23日、国の検討会がまとめた素案では、臨時情報が発表されるケースを、南海トラフで震源域の半分程度がずれ動くマグニチュード8程度の巨大地震が発生したケースと、震源域の一部がずれ動くマグニチュード7程度の大地震が発生したケースなどに分け、それぞれの防災対応を示しています。
このうち、震源域の半分程度がずれ動き、残った震源域で巨大地震が懸念される場合は、津波からの避難が間に合わない地域のすべての住民などが、あらかじめ避難する必要があるなどとしています。
一方、震源域の一部がずれ動いた場合は、あらかじめ避難することはせず、避難場所の確認や家具の固定など、日頃からの防災対応を確認し、状況に応じて自主的に避難する必要があるとしています。
いずれのケースでも、避難の防災対応が必要な期間は1週間程度を基本としています。
検討会は、ことし12月をめどに結論をまとめることにしていて、国は、それを基に住民や企業が具体的な防災対応を検討するための手順をガイドラインで示すことにしています。
検討会の主査で、名古屋大学の福和伸夫教授は「防災対応の方向性については次第にまとまってきたが、まだ、この情報を知らない人が多く、認知度を高める努力も必要だ」と話しています。
気象庁は東海から九州の沖合にかけての南海トラフ沿いの震源域で異常な現象が観測され、巨大地震が発生する可能性が高まったと判断した場合に、「臨時の情報」を発表することになっています。
23日、国の検討会がまとめた素案では、臨時情報が発表されるケースを、南海トラフで震源域の半分程度がずれ動くマグニチュード8程度の巨大地震が発生したケースと、震源域の一部がずれ動くマグニチュード7程度の大地震が発生したケースなどに分け、それぞれの防災対応を示しています。
このうち、震源域の半分程度がずれ動き、残った震源域で巨大地震が懸念される場合は、津波からの避難が間に合わない地域のすべての住民などが、あらかじめ避難する必要があるなどとしています。
一方、震源域の一部がずれ動いた場合は、あらかじめ避難することはせず、避難場所の確認や家具の固定など、日頃からの防災対応を確認し、状況に応じて自主的に避難する必要があるとしています。
いずれのケースでも、避難の防災対応が必要な期間は1週間程度を基本としています。
検討会は、ことし12月をめどに結論をまとめることにしていて、国は、それを基に住民や企業が具体的な防災対応を検討するための手順をガイドラインで示すことにしています。
検討会の主査で、名古屋大学の福和伸夫教授は「防災対応の方向性については次第にまとまってきたが、まだ、この情報を知らない人が多く、認知度を高める努力も必要だ」と話しています。
半分程度ずれ動いたあとに巨大地震も
今回の検討会では、臨時情報が発表されるケースを、南海トラフの震源域の半分程度がずれ動くケースと、一部がずれ動くケースに分け、その後に起きる巨大地震に備えた防災対応が示されています。
南海トラフの震源域の半分程度がずれ動くマグニチュード8前後の地震のあと、残った半分の震源域でマグニチュード8クラスの巨大地震が発生した事例は、過去にも確認されています。
昭和19年には東海の震源域付近で「昭和東南海地震」が発生し、その2年後の昭和21年には、この震源域の西側で「昭和南海地震」が発生して甚大な被害が出ました。
江戸時代の1854年にも「安政東海地震」が発生した32時間後に、西側の震源域で「安政南海地震」が発生し、各地が激しい揺れや津波に襲われたとされています。
一方で、震源域の一部がずれ動く地震については、その後に巨大地震に結びついたとする過去の記録は、南海トラフでは今のところ確認されていません。
しかし、平成23年に東日本大震災をもたらした東北沖の巨大地震の2日前には、同じ震源域でマグニチュード7.3の大地震が発生していて、巨大地震につながらないとは言えないのが現状です。
住民で避難方法検討の地域も
今回の素案では、「臨時の情報」が発表された際、地震のケースによっては、津波の危険がある地域のすべての住民があらかじめ避難する必要があるとされましたが、具体的な避難の在り方については決まっていません。
こうした中、住民が率先して避難の方法を検討している地域があります。駿河湾に面する静岡市駿河区の広野地区で町内会の会長を務める杉山貴勇さん(64)は、巨大地震による津波に危機感を覚えています。
この地区には地震発生後、最短4分で津波が押し寄せ、住宅の多くが最大で3メートル程度浸水すると想定されていますが、「臨時の情報」を受けて、住民がどこに避難するかはまだ決まっていません。
地区では1つの小学校が避難所に指定されていますが、すべての住民が避難することはできません。
そこで、杉山さんは本来は地震が発生した際に使われる「津波避難ビル」の病院を、事前の避難先にできないか考えました。病院は6階建てで、食堂や廊下などを使えば900人余りの住民を避難させることができるからです。
交渉の結果、病院を事前の避難先として利用できることになりました。杉山さんは「この地域は津波の到達時間が短く、安全な避難先を見つけることが課題だった。強固な建物の病院に避難させてもらうことができてありがたく思います」と話していました。
一方、地域住民の受け入れを決めた病院にも課題があります。臨時の情報が発表され、津波の被害が切迫した場合には、限られた職員だけで低い階にいる入院患者を上の階へ移す必要があるのです。
このため、病院では事前に避難して来た住民に患者の移動を手伝ってもらおうと考えています。静岡広野病院の田宮健院長は「地域住民との連携を重視している病院なので避難していただきたい。ただ、いざという時は互いに助け合いながら対応していきたい」と話していました。
もう1つの課題は、水や食料などといった備蓄品です。この備蓄品は病院が職員や入院患者向けにそろえたもので、多くの住民が避難した場合には不足するおそれがあるのです。
このため、町内会長の杉山さんは、町内会でも備蓄品を準備して病院に備え、住民が1週間程度、避難できる環境を整えたいとしています。
杉山さんは「いつ、臨時の情報が出るかもわからないので、地域と病院とが一体となって、今後、訓練を重ねるなどしながら、引き続き対策を進めたい」と話していました。
土砂災害の想定 場所の絞り込みは困難
今回の検討会の素案では、臨時の情報が発表された際の土砂災害や危険性がある地域や企業の防災対応についても示されました。
南海トラフの巨大地震では、各地で土砂災害が起きると想定されていますが、危険性がある地域は広域に及ぶため、あらかじめ場所を絞り込んで対応を示すのは難しくなってます。
このため、素案では「必要に応じて自主的に避難する」などという防災対応を示すにとどまり、次回以降も議論が続けられることになりました。
また、それぞれ異なる経済活動を行っている企業についても、個別に対応を示すのは難しいのが現状です。
素案では不特定多数の人が利用する特定の企業では、施設の点検を確実に実施する、そのほかの企業については日頃からの地震の備えを再確認するなどといった対応を示すにとどまりました。
病院や鉄道、学校など、被害を受けると社会に大きな影響を及ぼす可能性がある施設については、今後、検討会の議論をもとに国がまとめるガイドラインの中で、具体的な防災対応を示すことになっています。