相談で「コロナで収入が減りクレジットカードの支払いができない」とか「家賃が払えない」などの声が寄せられているということです。 中には、コロナ禍でもともと働いていた職場で雇い止めされたりシフトを減らされたりしたため風俗業の仕事を始めたという人もいて、「辞めたくても辞めさせてもらえない」などの悩みに直面しているケースもあるということです。 「風テラス」の三上早紀弁護士は「『自分でこの仕事を選んだから自己責任だ』と悩みを抱え込んでいる人もいます。裁判をきっかけに、風俗業で働く人たちの状況に関心が集まり、社会全体で業界のことを考えるきっかけになれば良いと思います」と話していました。
国「主張が認められた」
原告の女性「性風俗の職業をおとしめる心ない判決」
風俗業の現場で働く女性たちの状況は