道の駅は、肱川の上流に位置し、当時、水かさが急激に増す状況が記録されていました。
今月7日午前7時50分ごろと記録された映像では、駐車場のアスファルトにたたきつけるように雨が降っています。
1時間ほどたった8時52分、2台の車が駐車場に入ってきました。車から降りた2人が周りの様子を確認し、慌てた様子で駆け出したり車を動かしたりします。
その後、画面右側から濁った水があふれ出てきました。急いで車に乗り込み、画面左上の坂道に避難する様子が写っています。このころになると、泥水が波を打って広がっていきます。
8時57分、水かさはどんどん増え、画面左奥では行き場を失った車が坂道を登って避難していきます。
9時3分、駐車場全体が水につかっています。止まっていたトレーラーも、荷台を外して避難していきます。その後も水位は上がり、ドラム缶やタイヤなどが流されていきます。
そして9時9分、映像が突然途切れます。撮影のための装置が水没したとみられます。画面に写る駐車場に水が入り始めてから15分ほどの出来事でした。
道の駅の施設は深いところでは1メートル60センチほど水につかったということです。
大洲市で亡くなった4人のうち、冨永直子さん(47)はこの道の駅の付近で車に乗っていて流されたとみられています。
「死んでしまうかと 本当に怖かった」
この日の朝、道の駅の近くにいた大洲市肱川町の山根吉隆さん(33)も、川からあふれた水が押し寄せ、水かさが急激に増えたと証言しています。
山根さんは、「水かさが急に増え、間一髪で高台に逃げた。道路に濁流が流れこみ、流された車のクラクションが鳴り響く光景は異常だった。このまま水が増え続け死んでしまうかと思って、本当に怖かった」と話していました。
避難後に流される車目撃
道の駅「清流の里ひじかわ」にあるレストランを経営する岩田良一さん(60)は、すでに出勤していた妻とともに近くの高台に避難しました。
岩田さんはこの日、開店の準備のため、早朝から妻とともに出勤していました。
午前8時半すぎ、川の近くに住む息子の家族と連絡が取れなくなり、心配になって様子を見に行きましたが、道路が水につかっていて引き返しました。
8時50分ごろ、道の駅に戻ると、駐車場の一部に水が入り、タイヤの半分くらいの高さまで浸水していました。妻と合流して水につかった道路を車で進み、数十メートル先の高台になんとかたどりついたといいます。
防犯カメラの映像には、岩田さんが車で避難していく様子が写っています。岩田さんは、「必死に逃げた。高台から下を見ると通ってきたばかりの道路がみるみる水で見えなくなっていった。怖かった」と振り返ります。
このあと岩田さんは、死亡した冨永直子さんが運転する車が流されていくのを目撃しました。その白い車は、岩田さんが避難した高台の真下で冠水した道路を進んでいたということです。
その後、車は水に浮いて制御できなくなり、流されていきました。岩田さんは「あっ」と声を出しましたが、携帯電話がつながらず、警察や消防に通報できないまま車の姿は見えなくなったということです。
水がひいたあと、近くの小川に白い車が転落しているのを岩田さんの妻が見つけ、車内にいた冨永さんの死亡が確認されたということです。岩田さんが避難してから冨永さんの車が通るまで、ほんの数分でした。
岩田さんは、「逃げるのが少しでも遅れていれば、私たちも命がなかった。亡くなった女性のことを思うと胸が痛い」と話していました。