党首選の最大の争点となっている経済政策では減税を直ちに行うことを約束し、支持を広げました。
服装なども、イギリス初の女性首相として強いリーダーシップを発揮したサッチャー氏に似ているとして、その愛称にちなんで「鉄の女2.0」と呼ぶメディアもあります。
一方でインドのIT大手創業者の娘である妻がイギリス国外での所得について納税を免除されていたことが明らかになり、「富豪」というイメージがマイナス要因となるなど厳しい戦いを強いられました。 イギリスメディアの間ではトラス氏の優位は揺るがないと伝えていて、注目は早くも「トラス内閣」の顔ぶれがどうなるのかに移っています。
ただ、自己主張が強く物事を白黒つける傾向があると言われていて、ジョンソン首相以上に強硬に政策を推し進めるという見方もあります。 ウクライナ情勢では、ロシアに対して引き続き厳しい姿勢で臨むという立場です。 就任後、最初に行う電話会談の相手はウクライナのゼレンスキー大統領だとし、先週行われた最後の討論会では「ウクライナへ最大限の支援を行うことが重要だ」と強調していました。 また中国とは、香港や新疆ウイグル自治区の問題などをめぐり関係が悪化しています。 トラス氏は、中国との対話を強調するスナク氏を繰り返し批判していて、中国に対してこれまで以上に厳しい対応を取る可能性もあります。 一方、EU=ヨーロッパ連合との関係は悪化が懸念されます。 離脱の際にEUと結んだ北アイルランドに関する取り決めの一部をイギリスが一方的に変更する法案を提出したため対立が再び激しくなっています。 ヨーロッパとの関係悪化は中長期的に見て国際社会にとって大きな懸念材料と言えます。
さらに「世界には『いい勢力』と『悪い勢力』がいるという風に白黒はっきりつけて見ている。対中国では、アメリカ政府のタカ派より強硬だし、対ロシアでは、ウクライナに巨額の支援をしているだけでなく、発言もほかの国よりはるかに好戦的だ。両国に対抗する上では間違いなくリスクをとるだろう」と分析します。
ジョン・カンプナー氏はイギリスが去年3月、外交や安全保障でインド太平洋地域を重視する方針を打ち出したことについて触れ「同盟国や友好国を選ぶのがトラス氏の戦略で、域内の日本などとの強い関係を損なうことはしない。イギリスにとって、日本はこれまでになかったほど近いパートナーになっている」と述べ、引き続き、日本との関係を強化していくという見方を示しています。 一方で「トラス氏の課題は、非常に複雑な世界でその強硬な発言を実行に移せるかどうかだ。長期的に見たとき、問題を引き起こすような外交姿勢をとり続けるのは非常に難しいだろう」と述べ、対決一辺倒の姿勢には限界があるとも指摘しています。
3人の弟がいて、その1人は姉について「家族でボードゲームをするときも勝たないと気が済まず、負けそうになるといなくなった」と振り返るほど、子どもの頃から負けず嫌いだったといいます。 父親は数学の大学教授、母親は看護師で、ともに労働党の支持者でした。 トラス氏はオックスフォード大学で政治や経済を学ぶかたわら、中道左派の自由民主党の党員として活動し、王政の廃止や大麻の合法化など、かつてはリベラルな主張を訴えていました。 その後、保守党に移ります。 大手エネルギー企業や通信会社に勤めながら政治活動を続け、3回目の挑戦となった2010年の国政選挙で下院議員に初当選しました。 そして当選から4年後、キャメロン政権で環境相に抜てきされ、続くメイ政権では司法相を任されました。 イギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱をめぐる2016年の国民投票では残留を支持したものの、その後、離脱支持に転じました。 現在ではEUに対する強い姿勢で、離脱強硬派の支持を得ています。 ジョンソン政権では国際貿易相として2020年、日本との経済連携協定に合意し、署名しました。 去年9月に外相に就任してからは、ウクライナ侵攻の構えを見せたロシアへの制裁にいち早く動き強硬な姿勢を示すとともに、ウクライナに対する支援を推し進めてきました。 政治姿勢だけでなく、服装などもイギリス初の女性首相として強いリーダーシップを発揮したサッチャー氏に似ているとして、その愛称にちなんで「鉄の女2.0」と呼ぶメディアもあります。 私生活では2人の娘の母親です。 また、アメリカの人気歌手のテイラー・スウィフトさんのファンで、大のエスプレッソ好きとしても知られています。 トラス氏が党首に選ばれれば、サッチャー氏、メイ氏に続き、3人目の女性の首相が誕生することになります。
アフリカから移住したインド系の両親のもとにイギリスで生まれ、アジア系イギリス人として初の首相を目指しています。 父親は医師、母親は薬剤師で、子ども時代、スナク氏は母親の薬局の会計を手伝っていたとしています。 オックスフォード大学を卒業したあと、アメリカのスタンフォード大学でMBA、経営学修士を取得。 その後、大手金融機関のゴールドマン・サックスやヘッジファンドでの勤務を経て、2015年から下院議員を務めています。 おととし2月、ジョンソン政権のもとで、39歳の若さで財務相に抜てきされました。 新型コロナウイルスの感染拡大で経済が深刻な影響をうけるなか、雇用支援策として、従業員を雇い続ける企業を対象に政府が賃金の支払いを肩代わりする制度などを主導し、高い評価を得ました。 一方でイギリスの公共放送BBCがスナク氏について「最も裕福な国会議員の1人」と伝えるなど、たびたび、その「富豪」ぶりがメディアなどからやゆされています。 ことし3月には燃料税の引き下げに踏み切った際にアピールの一環として、車にみずからガソリンを入れてカードで支払う様子をメディアに公開したところ、バーコードを読み取る機械にクレジットカードをかざすなど支払いに戸惑う様子を見せ、市民の暮らしを知らないと大きく取り上げられました。 また、インドのIT大手の共同創業者の娘で、数十億ポンドの資産を相続するともいわれている妻が海外所得の納税を免除されていたことが明らかになり、批判を浴びました。 私生活では2人の娘の父親で、コーラがこよなく好きなことでも知られています。
“優勢”のトラス氏 国際関係への影響は?
専門家「安定を優先させる首相にはならない」
日本との関係はどうなる?
トラス氏とは
スナク氏とは